Muv-Luv Alternative:Red Cygnus 血染めの白鳥達 作:NageT
――富田という男が背負い続けた、戦線の重し
レッドキグナス中隊におけるC小隊は、最前線での突破や遊撃戦を主任務とする部隊ではない。
敵陣を切り裂くA小隊、戦線を駆け回るB小隊とは対照的に、C小隊はその両者が戦い続ける為の戦線を維持し、崩壊を防ぎ、後方から支え続ける制圧支援部隊である。
派手な武勲が語られる事は少ない。
しかし、C小隊が崩れた時――
それはそのまま中隊全体の崩壊を意味していた。
このC小隊を率いたのが、富田である。
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富田の戦い方は、涼介のように背中で引っ張るものではない。
保科のように冷徹な統率でまとめるものでもない。
彼の役割はもっと重く、もっと地味だった。
「前にいる連中を、最後まで戦わせ続ける事」
それが富田の小隊長としての矜持である。
どこに射線を通すか。
どこで撃ち、どこで撃たないか。
どこに退路を作り、どこを見捨てるか。
C小隊は常に一歩引いた位置に立つ。
だがその視界は、中隊全体を覆っている。
富田は、自分が目立つ事を一切求めなかった。
前にいる者が暴れられるなら、それでいい。
その代わり、自分は最後まで戦線を崩さない。
それが彼の戦い方だった。
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その富田の構想を、物理的に支えたのが前園浩輔である。
打撃支援《ラッシュガード》。
敵群への体当たり、機体盾運用、火線維持。
富田が戦線を設計するなら、
前園はそれを肉体で成立させる存在だった。
多くを語らず、命令にも余計な言葉を返さない。
ただ頷き、必要な場所へ出る。
危険域へ踏み込み、
味方を庇い、
突破口を守り続ける。
甲21号作戦においてुद्ध
要塞級の攻撃から涼介を庇い、
自機のみが酸を浴びる形で戦死。
最後まで一言も発さず、
ただハンドサインで『行け』と示した。
それは前園という男の、最もらしい任務完遂だった。
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大友美香は、C小隊におけるもう一つの支柱だった。
制圧支援《ブラストガード》。
だが彼女の本質は火力ではない。
誰が疲れているか。
誰が焦っているか。
どこに穴が空くか。
それを察知し、自然に埋める。
戦場でも、日常でも、
大友は常に“部隊を繋ぐ側”に立っていた。
甲21号作戦ではB小隊損耗後、
小川と真里奈を支援する為、
C小隊の枠を越えて戦線維持に奔走。
富田が戦術面の支柱なら、
大友は精神面の支柱だった。
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そしてC小隊において最も未完成で、
同時に最も未来を背負っていたのが紗栄である。
前衛適性を持ちながら、
あえて支援小隊に置かれた理由は一つ。
戦場を俯瞰する目を育てる為。
富田の判断、
前園の支え方、
大友の繋ぎ方。
それらを間近で見続けた紗栄は、
単なる衛士ではなく、
「部隊を成立させる側」の思考を学んでいく。
C小隊は、彼女にとっての戦場教育の場でもあった。
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A小隊が突破を生み、
B小隊が戦線を動かす。
その背後でC小隊は、
常に戦場を成立させ続けた。
特に小川体制となったB小隊との連携は強く、
局地強襲の後方火力基盤として運用される場面が多い。
保科体制期の「機動支援」から、
小川体制期の「強襲支援」へ――
C小隊もまた、戦場に合わせて姿を変えていた。
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小ネタとして、C小隊は中隊内でこう言われている。
「帰還率が一番高い代わりに、疲労が一番深い」
前に出ない。
だが最後まで立っている。
それが彼らの戦い方だった。
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C小隊は英雄を生む部隊ではない。
だが英雄を生かす部隊だった。
最前線に名を残す者の背後には、
必ず戦線を支え続けた者達がいる。
富田、前園、大友、紗栄。
誰よりも前に出る事はなく、
それでも最後まで戦場を支え続けた小隊。
富田という男が背負い続けた戦線の重し――
それが、レッドキグナス中隊C小隊なのである。
C小隊
レッドキグナスの盾