Muv-Luv Alternative:Red Cygnus 血染めの白鳥達   作:NageT

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第百三十九話 甲21号作戦−−第四段階への移行

 爆炎と黒煙に覆われた佐渡の空を、短く乾いた音が切り裂いた。弾薬を受け取るために戦術機が次々と補給コンテナへと接近する。レッドキグナス、ブルーイーグルス、イエローライラ――もはや「大隊」と呼ぶには少なすぎる数の機体が、順に並んで無言で補給を受けていく。

 降りることは許されない。ただアームで接続し、消耗した弾倉や推進剤タンクを交換する。その無機質な作業の合間、無線からは疲労と緊張が混ざった声が飛び交っていた。

 

「……全員、推進剤の残量チェックを忘れんなよ。次の突撃は長くなる」

涼介が低く告げると、松原の若い声が返る。

「了解です、大尉。……でも、もう僕たち、半分の数しかいないんですよね」

「半分じゃねぇ。十分だ。生き残った奴らは全員、最強の精鋭だ」

涼介の言葉に、松原は小さく笑った。

 

「鍋島は言うことは相変わらず派手だっけね」

富田の豪快な声が重なる。だが笑いの裏にあるのは痛みだ。前園を失った穴は大きい。それでも士気を折らせないように――富田は無理にでも笑ってみせた。

 

「……ほんとに、大隊っていうより中隊みたいな数になっちゃったね」

紗栄がぽつりと呟く。

「数じゃない。隊は心だ。お前の兄貴がまだ立ってんだ。だから、レッドキグナスは死んでねぇ」

小川が断言する。その声には副官としての確かな響きがあった。

 

 

他部隊とのやり取り

 

「ま、ほんまになぁ。俺らも今や二機や。ブルーイーグルス中隊の看板も泣くわ」

江上が乾いた笑いを交える。隣の戦術機の塗装には、幾筋もの焼痕と弾痕が刻まれていた。

「江上さん……それでも、あんたが残ってるだけで違う」涼介が応じる。

「おう。その言葉、信じとくで。……白鳥大尉の妹もおるんやし、気張らなあかんな」

 

 一方で、イエローライラの高橋が軽口を叩いた。

「こっちも後4機だぜ。もはや中隊じゃなくて寄せ集め小隊だな。けどまあ、まだ動ける。やることは変わらん」

「寄せ集めだろうがなんだろうが、俺たちはサマートライアングル大隊だ」

涼介の言葉に、誰もが短く「了解」と応じた。

 

 

全体通信

 

その時、全軍に向けて重々しい通信が流れる。

《こちら司令部。諸君らの奮戦により、ウィスキー部隊は既に戦線を佐渡中央部へと押し込んだ。損耗率は三三%に達するも、作戦は続行可能と判断する。これより甲21号作戦は第四段階へ移行する》

 

 無線に緊張が走る。葵の声が淡々と響く。

「……第四段階。オービットダイバーズ、軌道突撃を開始」

 

 次の瞬間、頭上の空に光の筋がいくつも走った。衛星軌道から一直線に降下してくるのは、白い閃光――オービットダイバーズ部隊だ。空気を焦がしながら突入するその姿は、まるで流星群のように佐渡の大地へ降り注ぐ。

 

「おいおい……バカヤベーな!化け物じみた度胸だな」

雁部が感嘆交じりに呟く。

「私らも地獄にいるのは変わらないけどね」大友が小さく笑った。

「あれが突入部隊だ……でも、それを活かすために俺たちがここにいる」

涼介の言葉に、誰もが頷いた。

 

 

 

 補給完了の信号が各機に点灯する。

「弾薬・推進剤、全て補給完了。全機、稼働率八割以上を確保」葵の報告が流れた。

 

「よし……お前ら、準備はいいか?」

涼介の問いに、各機から声が重なる。

「問題なし!」「やれるぜ!」「任せて!」「やるよ〜ナベ大尉」

 

「……よし、じゃあ行くぞ。江上さん、高橋さん、まだ中隊の看板は死んでねぇ。俺らで証明してやろうぜ」

涼介が叫ぶ。

 

「ほんなら任せとけや、鍋島! ブルーイーグルス、まだ飛べる!」

「イエローライラも同じだ! 見せてやろう、俺たちの意地を!」

 

 各機の跳躍ユニットが火を吹き、戦術機が再び戦場へと舞い戻る。戦死者の声を背に、それでも彼らは立ち止まらない。

 

 ――サマートライアングル大隊、再び地獄の只中へ。

 

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