Muv-Luv Alternative:Red Cygnus 血染めの白鳥達   作:NageT

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第十八話 地獄への再出撃

帝国陸軍・長岡基地より前線へ送られた「サマートライアングル大隊」は、数にしてわずか三個中隊にすぎなかった。だが、その中でも――レッドキグナスは、最も深く突き刺さっていた。敵陣のど真ん中に、だ。

 

「再補給、完了。跳躍ユニット、加圧OK。推進剤圧、正常値!」

 

青島葵の声が通信に乗って届く。コマンドポストからの指示は簡潔かつ冷静だった。……いつも通りのトーンが、今は逆に不安を煽る。青島中尉はまだ、俺をただの衛士の一人としか見ていない。その距離が、少しだけ救いでもあった。

 

涼介はシートに深く腰を下ろし、深く息を吐いた。背後では補給班が跳躍ユニットの最終チェックを終え、兵装のマウントを済ませて退避していく。全てが、音もなく静かに――まるで、死に向かう儀式のようだった。

 

「……ホンマにまた行くんかいな」

 

短く呟いたのは江上だ。レッドキグナスA小隊、強襲前衛。突撃砲と長刀を持ち替えながら、彼は無意識に震えていた。

 

「選べねぇだろ。あの数、他の部隊だけじゃどうにもなんねぇ」

 

白鳥真凜――いや、“白鳥大尉”が吐き捨てた。ヘッドセット越しでも分かる、男勝りな口調と静かな怒り。

 

「俺らがやらなきゃ、誰がやる。いま退けば、次は誰が死ぬかわかったもんじゃねぇ」

 

その声に、誰も反論はできなかった。A小隊の土岐が死んだのは、ついさっきのことだ。BETAの波に飲まれ、要撃級に潰された。生き残った俺たちには、もはや“止まる”という選択肢はない。

 

「……イエローライラ中隊は、まだ戦域南側の拠点制圧支援中だ」

 

通信に割り込んだのはB小隊の白田だった。声が硬い。涼介の中で、嫌な予感が募る。

 

「今、イエローライラのC小隊が全滅したって……他の中隊からも支援回してるが、持つかどうか……」

 

沈黙が落ちた。誰もが、言葉を失った。

 

「……マジかよ」

 

C小隊の芹澤が低く呟く。戦場の現実が、着実に牙を剥いていた。

 

「だが、まだ終わっちゃいねぇ」

 

白鳥大尉が言った。静かに、だが力強く。

 

「“光線吶喊”は成功した。あとは、どれだけ多くの奴を引きつけて、ぶっ殺して、主力部隊が動ける時間を稼げるかだ」

 

沈黙が、また落ちる。

 

「敵影接近、接敵まで10分。突撃級500、要撃級・戦車級は測定不能。――再出撃、許可します」

 

青島の声が冷たく響いた。その瞬間、涼介は喉が乾くのを感じた。

 

「ああ、クソが……!」

 

誰かが呻いた。だがもう、心の準備など必要なかった。死は、もう何度も目の前を掠めていった。

 

「全機、出るぞ」

 

白鳥大尉が言った。

 

「後ろで死ぬくらいなら、前で暴れて死ね。いいな!」

 

「了解!」

 

「行こうぜ、真凜大尉!」

 

他の衛士たちが「白鳥大尉!」と返す中で、涼介だけが名を呼ぶ。それを聞いて真凜は、わずかに笑った気がした。

 

「鍋島、出遅れんなよ。遅れたらBETAより先にブチ殺すからな!」

 

「真凜大尉こそ!」

 

跳躍ユニットに推進剤が流れ、戦術機が一斉に浮かび上がる。夜明け前の空を切り裂き、再び、地獄へと飛び込んでいく。

 

涼介は息を整え、つぶやく。

 

「俺は……まだ、死なねぇ」

 

次の瞬間、突撃級の群れが、地平線の向こうから一斉に迫ってきた。

 

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