Muv-Luv Alternative:Red Cygnus 血染めの白鳥達 作:NageT
――長岡基地、補給区画第5ハンガー。
京都戦で激震を駆り続けたレッドキグナス中隊の機体は、どれも満身創痍だった。
表面装甲の半分以上が削れ、熱疲労でジャイロが焼け付き、跳躍ユニットは推進剤タンクごと爆発した跡が残っている。修復というより“廃棄前提の保管”に近い姿だった。
整備兵の1人が、機体の側でポツリと呟いた。
「……ここまで使い倒した激震も珍しいな」
その声を聞いた富田は、煙草の火を指で弾いて消すと苦笑いする。
「……そりゃ、あんだけ死ぬ思いして戦ったら、鉄の骨も泣くだろ」
誰も笑わなかった。
あの地獄を潜り抜けてここまで来た者にしかわからない重みが、機体にまで染みついていた。
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数日後、司令部から中隊へ一報が入った。
「レッドキグナス中隊、機体の全面更新を実施する。
次期配備機は――94式戦術機“不知火”とする」
――不知火。
その名前が基地内に流れた瞬間、各分隊の空気が変わった。
「まさか」「俺たちが?」「不知火ってあの?」――驚きとともに、少しだけ誇りに似た感情が浮かんだ。
「……名指しで来たんだ。あの戦いを生き延びたキグナスに、だ」
保科大尉が低く言い切ると、誰もが頷いた。
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そして、初めて不知火を目にしたその日。
機体は白銀に近い輝きを放つ新型フレーム。視覚センサー部には、F-15系統に似た凛々しいラインが走っていた。
激震よりも一回り大きく、それでいてしなやかなシルエット。
涼介は無言で機体の足元に立ち、拳を握りしめた。
「……真凜大尉なら、何て言うだろうな」
「“なに、やっと本気出せるじゃねぇか”……とか言いそうじゃないッスか?」
松原が笑って言い、歩夢は「ホカ大尉もきっと喜ぶと思いますよ」と訳のわからない方向で返す。
保科はそれに頭を抱えながらも、少しだけ口元を緩めていた。
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不知火は前線用のバンガード仕様に改修されており、各分隊のポジションごとの調整も完了していた。
• A分隊はストーム/ストライク特化の白兵型チューン。
• B分隊はインターセプター・スイーパー仕様。索敵・迎撃を重視したカスタム。
• C分隊はラッシュ・ブラスト・インパクト系を中心とした火力支援型に。
整備兵から「お前らが次の中隊を引っ張るんだぞ」と言われ、涼介たちは無言で敬礼を返すしかなかった。
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不知火への換装は、単なる機体更新ではなかった。
それは、**「希望への接続」**であり、
――そして、死んでいった仲間たちの遺志を継ぐ“次の戦場”への準備だった。
かつてボロボロの激震で戦場に立ち続けた彼らは、今や帝国軍の「生きた戦訓」となっていた。
そして、不知火と共に再び最前線へと戻る。
「行くぞ――不知火、レッドキグナス。今度こそ、誰も死なせない」
涼介のその言葉に、誰もが頷いた。