Muv-Luv Alternative:Red Cygnus 血染めの白鳥達   作:NageT

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第百三十三話 甲21号作戦 ―前に進め!

 「鍋島大尉、コマンドポストより伝令。旧佐和田町にて大隊規模のBETA群を確認。先行するエックスレイ部隊と交戦中。ウィスキー本隊には南下命令が発令されています」

 葵の冷静な声が戦術情報と共に全機に送られてきた。

 

「なるほどな……よし、キグナス! 南下を開始するぞ!続け!」

涼介が号令を飛ばす。戦術機群は一斉に南へと向きを変え、海岸線から旧佐和田の市街跡を目指して進撃を開始した。

 

 だが――。

 

 警告音が鳴り響いたのは、その直後だった。

「ッ! 地中進行反応!? 真下から来ます!」

小川の声が鋭く飛ぶ。

 

 次の瞬間、大地を割って要撃級を先頭に、戦車級、突撃級が怒涛の勢いで地中から這い出した。砂煙と土塊を撒き散らし、数百体規模の群れが突如目の前に姿を現す。

 

「チィッ! 奇襲かよ……全機、戦闘体制取れぇぇ!!」

涼介が叫ぶ。

 

 

 

「く、来るなぁ……!」

真里奈が必死に操縦桿を握る。突如現れた突撃級が彼女の機体に組み付こうと迫ってきた。

 

「真里奈、退けぇぇ!」

涼介の声が飛ぶが、避けきれない。

「いやぁぁ!」

 

 その瞬間、別の機体が割って入り、突撃級を蹴り飛ばした。

「落ち着け! 視野を狭めるな!」

岸本の怒鳴り声だ。彼の機体が突撃砲を振るい、迫る戦車級を次々と掃討する。

 

「岸本さん……!」

安堵の声を漏らす真里奈。

 

「ここで怯んだら死ぬぞ! いいか、背筋伸ばせ、敵を睨め! 俺が隣にいる!」

岸本の熱い叱咤。真里奈の手が再び操縦桿を握り締め、震えが収まっていく。

 

「……はいっ!」

 

 

 だが次の瞬間――。

「ッ!? 足元から反応!」

富田の警告と同時に、岸本機の真下を突き破り、巨大な腕が伸び上がった。

 

「なっ……!」

 

 要撃級の凶腕が一閃。

岸本の不知火の胸部装甲を易々と貫き、コックピットを粉砕した。

 

「岸本さあぁぁん!!」

真里奈の絶叫が戦場に響く。

 

 通信は途切れた。赤黒い液体が機体の隙間から噴き出し、岸本機はそのまま膝を折り、動かなくなった。

 

 

怒りと悲しみ

 

「この野郎ぉぉ!!」

小川が駆けつけ、120ミリ砲を叩き込む。要撃級の頭部が弾け飛び、巨体が地面に沈む。

 

「真里奈! 下がれ!」

「で、でも……岸本さんが……!」

涙で声を震わせながらも動けない真里奈。

 

「いいから退けぇぇ! 今死んだら岸本少尉が報われねぇだろ!!」

小川の怒号に、真里奈はようやく後退する。

 

「っ……くぅ……」

彼女の視界には、もう二度と動かない岸本の機体が焼き付いていた。

 

 

仲間たちの声

 

「……バカヤベーよ! 岸本さんがよ!」

雁部の怒号が響き、戦車級を切り裂く。

 

「雁部!、隊列崩すな! 鍋島、どうするっけ!」

富田が叫ぶ。

 

 涼介は歯を食いしばりながらも冷静に吼えた。

「……全機、持ち場を死守しろ! 岸本さんの犠牲を無駄にすんじゃねぇ!!」

 

「了解!!」

泣き声混じりに応える真里奈を含め、全員の声が揃う。

 

 

岸本の遺したもの

 

 戦場の只中、真里奈は震える声で呟いた。

「……私、必ず強くなります。だから……見ていてください、岸本さん……!」

 

 仲間を守って死んだ先輩の背中は、確かに彼女の心に刻まれた。

 それは痛ましい喪失でありながら、同時に真里奈を成長させるための大きな礎となる――。

 

 

 こうして、レッドキグナス中隊は 岸本悠真という仲間を失う という最初の痛みを味わった。

だが戦場は彼らを待たない。

怒りと悲しみを胸に、彼らはさらに深い地獄へと進んでいく。

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