Muv-Luv Alternative:Red Cygnus 血染めの白鳥達   作:NageT

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第二十六話 忍び寄る悪夢

長岡基地の司令部に激しい緊張が走った。

 

「緊急報告!BETAが佐渡ヶ島に侵攻を開始したとの情報が入りました!」

 

一斉に室内がざわつく中、涼介はその言葉を聞いた瞬間、体が硬直した。

「佐渡……?」

 

頭の中に故郷の風景、そして離れて暮らす妹・紗栄の笑顔が鮮明に浮かぶ。

「佐渡に、BETAが……?」 焦りと混乱で涙が熱くこみ上げた。

 

すぐさま出撃準備に動く仲間たちを尻目に、涼介は慌てて駆け出し司令部の扉へ向かって走り出した。

「出撃命令を出しやがれ!今すぐ俺たちを佐渡に行かせろ!」

 

しかし、重い足取りで保科がその腕を掴んだ。

「待て、涼介。今は状況を見極める時だ。焦るな」

 

「焦るなだと?俺らの家族がいる島だぞ!佐渡だぞ!BETAが来たんだ!今行かなきゃ助けられねぇだろうが!なんの為に衛士になったんだよ俺らは!」

涼介は振りほどこうとしたが、保科の強い握りに止められた。

 

「俺もお前と同じ気持ちだ。紗栄のことも、親父とお袋のことも……だが、今無理に出て何の準備もなしに突っ込めば、ただ死ぬだけだ」

 

涼介は拳を壁に叩きつけ、苛立ちを爆発させた。

「クソがぁ!、なんで今なんだ……こんな時に、いつもいつも……俺は守れねえ!」

 

司令官は冷静に諭す。

「我々も鍋島中尉と気持ちは同じだ、それに佐渡は重要拠点だ。だが今は防衛線の再構築と準備に時間が必要だ。命令なしで出撃は認められん」

 

涼介は怒りのあまり、司令部の壁を拳で殴りつけそうになったが、保科がまた制止した。

「俺たちはまだここで戦い続ける。必ず佐渡に帰るんだろ?」

 

涼介は舌打ちした後、深く息を吐き、声を震わせながら言った。

「分かってるよ……だが待ってなんていらんねぇ。俺は紗栄を家族を島のみんなを守りたい。兄貴もそうだろ?」

 

保科は涼介の肩を叩き、言った。

「そうだ。だからこそ、俺たちは今ここでできる事をやっておくんだ!いつでも出れる様に!」

 

涼介の瞳に決意が灯った。

「俺は行くぜ絶対に……絶対に佐渡をBETAどもの好きにさせねぇ!」

 

パンっと顔手で打ち気合いを入れ、すぐさま強化装備に着替えハンガーに向かう涼介、鬼気迫る様子で不知火のシートに座り機体の調整を始める彼に声をかけられる者は1人もいなかった。

 

刻一刻と過ぎていく時間に中隊全員が息を呑む。

 

無情にも時間だけが過ぎていき、もういつでも出撃可能となっても司令部からの出撃命令は降りない。

 

 

基地のモニターに映る佐渡の島影が、二人の胸に重くのしかかった。

 

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