Muv-Luv Alternative:Red Cygnus 血染めの白鳥達 作:NageT
戦術管制室のモニターに、帝国陸軍標準塗装の灰色の戦術機が12機。F-4J改「77式戦術歩行戦闘機〈撃震〉」。昭和末期に米国製F-4ファントムを日本向けに大幅改修した第1世代機だ。今では旧式の部類に入るが、その性能と整備性の良さから、依然として前線での主力として運用されている。
その機体に乗り込んだのは、第17戦術機甲大隊・第1戦術機中隊「キグナス中隊」。全12機3個分隊の中隊構成で、現在、戦術シミュレーターを使用した複合訓練が行われている。
前衛を務めるA分隊は突撃・強襲を主任務とする4機編成。
先頭を行くのは中隊長・白鳥真凜大尉。冷静かつ大胆な判断力で知られる中隊の象徴であり、突撃前衛(ストームバンガード)として、敵に切り込む際の先鋒を務める。その直後を追走するのが、鍋島涼介少尉。同じくストームバンガードの役割を担うが、まだまだ彼女に食らいついていくのがやっとというのが現実だった。
「——涼介、今のカット遅れてる。敵影捕捉前に動き出せ」
『了解です、真凜大尉!』
返答しつつも、涼介の意識はモニターに映るバイタルと戦術機の挙動に釘付けだ。白鳥大尉の動きは、まるで機体と一体化しているかのような滑らかさと切れ味を見せる。機体の背に装備された突撃砲を正確無比に撃ち込み、残った敵影には瞬時に長刀を抜き、頭部へと斬撃を加える。
続いて陣形を維持するのが、江上少尉と土岐少尉。どちらもストライクバンガードの強襲前衛だ。江上は涼介の先輩であり、優秀な砲撃手でもある。
『江上さん、そっちは俺が押さえます!』
「余計な真似すんなや新人。お前はまだ“自分が落とされずに前に出る”ことだけ考えとき!」
『はい、すみません……!』
敵影との距離が縮まる中、江上が突撃砲の砲口を振りかざし、間断なく撃ち続けた。彼の機体には長刀2本と突撃砲が2文装備されている。ストライクバンガードは火力に比重を置いた構成で、射撃と斬撃による機動突破を求められる。
「江上!テメェ強襲前衛だろ!ビビってねぇで前出ろ!」
背後から土岐少尉の怒号が響く。機体越しの声に、江上が舌打ちして踏み込んだ。
中衛に布陣するのはB小隊、保科隼人中尉率いる迎撃後衛(ガンインターセプター)・強襲掃討(ガンスイーパー)構成の小隊だ。中隊内でもっとも安定した火力を有し、後衛と前衛の連携を成立させる要だ。
「白田、滝本、中原、砲撃支援位置ついたら即射撃開始。前に出るな、ここは俺が切る」
「了解、保科中尉!」
保科の機体が突撃砲を構え、敵影に向かって飛び出す。迎撃後衛はバランス型の装備構成で、機動性と守備力に優れている。涼介の兄貴分である保科の動きは、涼介にとっての目標だった。
『いつか兄貴を超える衛士になってやんよ!ぜってぇ負けねぇからな!』
そんな想いを胸に、涼介は白鳥大尉の背を追い続ける。
そして後衛、C小隊。砲撃支援(インパクトガード)の岸中尉、打撃支援(ラッシュガード)の歳刀と芹澤、そして制圧支援(ブラストガード)の安藤からなる遠距離支援班。彼らの火力が部隊全体の戦域制圧能力を担っている。
岸中尉の狙撃が敵の主戦力を吹き飛ばし、歳刀と芹澤が高火力で穴を広げる。安藤は慎重な火力調整で誘導弾をばら撒き、敵の進路を封じていく。
中隊の12機は連携を保ったまま、BETA模擬目標を次々と破壊していく。動きの中に、明らかに“訓練”では済まされない緊張感が走っていた。
——涼介の初陣は、もう間近。
中隊全員の覚悟が、整いつつあった。