Muv-Luv Alternative:Red Cygnus 血染めの白鳥達 作:NageT
――保科隼人が率いた、「止めるための部隊」
レッドキグナス中隊におけるB小隊とは、単なる第二小隊ではない。
それは戦場における“理性”そのものであり、部隊が暴走しないために存在した、極めて特殊な小隊だった。
A小隊が敵陣に突き刺さる刃であるならば、B小隊はその刃を握る手であり、力の入れ方を誤らせないための重りだった。
勝つために前へ出るのではない。
生き残るために、前に出過ぎない。
それが、保科隼人が率いたB小隊の根幹思想である。
保科隼人は、レッドキグナス中隊長でありながら、最前線の現実を誰よりも理解していた指揮官だった。
英雄譚を嫌い、無謀な突撃を否定し、勝てない戦いからは迷わず引く。
彼にとって重要なのは戦果ではなく、「次の戦いに立てる人間が何人残るか」という一点だった。
その思想は、B小隊の編成と運用に如実に表れている。
B小隊に集められたのは、突出した天才や英雄候補ではない。
滝本翼のような実戦派、岸本悠真のような安定感のあるベテラン、有村蓮のような冷静な迎撃後衛――
いずれも派手さはないが、**「壊れにくい人間」**ばかりだった。
滝本は前に出る役だったが、無謀ではなかった。
岸本は兄貴分だったが、感情で動くことはなかった。
有村は融通が利かないほど規律を重んじ、その代わり判断を誤らなかった。
そして、その全員を束ねていたのが保科隼人である。
保科の指揮は、常に一歩遅い。
それは判断が遅いのではなく、「全員が見える位置に立つ」ための意図的な遅さだった。
前線が崩れかけた時、誰が戻れず、誰が動けるかを正確に把握し、その上で最小限の犠牲で戦線を立て直す。
B小隊が“地味”と言われた理由はここにある。
彼らは勝利の瞬間に映らない。
だが、撤退の場面では必ずいる。
誰かが取り残されそうな時、最後に名前を呼ぶのは、いつもB小隊だった。
この小隊が存在したからこそ、レッドキグナス中隊は若く、荒く、危うい編成でありながらも、致命的な崩壊を何度も回避できていた。
特に突撃気質の涼介にとって、保科とB小隊は明確な歯止めだった。
しかし同時に、B小隊は保科隼人という一人の人間に依存しすぎた部隊でもあった。
滝本と有村を失っても、B小隊がすぐに瓦解しなかったのは、保科がいたからだ。
岸本と小川が不安定な状態でも、保科が指揮を執っている限り、B小隊は「戻る場所」として機能し続けた。
だからこそ、12.5事件で保科隼人がクーデター側に回った瞬間、B小隊は完全に役割を失う。
それは裏切りという言葉で片付けられるものではない。
止める者が、止めることをやめた瞬間だった。
保科は、帝国の在り方に疑問を持ち、前線で消費され続ける命に耐えきれなくなった末に、あの選択をした。
それが正しかったかどうかは、最後まで誰にも分からない。
だが一つだけ確かなのは、
保科隼人がB小隊を率いていた頃、レッドキグナス中隊には「引き返せる余地」が存在していたという事実だ。
B小隊とは、勝つための部隊ではない。
英雄を生む部隊でもない。
生きて帰るために存在した部隊である。
その思想を体現していた保科隼人を失った時、
B小隊は形だけの小隊となり、
レッドキグナス中隊は、もはや止まれない部隊になった。
――それが、保科隼人が率いたB小隊という存在の、本質だった。
B小隊vol 1
B小隊vol1強化装備
B小隊vol2
B小隊vol2強化装備