Muv-Luv Alternative:Red Cygnus 血染めの白鳥達   作:NageT

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第十五話 死線の先へ」──初戦

 《前方、光線級 12体。座標 0862-AB、標高差マイナス12》

 

 《敵密度:高。開けた空間に集中展開。光線減衰重金属雲濃度は最大レベル》

 

 機体HUDが、血のように赤い警告色で染まる。

 

 これより先、空は使えない。

 高度を取れば、その瞬間に溶かされる。

 

 光線吶喊──レーザーヤークト。

 

 匍匐飛行で地を這うようにして敵陣へ突入し、BETAの包囲網を突破して光線級を駆逐する、この作戦最大の山場だった。

 

 

 「全機、突撃態勢へ!」

 

 白鳥真凜大尉の声が、緊張で凍りついた中隊の意識を解き放つ。

 

 「A小隊、先陣を切れ! 江上、土岐は左右に展開! 涼介、中央突破ついてこいッ!」

 

 「了解ッ!」

 

 涼介は突撃砲を背部懸架から引き抜く。

 重く、だが心強い火力の象徴──これを撃ち続け、斬り続けて、生き延びなければならない。

 

 

 「……行くぞ、慶」

 

 かつて共に訓練した同期の名前を、呟いた。

 

 涼介のF-4J《激震》が、山林を蹴り飛ばす。

 

 踏破モードに切り替えた脚部アクチュエーターが地面を掘り裂き、匍匐飛行まま地を滑る様に駆け抜ける。

 

 

 《光線級、ロックオン》

 

 警報と同時に、背後で爆音。後方支援のC小隊が囮となり、BETAの視線を引きつける。

 

 「後衛が引き付けてるうちに行けぇぇっ!」

 

 江上の咆哮が聞こえる。

 仲間の命の綱が繋いでくれる“数秒”に、涼介はすべてを賭けた。

 

 

 視界の先に、いた。

 

 突撃級。突撃の気配も見せず、地を這い、地を喰らい、光線級の前衛を固めている。

 

 見れば見るほど“生き物”とは思えないそれに、涼介は喉の奥を焼かれるような恐怖を覚えた。

 

 それでも。

 

 「うぉぉぉぉぉぉッ!!」

 

 突撃砲、発射。

 

 連射される36mmの劣化ウラン弾が突撃級の上顎を砕き、涼介の機体がその間をすり抜けていく。

 

 「土岐ッ、そっち行ったぞ!」

 

 「分かってますよっと!」

 

 斜面から突っ込んできた突撃級を、土岐が長刀で叩き切る。

 その鮮やかな一撃に目を奪われる暇もなく、涼介の足元へもう一体──戦車級が滑り込んでくる。

 

 

 「ッ、邪魔だぁっ!」

 

 咄嗟に短刀を逆手に抜き、斬り下ろす。

 骨を割る手応え。戦車級の上半身が裂け、体液が霧状に飛び散った。

 

 機体の視界が曇る。だが構わず駆ける。

 

 視界の先に、あの忌まわしい“円筒”が見えた──光線級。

 

 

 《光線級、熱源確認》

 

 「来るッ!」

 

 機体を滑らせ、跳躍ユニットを僅かに吹かして左へ跳ぶ。

 

 直後、背後で“空”が弾ける音。

 無数の光線が交差し、後衛の遮蔽物が一つ、溶断された。

 

 「真凜大尉、光線級が絞ってきてます!」

 

 「分かってる。A小隊、中央突破続行!」

 

 白鳥大尉のF-4Jが、突撃砲を左右に撃ち込みながら滑るように前へ。

 

 「江上、左を取れ! 土岐は私に追随!」

 

 「了解ッ、白鳥大尉!」

 

 

 その瞬間だった。

 

 左方の突撃級の群れの背後から、急に大地が盛り上がる。

 

 要撃級──芋虫めいたその巨躯が涼介たちの進路を塞ぐ。

 

 「こいつは……!」

 

 回避不能。涼介の機体が真正面から迎撃態勢を取る。

 視界に走るスローモーションのような、激しい緊張。

 

 だが──

 

 「任せたぞ、突撃前衛ッ!」

 

 砲撃。右斜め後方から、保科の激震が援護射撃。

 

 「兄貴!」

 

 「いいから行け、道は開けてやった!」

 

 「了解ッ! ……ありがとな!」

 

 

 涼介は突撃砲を切り替え、弾倉を交換。再び走る。

 

 彼のF-4Jの前に、光線級が完全に視界に捉えられた。

 

 「A小隊、到達しました! これより殲滅します!」

 

 「全機、突撃体勢維持! 第一射を見てから斬り込め!」

 

 真凜大尉の号令に、涼介は短く返す。

 

 「真凜大尉──俺、絶対にやってやります!」

 

 「なら、死ぬな。死なないことが、ここじゃ一番価値がある」

 

 その声が終わると同時に、視界が閃光で満ちた。

 

 

 地を這い、血を浴び、地獄のような戦場で──鍋島涼介の初陣は、いよいよ本格的に始まる。

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