Muv-Luv Alternative:Red Cygnus 血染めの白鳥達   作:NageT

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第百二十四話 乗船と決意のブリーフィング

12月24日午前。

長岡基地から搬送トレーラーで運び込まれた各小隊の不知火が、艦載エレベーターで次々と阿賀野の格納庫へ収まっていく。

その光景を見上げながら涼介は、思わず感嘆の息を漏らした。

 

「すげぇな……3中隊全部並ぶと、やっぱ壮観だな。」

 

横で煙草を口にくわえた富田が頷く。

「おうよ。夏の大三角形が揃ったっけね……こうして見ると、帝国の精鋭って気もするっけ。」

 

小川も冷静に口を挟む。

「実際そういう扱いなんでしょう。レッドキグナス、ブルーイーグルス、イエローライラ、三隊揃って“サマートライアングル大隊”。大仰な名前ですが、背負ってるものは重いですよ。」

 

格納庫では整備兵が慌ただしく動き回り、戦術機の最終チェックを行っている。

艦内放送が鳴り響き、全員はブリーフィングルームへと移動した。

 

 

最終ブリーフィング

 

ブリーフィングルームには各中隊が揃っていた。

スクリーンに映し出されるのは佐渡島の地図と、甲21号目標とされるハイヴの位置。

 

説明役の参謀将校が硬い声で告げる。

 

「――作戦は明日、12月25日未明より開始される。

第一段階、軌道上より国連宇宙軍の装甲駆逐艦隊が飽和攻撃を開始。

第二段階、帝国連合艦隊第2戦隊による真野湾への突入。

そして――」

 

一拍置かれ、会場の空気が張り詰める。

 

「――第三段階において、ウィスキー部隊が順次揚陸する。

先行して突入するのは……レッドキグナス中隊。最先鋒だ。」

 

ざわめきが広がった。

スクリーンの矢印が赤く光り、真っ先に佐渡の海岸へ突撃する矢印が「RED CYGNUS」と明記されている。

 

涼介は息を呑み、拳を握った。

(やっぱり、来やがったか……故郷に一番乗りできるのは嬉しい。けど、真っ先に死ぬのも俺らだってことだ……)

 

隣で青島が静かにメモを取りながら、淡々と頷く。

「大尉……やはり、覚悟はしておくべきですね。」

 

 

サマートライアングル大隊 打ち合わせ

 

ブリーフィング終了後、中隊長と小隊長9名が別室に集められた。

テーブルを囲むのは――

• レッドキグナス:鍋島大尉、小川中尉、富田中尉

• ブルーイーグルス:江上大尉、池田中尉、甲斐田中尉

• イエローライラ:高橋大尉、雨宮中尉、鳥居中尉

 

江上大尉が関西訛りで切り出す。

「とりあえず、さっきの説明やけど……最先鋒は鍋島んとこや。ウチとライラはその後に続いて支援、増援のBETAを引きつける形やな。なんぞ不安は?」

 

涼介は苦笑する。

「不安は山ほどあるけどよ、やるしかねぇだろ。佐渡は俺の故郷だ、必ず踏みしめてやる。」

 

「……頼もしいこっちゃ。」

江上が頷く一方で、彼の横に座る池田中尉が涼介を見つめて笑った。

 

「お前が先陣ってのも因果なもんだな、涼介。……同期の俺から言わせてもらえば、“突撃バカがホントに突撃するんだな”って感じだ。」

 

「はっ、メスゴリラと結婚した男に言われたかねぇな。」

涼介が皮肉混じりに返すと、場の空気が一気に和む。

 

「こら、うちの静をそう呼ぶな!」

池田が苦笑しながら抗議し、江上が豪快に笑った。

 

「まぁまぁ落ち着けや池田、ブルーイーグルスの俺らは、お前の嫁のレッドキグナスと連携する場面も多いはずや。夫婦喧嘩してる暇はないで?」

 

今度はイエローライラ中隊長の高橋が口を挟む。

やや軽薄そうな笑みを浮かべながらも、声は真剣だった。

「とにかく、俺らサマートライアングル大隊で揃ってんだ。帝国の看板背負ってんだからよ、国連に負けねぇ戦い見せようぜ。」

 

テーブルの上に拳を突き出す高橋。

涼介と江上も応じて拳を合わせる。

「帝国にサマートライアングル大隊あり、だな!」

 

その瞬間、9人の間に確かな一体感が生まれた。

 

 

江上とのやり取り

 

解散後、廊下を歩いていた涼介に声がかかる。

「鍋島!さっきの打ち合わせでも話したけど……ほんま大丈夫か?新兵もおるし、最先鋒やぞ?」

 

江上大尉だった。

その声音には、冗談めかした関西訛りの奥に、明確な心配の色があった。

 

涼介は肩をすくめて答える。

「江上さん……正直、不安がねぇわけじゃねぇ。でも、やるしかねぇだろ。俺が弱気になってたら、兄貴や真凜大尉に笑われちまう。」

 

江上は真剣な眼差しで涼介を見つめ、肩を強く叩いた。

「そうか……なら任せたで。お前らがコケたら、全部崩れる。頼むで、鍋島……それに新兵は白鳥大尉の妹なんやろ……死なすなよ」

 

「わかってるよ。誰も死なせるつもりはねぇ!俺らが先陣切って暴れてやる。――後ろは頼んだぜ。」

 

涼介の言葉に、江上は力強く頷き返す。

 

 

 

格納庫に戻った涼介は、自分の不知火壱型丙を見上げた。

「……兄貴。やっと帰れるぜ、佐渡に。」

 

その声は、静かに響く格納庫に吸い込まれていった。

背中に積もるものは重い。だが、仲間たちとなら進める――そう信じながら。

 

作戦開始まで、あと数時間。

運命の戦場は、目前に迫っていた。

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