Muv-Luv Alternative:Red Cygnus 血染めの白鳥達   作:NageT

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第百三十六話 甲21号作戦 ―地獄に輝く大三角

 補給を終え、再編されたサマートライアングル大隊は再び戦場へと飛び出した。

 揚陸艦隊はすでに甚大な被害を受けており、艦砲射撃の轟音の中でなおも炎を上げて沈んでいく艦の姿が見える。だが、それでも作戦は止まらない。

 ウィスキー部隊の損耗率は30%に達したが――この数字を「まだ持ち堪えている」と見るしかなかった。

 

「よし、全員行くぞ! ここからが本番だ!」

 涼介の壱型丙が先陣を切り、戦場に突撃する。その背に続くように、サマートライアングルの三中隊が雄叫びを上げた。

 

 

 

「ちっ、どこもかしこも残骸だらけだっけ……」

 富田が目の前に転がる友軍機の腕部を避けながら悪態をつく。

 

「気を抜かないでください! もう死んでる機体にかまってる暇はないですよ!」

 小川が鋭く指摘する。冷静さを失わないその声は、誰よりも仲間を死なせまいという覚悟の裏返しだった。

 

「わかってるっけ!」

 富田が返すが、その声にも焦燥が滲んでいた。

 

 戦場は阿鼻叫喚だった。無限に湧くBETAが波のように押し寄せ、撃墜された友軍の断末魔が無線を通じて聞こえてくる。通信が途絶えるたび、胸を抉られる思いが走った。

 

「キグナス、前へ出ろ! 戦線を押し上げるぞ!」

 涼介の怒号に、全員が応じる。

 

「了解!!」

 12機の咆哮が重なり、不知火が前へと雪崩れ込んだ。

 

 

要塞級の出現

 

「……センサー反応! 前方、要塞級多数!」

 葵の緊迫した声がコマンドポストから響く。

 

「数は?!」

「少なくとも十数体……後方にまだ影があります!」

 

「マジかよ……!」

 雁部が思わず呻く。

 

 その直後、前方にいた部隊の通信が悲鳴に変わった。

『で、でけぇ――ああああッ!』

『無理だ! 撃ちきれねぇ!』

 断末魔と同時に、無線が次々と沈黙する。

 

「……くそッ!」

 涼介が奥歯を噛みしめる。目の前の光景は絶望以外の何物でもなかった。

 

 

「聞けぇぇぇ! あんなデカブツ、放っときゃ全部呑まれる! 俺たちがやるしかねぇんだよ!!」

 涼介の怒号が戦場に轟いた。

 

「無茶だっけ鍋島!」

 富田が叫ぶ。

 

「無茶じゃなきゃ戦場に出てねぇよ! 俺たちは元々最先鋒を任されたんだ、ならここで意地を見せろ!!」

 

 その声に、ブルーイーグルス、イエローライラの残存機体も奮い立つ。

 

「おいおい、燃えてきたやんけ! ブルーイーグルス、行くぞ!」

 江上の関西弁が戦場に響く。

 

「イエローライラも続け! 俺たちで要塞級の首、取ってやる!」

 高橋の声も重なる。

 

 サマートライアングル大隊――その三角形が再び戦場に突き立った。

 

 

 

「右の要塞級、俺が取る! 小川、カバーしろ!」

「了解! 撃ち漏らさないでくださいね!」

 

 涼介の壱型丙が長刀を構えて突撃する。横から120ミリが火を噴き、要撃級を吹き飛ばした。

 

「松原、松本! 2人で足を止めてこい!」

「了解です!」

「はいな〜!」

 

 松松コンビの連携が火を吹き、要塞級の脚部に120mmが食い込む。巨体がよろめいた瞬間、富田の砲撃が直撃し、その巨体を沈めた。

 

「一体撃破!」

「まだだ、数が減らねぇ!」

 

 次々と現れる要塞級。仲間の叫びと共に光の奔流が戦場を切り裂く。

 

 

「後ろからもだと?! 挟まれたぞ!」

 雁部の声に全員が息を呑む。

 

「怯むな! ここで崩れたら終わりだ! 全員、生き残って勝つぞ!!」

 涼介が叫ぶ。その声に、仲間たちは再び操縦桿を握り直した。

 

「了解ッ!」

「絶対に突破する!」

「俺たちはまだやれる!」

 

 絶望的な状況の中で、サマートライアングル大隊は一歩も引かずに突撃を敢行した。

 その姿は、もはや鬼神の如しだった。

 

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