Muv-Luv Alternative:Red Cygnus 血染めの白鳥達   作:NageT

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第百二十一話 不安と暗雲のその先へ

 12月22日。甲21号作戦に向け、レッドキグナス中隊は朝からシュミレーターに籠もっていた。

 戦術機母艦《阿賀野》から発進し、真野湾方面に橋頭堡を築く――その第2段階を模したシナリオ。

 

「よっしゃ! 全機、俺について来い!」

 涼介が声を張り上げ、シュミレーターの不知火壱型丙が真っ先に飛び出す。

 

「相変わらず突撃バカだな……」小川が呆れながらも編隊を整える。

「チビ兄! 無茶すんな!」紗栄が慌てて後を追う。

「俺も行くっけね!」富田が吠えながら前に出た。

 

 雪を模した画面の中、BETAの大群が迫り来る。要撃級、突撃級が真野湾に殺到していた。

 

「敵影多数! 接触まで20秒!」青島の冷静な声が響く。

「わかってる! 前衛、斬り込むぞ!付いてこい!」涼介が指示を飛ばしなが突撃する。

 

 だが、戦線が崩れるのは早かった。

 松本と松原は果敢に斬り込むも連携が遅れ、想定では突撃級に囲まれて撃墜判定。

 雁部は突っ込みすぎ、援護射撃を受けられず被弾判定。

 そして真里奈は開始3分で要撃級に囲まれ、真っ先に撃墜マークが表示された。

 

「くっ……!」シミュレーター内で必死に操縦桿を振るが、画面はブラックアウト。

 歯を食いしばる真里奈の姿を横目に、戦況はあっという間に崩壊した。

 

 

ブリーフィングでの反省会

 

 訓練後のブリーフィングルーム。

 映し出された戦闘ログに、中隊の全員が暗い表情を浮かべていた。

 

「初回は開始5分で戦線崩壊……数回やって、最大43分の生存……これじゃ本番は秒殺されるな」小川が冷たく言う。

「……俺が突っ込みすぎたのは悪かったっけ」富田が頭を掻く。

「あたしも……動きが遅れちゃった」松本が視線を落とす。

「ごめんなさい……私、一番最初に落とされました……」真里奈の声は震えていた。

 

 涼介は腕を組み、全員を見渡した。

「いいか、これは本番じゃねぇ。今日の失敗は全部、明日に繋げるためにある。落ち込んで終わりにすんな」

 その声に全員が「了解」と答えたが、空気はどこか重かった。

 

「今日はここまで! 各自今日の反省まとめつつ休め! 明日はもっとキツくいくからな!」

 涼介の号令で解散となった。

 

 

 夜。喫煙所に集まったのは涼介、富田、小川、雁部。

 紫煙が立ちこめる空間で、それぞれが煙草を咥えた。

 

「まったく、今日は散々でしたね……」小川が煙を吐きながら呟く。

「俺も突っ走っちまったっけね、明日はもうちょい冷静にやるっけね」富田が苦笑する。

「最先鋒ってのは俺らが血路を開く事で後からくる仲間の道を作る仕事だ。このままじゃダメだ、明日は絶対立て直さねぇとな」涼介が煙草をトントンと灰皿に落とす。

 

 そこに、珍しく松本が顔を出した。

「……ナベ大尉たちだけズルい。あたしも混ぜて」

「おう、松本か。煙草は吸わねぇだろ?」雁部が眉を上げる。

「吸わないけど……今日の失敗、あたしも考えたいから」松本は真剣な表情で座り込む。

 

「なるほどな。今日の問題は全員の連携不足だ。松本、お前は何が悪かったと思う?」小川が問いかける。

「……ナベ大尉の突撃に釣られて動いちゃって、松原を置いてっちゃった?。おちついて全体を見ないとダメだった」松本が悔しそうに唇を噛む。

「正解だな。明日はもっと俯瞰で動け」小川が頷いた。

「ふかんってなに?」松本が頭にはてなを浮かべ首を傾げる。

「しっかり回りを見て動けってこった!」

涼介は煙を吐きながら笑う。

「まぁ明日は今日よりマシにするさ。失敗した分だけ強くなれる。なぁ?」

「あぁ、だっけな!」富田と雁部も笑い、喫煙所に笑い声が響いた。

 

 

 その時、入口から声が飛んできた。

「まーた吸ってる! 吸いすぎです!」

 現れたのは紗栄、静、大友、そして真里奈。

 

「チビ兄、吸いすぎて死んだらどうすんの!」紗栄が頬を膨らませる。

「ほっとけ。死ぬ前に死ぬほど働いてやるよ」涼介が軽口を叩く。

「あんたたち……本当に体に悪いんだから吸いすぎるなよ」静が呆れたように言う。

「すいません……吸います……」小川は苦笑して肩を竦めながら煙草を咥える。

 

 大友が松本を見て眉をひそめた。

「松本少尉、女の子がこんな所に座ってるんじゃありません。来なさい」

「え、わ、あたしも?」松本は煙草の匂いを気にしながら立ち上がる。

「当然よ。この前はあんたの事忘れてたケド、女子会で反省会よ」静が笑い、真里奈の手を引く。

 

 こうして松本は半ば強引に連れ出され、女子組5人が集まることになった。

 

 

女子会での反省会

 

 食堂の一角を陣取り、5人は温かい飲み物を手に語り合った。

「今日は正直、全然ダメだったね」静が切り出す。

「私はもうちょっと紗栄ちゃんをフォローできれば……」大友が肩を落とす。

「私は……真っ先にやられました」真里奈が俯く。

 

「そこだよ」紗栄が真剣な表情で言った。

「真里奈ちゃん、動きが直線的すぎるの。敵から見たら読みやすいんだよ。もっとフェイントとか回避を混ぜないと」

「でも……私、余裕なくて……」

「余裕は作るものだよ。紗栄にだってできたんだから」紗栄の言葉に、真里奈ははっとする。

 

「……私、必ず成長してみせます!」真里奈は顔を上げ、瞳を輝かせた。

「そうそう、その意気だよ」静が笑い、松本が拳を握る。

「明日はやり返そ〜 まりーなだけじゃなく、あたしも!」

「えぇ、全員で強くならなきゃ」大友も微笑む。

「まりーなって私ですか?」

 

 真里奈の困惑の声をよそに女子たちの真剣な反省会は夜遅くまで続いた。

 

 

 

 こうして甲21号作戦に向けたシュミレーター訓練の1日目は幕を閉じた。

 誰もが課題を抱え、失敗に悔しさを滲ませていたが、その分だけ明日へと繋げる意志は強まっていた。

 最先鋒を任された誇りと恐怖を胸に、レッドキグナス中隊の夜は更けていった。

 

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