Muv-Luv Alternative:Red Cygnus 血染めの白鳥達 作:NageT
――京都陥落から1ヶ月後、長岡基地にて。
基地に帰還後療養を終え、傷は癒えても死の雨が止んだわけではない。だが、ほんのわずか、空が広がって見えるような気がしたのは、あの戦いで失ったものがあまりに大きかったからかもしれなかった。
白鳥真凜大尉が戦死して、レッドキグナスは“生き残った”だけの部隊になった。
長岡基地に帰還してからの数日は、記憶が霞んでいる。気がつけば、涼介は何故か中尉への昇進を告げられ、A小隊の隊長を任されていた。
かつて真凜大尉がいた位置。ストームバンガード1の座。
あまりに重すぎるポジションだったが、涼介には拒否する理由も権利もなかった。
「お前しかいないんだよ、涼介」と、兄貴――いや、今は保科大尉はそう言った。
あの戦いの中、白鳥真凜大尉の最後の言葉を共有した者として、今や彼が中隊長だった。白鳥真凜の遺志を継ぐ男に、涼介は心の奥底で従うと決めていた。
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再編は容赦なかった。
B小隊はそのまま保科大尉の直轄となり、滝本 翼少尉に加え新たに岸本 悠真少尉、有村 蓮少尉の2名が配属された。
岸本と滝本は、前衛で踏みとどまる力を持ったガンスイーパー。無骨な突進力の塊だ。
有村は元帝国海軍出身で、冷静沈着すぎて最初は浮いていたが、保科との連携で力を発揮し始めていた。
そしてC小隊――京都からの生還者、富田 宏明中尉が隊長として加わった。静岡の焼津出身。涼介とは訓練校が違えど同期で、初対面から妙にウマが合った。
「……鍋島、戦場では死なねえって決めようっけね!一緒に生き残るだよ!」
笑いながら泣くような男だったが、ブラストガードとしての腕は本物だ。
富田の下に配されたのは、前園 浩輔少尉、西脇 美月少尉、花村 彰吾少尉の3名。
いずれも重装火力、または陣地戦に優れた後衛だ。花村の関西弁と西脇の真面目すぎる性格がぶつかりつつ、前園が冷静に中和している。
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そして――涼介のA小隊。新たな部下は3人。
**松原 充少尉。**新兵。まだあどけなさが残る顔で、敬語もぎこちない。だが、吸収力と素直さがあった。
「中尉の背中を守れる様に必死で食らいついていきます!」
その言葉に、涼介は初めて“部下を守る”という感情が芽生えた気がした。
**松本 歩夢少尉。**天性のストームバンガード。天才だが天然でもある。戦術を忘れ、突っ込む。敵の数を数えず、「なんかイケそう」と言って斬りかかる。
問題児だが、バディとして彼女以上に息が合う者はいなかった。
保科のことを「ホカ大尉」と呼んで平然としているのが玉にキズだが。
**高梨 志織少尉。**前線でも冷静さを失わないストライクバンガード。計算された動きと判断で、涼介や歩夢の無鉄砲さを抑え込む。
性格は厳しく近寄りがたいが、誰よりも仲間想いで、戦場では信頼できる存在だった。
ちなみに元A小隊所属していた江上哲也少尉は中尉に昇進し、レッドキグナス中隊が所属するサマートライアングル大隊のブルーイーグルス中隊へ転属となり小隊長に任命された。
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「……生き残った者が、次を守らなきゃ意味がねぇ。俺は、そう教わった」
保科大尉が中隊全体を前にそう言った時、誰もがうなずいた。
白鳥真凜大尉の幻影は、今も中隊の誰かの後ろに立っているようだった。
だが、それを追いかけることが任務ではない。生きて、前へ進むことが――今の使命だ。
再編されたレッドキグナス中隊。A・B・Cの3小隊、各4名。
前衛・中衛・後衛のバランスはかつてよりも洗練されていた。だが、BETAは待ってくれない。
すでに次の出撃命令は出ていた。
「――次は、絶対に、誰も死なせねぇ」
涼介は、新調された新しい愛機にに手を添えた。
白鳥真凜の魂はもうここにはいない。だが、受け継いだこの場所で、彼女が守った仲間を守る。それが、今の彼の全てだった。