Muv-Luv Alternative:Red Cygnus 血染めの白鳥達 作:NageT
シミュレーター室の照明が落ち、訓練終了の合図が鳴った。
白鳥真里奈は汗で濡れた前髪を押さえ、荒い呼吸を整えようと必死だった。画面には無残にも「撃墜」の赤文字。何度目の失敗か、もう数える気力もない。
「……また駄目だった……」
肩を落とす真里奈の耳に、背後から涼介の声が飛んだ。
「真里奈! 突撃する時に何度も同じ癖が出てんだよ!敵の足を止めるなら斬撃だけじゃねぇ、射撃も混ぜろ!」
厳しい声に背筋を震わせつつも、真里奈は必死に「はい!」と返す。
だが心は折れそうになっていた。
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女子たちの戦術アドバイス
その日の夜、女子宿舎の一室に真里奈、紗栄、静、大友の四人が集まった。
机の上には作戦マップと簡易ホワイトボード。普段なら笑い声で満ちる時間だが、この夜は違った。
「真里奈、あんた突っ込む時に周囲見えてないよ」静が冷静に指摘する。
「涼介が言ってたでしょ?射撃混ぜろって。要は、敵の動きを乱してから接近しろって意味だよ」
「でも、そんな余裕……」と真里奈が口ごもると、大友が柔らかい声で補足した。
「余裕がない時こそ“型”を決めるの。例えば——二射一斬。必ずそう動くって決めれば、身体が勝手に動くようになる」
紗栄も頷く。
「紗栄もチビ兄の援護する時は、パターンを決めてるよ。チビ兄が右に行くなら、私は左後方からカバーってね」
「パターン……」真里奈は目を瞬かせ、ノートに書き留めた。
「それとね」静が続ける。「撃墜された時、何でやられたか必ず書いて。戦術は繰り返しの中でしか身につかない。訓練校で散々やったでしょ?」
「……はい!」
三人の言葉に、真里奈の胸の奥が少しずつ熱を帯びていく。
「私、次は……必ずやってみせます!」
女子たちは顔を見合わせて笑った。
「その意気だよ」「いいじゃん、真里奈ちゃん!」
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翌日。再びシミュレーター室。
真里奈は意識的に「二射一斬」を繰り返し、敵を翻弄した。
被弾しながらも、一瞬の隙をついて突撃砲を命中させた時、BETAが爆炎に包まれる映像が映し出された。
「……やった……!」
モニター越しに見守っていた涼介が小さく息を吐いた。
「ふん……少しはマシになったじゃねぇか」
その表情に浮かぶのは、わずかな笑みだった。
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喫煙所
訓練を終えた夜。喫煙所には涼介、富田、小川、雁部が集まっていた。
紫煙が漂う中、富田が煙を吐きながら呟く。
「真里奈、今日は粘ったっけな」
「ええ、確かに昨日までとは別人でしたね」小川が頷く。
「ま、あの大尉にしごかれりゃ死ぬ気で頑張るしかないでしょうけど」
「おいコラ、小川」涼介が睨む。
だが雁部はにやりと笑って肩を叩いた。
「でも実際そうっすよ。ナベさんの怒鳴り声、俺でも怖ぇっすから」
涼介は苦笑しつつ煙を吐き出した。
「……まあな。けどアイツ、やっと真凜大尉の影を追うだけじゃなくなった。自分の動きで戦おうとしてる。そこはデカい」
「へぇ〜鍋島にしては随分買ってんじゃねぇか」富田が揶揄う。
「やかましい! 俺は正直なだけだ!」
一同が笑いに包まれる。
小川が火を落としながら真顔になる。
「でも、大尉が厳しくしたからこそ成長してる。死なせたくないから、でしょう?」
涼介は一瞬言葉に詰まり、黙って煙を吐いた。
「……まあ、そういうこった」
雁部が肩をすくめて笑う。
「俺らの隊は本当、愛されてるっすね」
最後に富田が煙草を灰皿に押し付けて立ち上がった。
「よし、じゃあ次は俺たちで鍛えてやるか。地獄を見せてやろうっけね」
「おう!」
紫煙を背に、四人は笑い合った。