Muv-Luv Alternative:Red Cygnus 血染めの白鳥達 作:NageT
12月22日、甲21号作戦に向けた二日目のシミュレーター訓練が始まった。昨日は橋頭堡の確保どころか第2段階突破すら怪しい結果に終わり、全員が悔しさと課題を抱えている。ブリーフィングルームで青島が冷静に前日の総括を口にした。
「昨日の敗因は三点。前衛の突撃が散発的だったこと。中衛と後衛の連携が遅れたこと。そして――白鳥少尉、あなたが早々に脱落したことです」
「っ……はい」
真里奈は悔しさで唇を噛みしめた。まだ新人である自覚はある。しかし「白鳥真凜の妹」という名が背中を押しもすれば、足を重くもしていた。
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訓練開始
シミュレーターのゲートが開く。母艦阿賀野から12機が一斉に発進し、波打つ日本海の仮想空間へ。
「全機散開! 前衛は俺と雁部、松本、松原! 中衛は小川を中心に! C小隊は富田がまとめろ!」
涼介の号令が飛ぶ。
最初の敵波、重光線級のレーザーが空を裂いた。
「真里奈、動きが硬いぞ! もっと散らせ!」
「はいっ!」
必死に機体を旋回させるが、動きはぎこちなく、直後に警告音。
《撃墜判定》
「またか……」
ヘッドセットを外した真里奈の手が震える。
「真里奈ちゃん、焦りすぎ!」
紗栄が慰めるが、本人は俯いたまま。
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連続失敗と修正
午前中だけで5度の全滅。
「俺の突っ込みに後衛がついてこれねぇ!」
涼介が苛立つ。
「前衛が早すぎるんですよ。俺たちが陣形組む前に突っ込んだら支えられるわけないでしょう」
小川が冷静に返す。
「おうおう、仲良くケンカしてんじゃねぇぞ」
富田が割って入り、雁部も笑う。
「まあ、昨日よりはマシっすよ。ナベさん即死しなかったし」
「うるせぇ!」
笑いが起こるが、重い空気は完全には晴れない。
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午後の訓練。真里奈は先任たちのアドバイスを胸に、涼介の斜め後方に陣取った。
「真里奈、撃て!」
小川の声に反応し、要撃級を正確に撃破する。
「……やった!」
「調子に乗んな! 次来るぞ!」岸本の一喝に、緊張が解けず必死に砲を構え続ける。
次のラウンドでは、紗栄が援護する形で真里奈を導いた。
「右! チビ兄の後ろ狙って!」
「了解!」
仲の良い二人のやり取りに、大友が微笑む。
「いいコンビになってきたじゃない」
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夜、二日目最後の訓練。全員疲労困憊だったが、涼介が声を張る。
「これで終わりにすっぞ!。全員で第4段階まで行くぞ!」
序盤は安定。松松コンビが波状の要撃級を斬り捌き、雁部が堅実に援護。B小隊は小川の指揮で後衛を守り抜き、静と真里奈が射線を繋ぐ。C小隊は富田の砲撃で道を切り開き、大友と前園が堅実に支える。
「真里奈、次だ! 撃ち落とせ!」
「はい!」
真里奈の狙撃が命中し、突破口を開く。
第3段階、大野掃討。松原が声を上げる。
「松本、左!」
「はいなー!」
松松コンビの連携が火を吹く。
そして遂に第4段階、突入部隊の降下支援。BETAの群れが押し寄せる中――。
「もう……退かない!」
真里奈が泣きそうな声で叫びながらも引き金を引き続けた。
最終的に数機が撃墜判定を受けたが、システムには「突入成功」の表示。ブリーフィングルームに歓声が広がる。
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訓練後
シミュレーターから出てきた真里奈の目には涙が滲んでいた。
「やっと……最後までいけた」
「おう、やっと一人前って感じだな!」
雁部が笑い、岸本も頷く。
「根性は認めるぜ」
紗栄は泣きながら抱きついた。
「真里奈ちゃん、すごいよ!」
涼介はそんな仲間たちを見回し、大きく息を吐いた。
「これなら最先鋒を任されても恥ずかしくねぇな」
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こうして二日間のシミュレーター訓練を経て、レッドキグナス中隊12人は「最先鋒を担うに足る部隊」として完成度を増した。
特に真里奈の成長は、皆に「次世代の可能性」を感じさせるものだった。