Muv-Luv Alternative:Red Cygnus 血染めの白鳥達   作:NageT

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第百四十五話 地獄の中の灯火

「よっしゃ! 行くぞテメェら!!

門の向こうからウジャウジャ奴ら湧き出してる! 減らせるだけ減らすぞ!」

 

涼介の怒声が、部隊内通信を震わせた。

視界一面を埋め尽くすのは、地表を這う黒い奔流――門を抜け、規則正しく、それでいて狂気じみた密度で南下するBETAの群れだ。

テレメトリが示す速度は平均時速60キロ。進路の先には、A-02砲撃予定地点。

 

「了解っす! A小隊、前進するぜ!」

雁部の声が弾む。「ナベさん、いつも通り先頭で道作ってくれ!」

 

「おうよ、突っ込み役は任せとけ」

涼介は苦笑しつつ、壱型丙を前傾させる。跳躍ユニットが低く唸り、不知火が地表を蹴った。

 

「ナベ大尉が先頭じゃないと、逆に不安になるよね」

松本が軽口を叩く。だが操縦桿を握る手は微塵も揺れていない。

 

「笑ってる場合じゃないぞ、松本」

松原が即座に被せる。「敵密度、前回より高い。気を抜くと噛み合わない」

 

「わかってるって。だから一緒に行くんでしょ?」

松本はそう言って、松原の機影にぴたりと重なる。

 

補給コンテナでの短時間補給を終え、弾薬と推進剤を満載したレッドキグナス中隊は、門前掃討の任務に再突入していた。

数万の群れを止めることは出来ない。だが、一体でも多く削ることは出来る。

 

「支援砲撃、弾着確認」

葵の淡々とした通信が入る。「帝国艦隊、対レーザー弾へ換装済み。

全力飽和は十分後。現在は飛翔体優先で間引きを行います。注意してください」

 

空の向こうで、無数の光点が弾けた。

対レーザー弾が、光線級の射線を引き裂いていく。

 

「……守られてる感覚がありますね」

真里奈が思わず呟く。

 

「その分、地上は自分たちで何とかするしかないって事だ」

小川が冷静に返す。「真里奈、後方警戒続行。討ち漏らしは任せる」

 

「はい……っ!」

真里奈の声は緊張を含みつつも、確かだった。

 

最初の接触は門の外、約三百メートル。

戦車級、要撃級の塊が画面を埋め尽くす。

 

「松原、右! 俺が左を潰す!」

涼介の指示は短い。

 

「了解!」

 

松原が即応し、松本と視線も交わさず連携に入る。

二機の動きは噛み合い、斬撃と射撃が“連撃”のように重なる。

 

「後方、要撃級二体! 側面から来る!」

雁部が叫ぶ。

 

「引きつけろ! 俺が撃つ!」

涼介が低空跳躍。36mmの集中掃射が要撃級の頭部を砕く。

 

「ナイスだチビ兄!」

紗栄の声と同時に、支援突撃砲の一撃が戦車級の列を貫いた。

 

「A小隊、突撃路クリア!」

紗栄が続ける。「次、右側面!」

 

「C小隊、砲撃続行だ!」

富田が吠える。「120mm、間隔詰めるっけ!」

 

「了解だよ!」

大友が応じ、B小隊とC小隊の間を縫うように移動する。

「真里奈、そっち二時方向、詰まりすぎ!」

 

「ありがとうございます!」

真里奈は即座に進路を修正し、戦車級の群れを36mmで削る。

 

その時だった。

 

「……え、これ……」

 

小川の声が低く沈んだ。

データリンクの一角に、A-02直援部隊の戦況が拡大表示される。

 

「要塞級……二十以上?」

松原が息を呑む。

 

「囲まれてる……」

松本が言葉を失う。

 

画面の中、A-01部隊は完全包囲。

だが――

 

「……減ってる?」

紗栄が呟いた。

 

要塞級の反応が、一つ、また一つと消えていく。

 

「単騎……?」

真里奈が目を見開く。

 

「一機で……要塞級を、叩いてる……?」

大友が信じられないという声を出す。

 

データリンク上で、二十三体の要塞級反応が表示され、

次々と消失していく。

 

「バッカヤベー……冗談だろ」

雁部が乾いた笑いを漏らす。「人間の戦い方じゃねぇバッカヤベーよ」

 

「でも……生きてます」

小川が静かに言う。「全機健在……A-01、全機」

 

涼介は、ただ画面を見つめていた。

 

「……あれが、国連の切り札か」

 

「反則にも程があるっけ……」

富田が呟く。

 

「でもさ」

松本がぽつりと言う。「あれだけ暴れても、全部は止められない」

 

その通りだった。

A-01部隊が要塞級を削っても、BETAの流れ自体は止まらない。

 

「だから、俺らが削る」

涼介が言った。

 

「役割が違うだけだ。向こうは“抜く役”、俺らは“減らす役”」

 

「……了解」

小川が応じる。

 

葵の声が再び入る。

 

「A-02、砲撃開始地点へ移動中。

直援部隊の迎撃で敵集結速度は低下しています。

レッドキグナス中隊、掃討を継続してください」

 

「聞いたな、全員!」

涼介が叫ぶ。「まだ終わりじゃねぇ!」

 

「A小隊、いつでも前へ!」

雁部、松原、松本が声を揃える。

 

「B小隊、後方と討ち漏らし継続!」

小川の指示に、真里奈が力強く応える。

 

「C小隊、火線止めるな!」

富田の怒号に、紗栄と大友が続く。

 

門の向こうから、まだBETAは湧く。

だが、彼らは削り続ける。

 

遠く、データリンクの向こうで、

A-02のマーカーは静かに砲撃位置へ向かっている。

 

その一撃を信じて。

 

「行くぞ、キグナス!」

涼介の声が戦場に轟く。

 

「まだ、俺らの仕事は終わってねぇ!」

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