Muv-Luv Alternative:Red Cygnus 血染めの白鳥達 作:NageT
レッドキグナス中隊において、非公式ながら特別な結束を持つ集団が存在する。それが通称「喫煙組」、あるいは「喫煙所組」と呼ばれる隊員たちである。
彼らは正式な編制や役職によって集められたわけではなく、ただ“煙草を吸う”という一点を共通項として、自然発生的に集まった集団であった。しかし、その存在は単なる嗜好の一致にとどまらず、中隊内の人間関係や空気感に大きな影響を与えている。
喫煙組の主な構成員は、鍋島涼介、保科隼人、富田宏明、小川陸、雁部雅史の5名である。年齢、経歴、性格はそれぞれ大きく異なるが、喫煙所という限られた空間に集まることで、上下関係や立場を一時的に忘れた“素のやり取り”が生まれている。
そこでは階級章も肩書きも関係なく、ただの一人の人間として言葉を交わすことが許されていた。
喫煙所は、彼らにとって情報交換の場であると同時に、精神的な避難場所でもある。戦場に出る前の緊張、任務後の疲労、言葉にしづらい不安や苛立ち――それらを真正面から吐き出すのではなく、煙草をくゆらせながら軽口や冗談に変えて流す。そうした時間が、結果として彼らの精神を保ち、戦場での冷静さを支えていた。
特に突撃気質の涼介にとって、喫煙組の面々は無意識のうちにブレーキ役を果たしており、富田や小川の皮肉混じりの一言、隼人の静かな忠告、雁部の荒っぽい励ましが、彼の行動を現実に引き戻す役割を担っていた。
また、喫煙組の特徴として「誰か一人が欠けると、自然と静かになる」という点が挙げられる。全員が揃っている時は騒がしく、他愛のない話題で盛り上がるが、誰かが不在の時は無理に盛り上げようとしない。その沈黙を共有する空気感こそが、彼らの関係性の深さを物語っている。
無理に言葉を重ねなくても成立する関係は、戦場で背中を預ける信頼へと直結している。
喫煙組は決して中隊の中心的存在として振る舞う集団ではない。むしろ表に出ることは少なく、問題が起きても派手に介入することはない。しかし、いざという時には誰よりも早く動き、互いを守る行動を取る。その姿勢は、レッドキグナス中隊全体の戦闘スタイルにも影響を与えている。
強襲前衛、後衛支援、調整役――それぞれの立場が自然と噛み合うのは、喫煙所で積み重ねられた何気ない会話と信頼の延長線上にある。
また、喫煙組は中隊の雰囲気を決定づける存在でもある。重苦しい空気が続けば冗談を飛ばし、緊張が高まれば軽く笑い合う。彼らがいることで、レッドキグナスは「殺伐としすぎない部隊」であり続けている。
青島葵が管制室から冷静に部隊を支え、保科隼人大尉が指揮官として全体を統率する一方で、喫煙組は“現場の人間臭さ”を担っていると言えるだろう。
喫煙組は公式記録に残ることはない。戦果表にも名前は並ばず、当然表彰の対象になることもない。しかし、彼らが喫煙所で交わした言葉、共有した沈黙、笑い合った時間は、確実にレッドキグナス中隊を形作っている。
煙が消えた後に残るのは、目には見えないが確かな絆――それこそが、喫煙組という集団の本質なのである。
涼介初めての喫煙
小川と涼介
涼介と隼人
喫煙所の風景
喫煙所組の雰囲気