Muv-Luv Alternative:Red Cygnus 血染めの白鳥達   作:NageT

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第百二十話 覚悟と笑い

12月21日早朝。白い雪が静かに降り積もる中、レッドキグナス中隊の面々はブリーフィングルームに集まっていた。

 前夜に発令された甲21号作戦――その詳細がついに彼らに伝えられるのだ。

 

 部屋の前方に立つのは青島葵中尉。冷静な表情で資料をまとめ、淡々とした声で口を開いた。

 

「これより甲21号作戦におけるレッドキグナス中隊の任務を伝達します。まず作戦概要ですが、目標は佐渡島に存在するフェイズ4ハイヴ、甲21号目標の完全無力化です」

 

 モニターに投影された佐渡島の地図。その赤いマークは、彼らにとって故郷であり、奪還すべき戦場でもある。

 息を呑む音が静かに重なる。

 

「我がレッドキグナス中隊はウィスキー部隊に編成され、最先鋒として橋頭堡確保のために真野湾方面へ上陸します。帝国連合艦隊の戦術機母艦《阿賀野》から発進し、敵陣の只中へ突入、先行部隊としての役割を担います」

 

 その一言に、室内がざわついた。

 

 

最先鋒の重み

 

「最先鋒……つまり真っ先に敵の群れに突っ込むって事だよな」岸本が腕を組み、唸る。

「誉れだが……死ぬ確率も一番高いな……」前園が低く呟く。

「……いよいよ、俺たちの番が来たって事だっけね」富田は笑みを浮かべつつも、拳を強く握りしめていた。

 

 松本と松原は顔を見合わせ、どこか不安そうに唇を噛んでいる。

 真里奈はまっすぐモニターを見つめていたが、その小さな肩はわずかに震えていた。

 

 そんな空気を切り裂いたのは涼介の声だった。

 

「おいおい、なんだよお前ら。暗ぇ顔すんなよ」

 彼は立ち上がり、モニターを指さした。

「俺の故郷に帰るんだぜ? テメェら、案内してやっからしっかり付いてこいよ!」

 

 

掛け合いの応酬

 

 唐突な涼介の明るさに、中隊の面々は思わず笑いを漏らした。

 

「大尉、あんた方向音痴でしょう? 案内するって、どこに連れて行くつもりなんです?」小川が皮肉を飛ばす。

「ははっ、チビ兄より私の方が佐渡の道詳しいよ」紗栄が胸を張って笑う。

「なら案内は紗栄ちゃんに任せた方が安心だなぁ」大友も微笑みながら加わる。

 

「おいおい! 俺の立場がねぇじゃねぇか!」涼介が肩を竦めると、雁部が煙草を咥える仕草をしてにやりと笑う。

「安心しろよナベさん、迷子になっても俺ら全員で探してやるからよ!」

「うるせぇよ!雁部!、そういう問題じゃねぇんだよ!」

 

 松本が「ふふっ」と吹き出し、松原も苦笑いを浮かべる。

 重苦しかった空気が一気に軽くなり、皆の表情から硬さが消えていった。

 

 

決意の声

 

 しかし、涼介はそこで表情を引き締めた。

「いいか、テメェら。最先鋒は死と隣り合わせだ。だが、俺は誰一人死なせねぇ。絶対に死ぬなこれは命令だ!死んだやつは俺がブッ殺す!」

 

 その言葉に全員が背筋を伸ばす。

「了解!」

 声が揃い、ブリーフィングルームの壁が震えるほどの響きとなった。

 

 青島も小さく頷いた。

「……全員の覚悟、確認しました。佐渡奪還はあなた方にとって故郷を取り戻す戦いでもあります。必ず生き残り、勝利を掴んでください」

 

 

訓練への号令

 

 涼介は再びモニターに目を向け、声を張った。

「これより30分後、シュミレーターにて発進から第4段階までのシミュレーション訓練を行う! 全員完全装備でシュミレータールームに集合! 解散!」

 

「了解!」

 再び声が重なり、全員が力強く立ち上がる。

 

 彼らはブリーフィングルームを後にしながら、それぞれに思いを胸に抱いていた。

 佐渡奪還――それは涼介と紗栄にとって、幼き日の記憶を取り戻す戦いであり、全員にとっては人類の未来を切り開く大一番だった。

 

 そして、彼らは知っている。

 この戦いは、生きて帰れる保証などどこにもない。

 だからこそ、今は笑っていようと。

 仲間と共に肩を並べ、前を向いて歩み出すために。

 

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