Muv-Luv Alternative:Red Cygnus 血染めの白鳥達   作:NageT

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第百二十九話 人類の勝利と佐渡島奪還を

 甲板に響く警鐘のような集合ラッパ。

 12月25日早朝、戦術機母艦《阿賀野》のブリーフィングルームは異様な熱気と緊張に包まれていた。帝国陸軍・海軍・国連軍の衛士たち、そしてサマートライアングル大隊の三中隊。百を超える兵たちが整然と並び、正面の大型スクリーンに映し出された佐渡島の地図を食い入るように見つめていた。

 

 壇上に立つ作戦参謀が声を張り上げる。

 

「これより、甲21号作戦の最終ブリーフィングを行う! 本作戦は日本帝国軍および国連軍の総力を結集した、極東最大の反攻作戦である!」

 

 張り詰めた空気にざわめきはない。ただ呼吸だけが一斉に揃う。

 

 

◆ 作戦概要の説明

 

「第1段階、軌道上からの対レーザー飽和攻撃をもって敵迎撃能力を削ぐ。

 第2段階、帝国連合艦隊第2戦隊が真野湾へ突入、艦砲射撃と共に第17戦術機甲戦隊が上陸し、雪の高浜より橋頭堡を確保。

 

 第3段階、両津湾沖に展開した国連太平洋艦隊および第3戦隊が砲撃を開始、続いて戦術機部隊が旧大野を確保。

 

 そして第4段階! ウィスキー部隊が投入され、『甲21号目標』内部への突入を行う!」

 

 ここで作戦参謀の声が一段と強くなる。

 

「――レッドキグナス中隊は、そのウィスキー部隊の最先鋒に任命された!」

 

 ざわ、と帝国軍将兵の列が小さく揺れる。誰もが「最先鋒」という言葉の重みを理解している。

 つまり、真っ先に地獄に突入し、敵の矢面に立ち、道を切り拓く部隊。生還率は限りなく低い。

 

 

◆ 涼介の決意と部隊の反応

 

 隊列の中で涼介は前を見据えたまま、小さく息を吐いた。

(やっぱり……来ちまったか。最先鋒だなんて、笑える役目だな。でも――)

 胸の奥に蘇るのは、故郷・佐渡の海。あの日見た赤い白鳥の光景。

(兄貴……俺はここでやる。兄貴が守ろうとしたこの国を、この島を、俺が取り戻す)

 

 隣に並ぶ紗栄が小さく震えているのを感じ取り、そっと視線だけを向ける。

「チビ兄……」

 兄妹の短い視線の交錯だけで、互いの決意は伝わっていた。

 

 

◆ 艦長の言葉

 

 壇上に立ったのは阿賀野艦長、中田善清艦長。

 背筋を伸ばしたその姿は、老将の威厳を余すところなく示していた。

 

「諸君! 本作戦は人類の命運を賭けた大反攻である! だが忘れるな、我らが立つは帝国の地、佐渡島! 古より我らが先祖が守り抜いた大和の地である!」

 

 艦長の声が低く、重く響く。

 

「諸君らの健闘を祈る! 人類の勝利と――佐渡島の奪還を!」

 

 全員が一斉に立ち上がり、右手を胸に当てる。

 

「「「人類の勝利と佐渡島の奪還を!!」」」

 

 ブリーフィングルームの空気が爆発するような熱量で震えた。

 

 

✦ 各隊移動と中隊長同士の会話

 

 ブリーフィング終了後、兵たちはぞろぞろと格納庫へと移動する。鉄の廊下に響くブーツの音が不気味なほど揃っていた。

 

 その途中、レッドキグナス中隊長・涼介の肩を叩く男がいる。ブルーイーグルス中隊長・江上大尉だ。

 

「鍋島、いよいよやな。さっきの発表、聞いた時、正直ヒヤッとしたわ」

「俺もだよ江上さん……でも、やるしかねぇだろ」

「せやけど、新兵や女子もおる部隊や。ほんま代われるなら代わってやりたいくらいやで」

「……ありがとよ。でも司令部が決めた以上、俺らがやるしかねぇ。ビビってたら真凜大尉や兄貴に笑われちまう」

 

 涼介は無理やり笑顔を作るが、江上は苦笑いして拳を差し出す。

「なら、せいぜい暴れてこいや。昨日も言ったがお前らが突破口開かんと後続も進めん。後ろは俺らがしっかり支える。信じろ」

「……あぁ! レッドキグナスの力、見せてやんぜ!」

 

 拳をぶつけ合う2人。その様子を見ていたイエローライラ中隊長・高橋功太がニヤリと笑う。

 

「おーおー、熱いのは結構だが、こっちの出番まで残しとけよ?」

「高橋大尉……言ってくれるな。帝国にサマートライアングルありってとこ、見せつけてやろうぜ」

「おうとも。明日は大暴れだ」

 

 三人の中隊長が肩を並べる。敵は無数のBETA、そして巨大なハイヴ。だがこの瞬間、帝国の誇る三角形の結束は誰にも揺るがなかった。

 

 

✦ 格納庫にて

 

 格納庫のシャッターが開かれると、そこには整然と並ぶ戦術機の群れ。

 帝国陸軍標準の灰色に染まった不知火たちが出撃の時を待ち構えていた。

 

 涼介は壱型丙の脚部を見上げ、胸の奥で呟く。

(兄貴……見てろよ。俺たちは必ず道を拓く。佐渡を、取り戻すんだ)

 

 整備兵たちが駆け回り、カタパルトデッキが赤いランプを点滅させる。

 いよいよ、決戦の時は迫っていた。

 

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