Muv-Luv Alternative:Red Cygnus 血染めの白鳥達 作:NageT
「鍋島大尉、コマンドポストより伝令。旧佐和田町にて大隊規模のBETA群を確認。先行するエックスレイ部隊と交戦中。ウィスキー本隊には南下命令が発令されています」
葵の冷静な声が戦術情報と共に全機に送られてきた。
「なるほどな……よし、キグナス! 南下を開始するぞ!続け!」
涼介が号令を飛ばす。戦術機群は一斉に南へと向きを変え、海岸線から旧佐和田の市街跡を目指して進撃を開始した。
だが――。
警告音が鳴り響いたのは、その直後だった。
「ッ! 地中進行反応!? 真下から来ます!」
小川の声が鋭く飛ぶ。
次の瞬間、大地を割って要撃級を先頭に、戦車級、突撃級が怒涛の勢いで地中から這い出した。砂煙と土塊を撒き散らし、数百体規模の群れが突如目の前に姿を現す。
「チィッ! 奇襲かよ……全機、戦闘体制取れぇぇ!!」
涼介が叫ぶ。
⸻
「く、来るなぁ……!」
真里奈が必死に操縦桿を握る。突如現れた突撃級が彼女の機体に組み付こうと迫ってきた。
「真里奈、退けぇぇ!」
涼介の声が飛ぶが、避けきれない。
「いやぁぁ!」
その瞬間、別の機体が割って入り、突撃級を蹴り飛ばした。
「落ち着け! 視野を狭めるな!」
岸本の怒鳴り声だ。彼の機体が突撃砲を振るい、迫る戦車級を次々と掃討する。
「岸本さん……!」
安堵の声を漏らす真里奈。
「ここで怯んだら死ぬぞ! いいか、背筋伸ばせ、敵を睨め! 俺が隣にいる!」
岸本の熱い叱咤。真里奈の手が再び操縦桿を握り締め、震えが収まっていく。
「……はいっ!」
⸻
だが次の瞬間――。
「ッ!? 足元から反応!」
富田の警告と同時に、岸本機の真下を突き破り、巨大な腕が伸び上がった。
「なっ……!」
要撃級の凶腕が一閃。
岸本の不知火の胸部装甲を易々と貫き、コックピットを粉砕した。
「岸本さあぁぁん!!」
真里奈の絶叫が戦場に響く。
通信は途切れた。赤黒い液体が機体の隙間から噴き出し、岸本機はそのまま膝を折り、動かなくなった。
⸻
怒りと悲しみ
「この野郎ぉぉ!!」
小川が駆けつけ、120ミリ砲を叩き込む。要撃級の頭部が弾け飛び、巨体が地面に沈む。
「真里奈! 下がれ!」
「で、でも……岸本さんが……!」
涙で声を震わせながらも動けない真里奈。
「いいから退けぇぇ! 今死んだら岸本少尉が報われねぇだろ!!」
小川の怒号に、真里奈はようやく後退する。
「っ……くぅ……」
彼女の視界には、もう二度と動かない岸本の機体が焼き付いていた。
⸻
仲間たちの声
「……バカヤベーよ! 岸本さんがよ!」
雁部の怒号が響き、戦車級を切り裂く。
「雁部!、隊列崩すな! 鍋島、どうするっけ!」
富田が叫ぶ。
涼介は歯を食いしばりながらも冷静に吼えた。
「……全機、持ち場を死守しろ! 岸本さんの犠牲を無駄にすんじゃねぇ!!」
「了解!!」
泣き声混じりに応える真里奈を含め、全員の声が揃う。
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岸本の遺したもの
戦場の只中、真里奈は震える声で呟いた。
「……私、必ず強くなります。だから……見ていてください、岸本さん……!」
仲間を守って死んだ先輩の背中は、確かに彼女の心に刻まれた。
それは痛ましい喪失でありながら、同時に真里奈を成長させるための大きな礎となる――。
⸻
こうして、レッドキグナス中隊は 岸本悠真という仲間を失う という最初の痛みを味わった。
だが戦場は彼らを待たない。
怒りと悲しみを胸に、彼らはさらに深い地獄へと進んでいく。