Muv-Luv Alternative:Red Cygnus 血染めの白鳥達 作:NageT
外からは艦砲射撃の轟音が響き、振動が格納庫を揺らす。作戦は既に第二段階に入っていた。
涼介は全員の動作を確認し、一度目を閉じて深く息を吐く。
そしてお馴染みの「儀式」を始めようと通信を繋いだ。
「青島……ちょっといいか?」
司令部席に座る青島葵が応じる。
「はい、鍋島大尉。なんでしょうか?」
キグナス中隊全員が、思わずニヤリとする。いつもの涼介の軽口、葵への軽い誘い――そう思っていた。だが、次に涼介が放った言葉に全員の時間が止まる。
「机の横に銀色の煙草ケースがあるだろ。開けてくれ」
「……? はい、これは保科大尉から受けついだものですね、開けます。これは……指輪?」
「えっ!? 指輪!?」
「バカ!声出すな!」
小川が叫び、富田が慌てて制止する。
涼介は息を大きく吸い込んだ。
「青島葵! 俺と結婚してくれ! 俺は――鍋島涼介は、お前を愛してる!」
格納庫が凍り付いた。あまりに突然の告白。誰も声を出せない。
だが、短い沈黙の後、震える声が返ってきた。
「…………はい。私も、涼介……あなたを愛しています」
「よっしゃぁぁぁぁぁっ!!!」
涼介の絶叫が艦内通信に響き渡る。
「ちょ、ちょっと待てナベさん! 今のマジか!?」
「お幸せに〜」
「いやいやいや、いつもフラれてたのにいきなり結婚!? 青島中尉もOKするの!?」
「チビ兄……ほんとに? ……青島中尉、本当にチビ兄でいいんですか?」
雁部、松本、大友、紗栄が一斉に騒ぎ出す。青島は淡々と告げた。
「紗栄少尉……先程から私は青島ではなく……鍋島葵です。義姉さんと呼んでくださって構いませんよ」
「「「えぇぇぇぇぇぇ!?!?」」」
キグナス仲間全員の声が重なる。
「え?だっていつも考えておきますって言ってあしらってましたよね?あお……なべ、島中尉」
小川が半狂乱になりながら誰にともなく質問する。
「考えた結果、毎回涼介とはデートしてました。」
葵が淡々とした声で小川の質問に答える。
「「「うそ〜ん!!!」」」
またキグナス中隊の声が重なる。
「あれ?言ってなかったか?明星作戦の後くらいから俺たち付き合ってたぜ」
涼介があっけらかんと言う。
「「「はぁぁ!!!?」」」
三度目のキグナス中隊の叫び。
格納庫が大爆笑と混乱に包まれる。だがその騒ぎを遮るように、別回線から声が飛んできた。
「おいお前ら! オープン回線でなにしとんねん! 最先鋒任されて緊張してるか思たら、結婚会見かい!」
江上大尉の怒声が飛ぶ。
「へっ、もう作戦は第二段階に入ってるぜそろそろ出撃だそろそろ切り替えてくれよぅ」
高橋大尉からも釘を刺される。
「ワリィな江上さん、高橋さん……やる事もやった!テメェら気合い入れていくぞ!」
江上と高橋が畳み掛けるように言うと涼介は謝罪して気合いを入れる。
「ま〜アレや、とりあえずオメデトさん!鍋島……そんで俺からのご祝儀や」
江上が涼介に言うと司令部に通信を繋ぐ。
「と言う事で聞いてましたか?司令部……こいつら作戦前に浮かれとります、こんな奴らに最先鋒任せられまへん!最先鋒はブルーイーグルスに譲ってもらえまへんか?」
江上は突然司令部に最先鋒の変更を要求する。
「江上さん!」
涼介が声を上げるが高橋も割り込む。
「こんな作戦前にアホやる奴が隊長やってる隊には無理ですね、イエローライラ中隊も一緒に最先鋒志願しますわ」
司令部に一瞬の沈黙。やがて返答が届く。
『了解した。ブルーイーグルス中隊、イエローライラ中隊に最先鋒を命ずる、必ず血路を切り開かれたし。』
その瞬間、涼介は思わず涙をこぼした。
「江上さん……高橋さん……」
「おう。お前らは新婚気分を少し楽しんでからちょっと遅れてこい。俺らが赤い絨毯引いておいたるわ!」
「佐渡はお前の故郷なんだろ? 結婚の報告、しっかりするつもりでこいよ!」
江上と高橋の笑い混じりの声。
男たちの背中がカタパルトへと消えていく。
「ブルーイーグルス中隊、出るぞ!」
「了解!」
「イエローライラ中隊、続け!」
「了解!」
轟音と共に二中隊が阿賀野を飛び立つ。
その背中に、レッドキグナス中隊の全員が一糸乱れぬ敬礼を送った。