Muv-Luv Alternative:Red Cygnus 血染めの白鳥達 作:NageT
轟沈した艦艇の残骸が海面に浮かび、焦げ臭い匂いが風に乗って戦場を覆っていた。揚陸艦隊は甚大な被害を受けながらも、佐渡島への橋頭堡を必死に維持している。
その戦線の一角、前に出たブルーイーグルスとイエローライラの部隊は激しいBETAの反撃に押され、隊列にぽっかりと穴を空けていた。そこへ新たに投入されたのが――レッドキグナス中隊だった。
「テメェら、状況は見ての通りだ! 他の部隊がが食い破られた戦線の穴を塞ぐのが俺たちの仕事だ!」
涼介の怒号が通信に響く。
「了解!」
11機の声が重なる。その声には緊張が宿っていたが、迷いはなかった。
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突入
雪に覆われることなく剥き出しの大地と化した佐渡の海岸線に、不知火の群れが飛び込んでいく。先頭を行くのは、壱型丙を駆る鍋島涼介。長刀を抜き放ち、殺到してくる要撃級を真っ二つに叩き斬った。
「来やがれぇぇ!!」
怒声と共に血飛沫がはじけ、赤黒い塊が地面に叩きつけられる。
その背後で松松コンビ――松本と松原が連携を取り、迫る群れを切り崩していく。
「みっちゃん、左! あたしが撃つ!」
「了解だ、松本!」
榴弾と突撃刀が交差し、戦車級の群れが沈黙する。
「うぉぉ! この数は久々にバカヤベーな!」
雁部が吠えながら突進し、要撃級を頭ごと蹴り飛ばして爆ぜさせた。
「落ち着け雁部少尉! 突っ込みすぎです!」
後方から小川が制止し、120ミリ突撃砲で支援射撃を加える。火線が雁部の脇をかすめ、列を成していた中型群を一掃した。
「ははっ! サンキュー小川さん!」
雁部は笑いながら退避し、再び隊列に戻る。
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「チビ兄! 右から回り込んで来るよ!」
紗栄が鋭い声で報告し、砲撃支援を放つ。爆風で戦車級の塊が吹き飛び、突撃路が開かれる。
「やるじゃねぇか紗栄! 援護感謝する!」
涼介が笑い、再び長刀を振るう。
「大尉、左翼に群れが流れ込んでます!」
大友が冷静に報告。すぐさま富田が応じる。
「任せろ! 俺が道を塞ぐっけ!」
轟音と共に富田の砲撃が炸裂し、左翼の群れを押し戻した。
「前園、右を固めろ!」
「了解」
短い返答と共に、前園の不知火が冷徹に群れを薙ぎ払う。淡々とした動きがかえって頼もしかった。
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戦線中央では、真里奈が必死に食らいついていた。まだぎこちない操縦だったが、姉譲りの真っ直ぐな意思が機体を動かす。
「くっ……まだ、やれる……!」
強襲掃討の役目を果たそうと、突き出した突撃砲で要撃級の装甲を撃ち抜く。だが反撃に晒され、機体がぐらりと傾く。
「真里奈! 落ち着け、深呼吸だ!」
岸本が声を飛ばし、横合いから乱入した要撃級を撃ち抜く。
「ありが……とうございます!」
荒い呼吸を整え、再び構えを取る真里奈。その瞳にはもう迷いはなかった。
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戦線は一時的に膠着していたが、涼介が吠える。
「今だ! 押し返すぞ!!」
その声に全員が呼応する。
「了解!!」
A小隊が突撃し、B小隊が火線を支え、C小隊が砲撃で道を切り開く。息の合った連携が光り、崩壊しかけた戦線は再び息を吹き返した。
「ナベ大尉、右はおっけーよ!」
「左も制圧完了です!」
「中央突破口確保!」
報告が相次ぐ。涼介は全身に力を込めて叫んだ。
「よっしゃぁ! これで持ち直したぞ! ブルーイーグルとイエローライラに繋げぇぇ!」
BETAの波を押し返し、戦線の穴は完全に埋まった。崩壊しかけた防衛線は――レッドキグナスの奮闘で繋ぎ止められたのだ。
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通信の向こうで、江上と高橋の声が聞こえた。
「おいおい、やりおるな鍋島!」
「流石は保科の後継者ってとこだな!」
涼介は息を吐きながら、苦笑する。
「へっ、やっと追いついたぜ!」
戦場の空気は血と鉄にまみれていたが、その中で確かに一筋の光が差していた。
レッドキグナス――死地に咲く、赤い白鳥の羽ばたきであった。