Muv-Luv Alternative:Red Cygnus 血染めの白鳥達   作:NageT

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第百四十一話 サマートライアングル大隊 ― 再編、そして別れ

「……合流した機体をデータリンクに追加しました」

 

葵の冷静な声が通信に響く。救助した友軍機の指揮系統が完全に乱れている。隊長機を失い、辛うじて動いている激震の数機が、まとまりのないまま戦場を彷徨っていた。

 

レッドキグナス中隊は全力でカバーに入っていたが、どうしても足並みが揃わない。推進剤も、反応速度も、不知火とは段違いだった。

 

「……ちっ、このままじゃ突破どころか足を引っ張られますね」

 

小川の苛立った声が中隊回線に流れる。彼の分析は冷徹だが正確だ。現状、この寄せ集めを抱えたままでは、最前線で求められる突破力が殺されるのは目に見えていた。

 

そこに、江上からの通信が割り込んだ。

 

「鍋島!聞け。今のお前らのままじゃ、突破力を殺すことになる。ブルーイーグルスとイエローライラの残り、それに救助した部隊は、俺らがまとめる。お前らは――身軽になって、突っ込め」

 

一瞬、涼介の息が止まった。仲間を見捨てろと言っているわけじゃない。だが、実質的には「別れる」という決断だった。

 

「……江上さん、それは……」

 

「わかっとるやろ?お前らは突破口を開けるためにいるんや。今、俺らがやらなあかんのは孤立した部隊の救助や。やり残したら、この後が詰む」

 

涼介は奥歯を噛み締めた。江上の言葉は正しい。だが、仲間を置いていくようで胸が焼ける。すると高橋の軽い声が重なる。

 

「ナベシマぁ、気ぃ使うな。俺らは俺らの役目を果たす。お前らは突撃だ。サマートライアングル大隊が生き残った証を残すんだよ」

 

「…………くそっ!」

 

涼介は吠えるように叫び、そして深く息を吐いた。

 

「わかった……任せる。だが約束しろ、江上さん、高橋さん……絶対にまた会おうぜ!」

 

「おう、約束や。……ただまあ、俺は死んだら恨むなよ?」

 

江上が笑う。その声に一瞬、静寂が走る。だが次の瞬間、富田が笑い飛ばした。

 

「バカヤロー!江上さんが死ぬわけねえだろ!また焼酎奢ってもらうんだっけね!」

 

「そっちこそ死ぬなよ、富田ぁ。お前の訛り、次も聞かせてもらうわ」

 

高橋も調子を合わせる。重苦しい戦場に、ほんのわずかに温かい空気が流れた。

 

「よし、決まりやな。ブルーイーグルスとイエローライラは俺がまとめる。鍋島、お前らは突っ走れ!」

 

「了解!……江上さん、高橋さん――生き残れ!」

 

「言われんでもや!」

 

短く、それでいて熱い言葉のやり取りを最後に、部隊は二手に分かれた。レッドキグナス中隊は進撃路を維持するため前進。江上と高橋は、残された友軍をかき集めるために背を向けた。

 

その背中を、涼介は振り返らずに見送った。

 

 

 

「……ナベさん、ホントにいいんですかね?」

 

雁部が煙草でも咥えたような調子で言う。だがその声には不安が混じっていた。

 

「仕方ねぇだろ。あの人らは俺たちより仲間をまとめるのが得意だ。俺らは突っ込むことしかできねぇ」

 

涼介の声は荒いが、どこか寂しげでもある。

 

「どうせあの人らはしぶとく生き残りますよ。江上大尉も高橋大尉も、そう簡単に死にゃしません」

 

小川が冷静に言い放った。その声に真里奈がか細く答える。

 

「……また、会えますよね?」

 

「会えるさ!バカ言うな真里奈少尉。僕たちが道を切り開けば、必ずまた会えます!」

 

松原が強い声で言い切る。普段は冷静な彼が感情を込めると、隊の士気が一気に上がる。

 

「よし!俺らは俺らの役目を果たす!絶望がどうした!戦場が地獄なら、その地獄をぶち破るのが俺たちだ!」

 

涼介が怒鳴るように叫んだ。

 

「「了解!!!」」

 

8人の声が重なり、コックピットの通信が震えるほどの熱気が走る。

 

紗栄が涙を拭いながら笑う。

 

「チビ兄、絶対に死なないでよ!あたしだって死なないから!」

 

「任せろ!俺は死なねぇ、死んだら葵にぶっ飛ばされるからな!」

 

「ぷっ……それは確かに」

 

笑いが広がる。絶望の戦場でも、レッドキグナスはまだ折れていなかった。

 

「よし、行くぞ!――俺たちはサマートライアングル大隊、レッドキグナス中隊だ!BETAなんざ蹴散らしてやれ!」

 

再び突撃の時が迫っていた。

 

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