Muv-Luv Alternative:Red Cygnus 血染めの白鳥達 作:NageT
長岡基地――午後18時34分。
オペレーターが叫んだ。
「佐渡防衛線、崩壊!全通信断絶!……佐渡、陥落しました!!」
その瞬間、指揮所の空気が凍った。
誰もが言葉を失い、ただ呆然とモニターに表示された“LINK LOST”の赤い文字を見つめていた。
「――っざけんな……っ!」
涼介の怒声が基地に響き渡った。
彼は待機していた不知火から降り駆け出し、指揮室のドアを乱暴に開けて飛び込んでくると、モニターを睨みつけ、奥歯を噛みしめる。
「どういうことだよ!?なんでだ、なんでこんな……ッ!!」
涼介の拳が壁に叩きつけられ、鈍い音が室内に響いた。
「佐渡は……俺たちの故郷だぞ……っ。妹が……紗栄が……向こうにいるんだ……っ!!」
目を血走らせながら、涼介は基地司令に詰め寄ろうとする。
「今からでも向かわせろ!!不知火で飛ばせ!間に合うかもしれねぇんだぞ!!」
「中尉、落ち着け!」
憲兵が制止に入ろうとしたその時、保科が静かに、だが有無を言わせぬ声で言った。
「やめろ、涼介。」
「離せよ!!兄貴ァ!!」
振り払おうとする涼介の肩を、保科は力強く掴んだ。
「気持ちは分かる。……俺だって、飛び出したい気持ちは山ほどある。今すぐ不知火で、佐渡に行って全部ぶっ壊したい……」
保科の声が震えていた。
「でも、俺たちは“中隊”なんだよ。俺たちが勝手に動いたら、それこそ部隊が潰れる。生き残った隊員たちが路頭に迷うんだ。」
「それでも……っ!紗栄が、まだ向こうにいるかもしれねぇんだぞ……!っくそぉ……!」
涼介は膝をつき、両手で頭を抱えた。
「守るって……誓ったんだよ……!俺が、あいつの兄貴として……!真凜大尉みたいに、命かけてでも……っ」
保科は黙ってその背に手を置く。
「……俺の親父もお袋も、佐渡だ。多分、もう……」
涼介が顔を上げた。
保科の表情は、いつになく険しかった。
「それでも俺たちは、ここで踏みとどまるしかない。今、行けば死ぬだけだ。……奪われたもんは返ってこないなら、生き延びて、みんなの分まで生きて俺らと同じ思いするやつ1人でも減らしてやろうぜ!」
涼介の目に、堪えきれない涙があふれた。
「くそっ……なんで、なんで……俺たちばっか、こんな思いしなきゃなんねぇんだよ……!」
保科も拳を握りしめ、唇を噛んだ。
「……俺たちは衛士だ。……いつか必ず、佐渡を奪い返す。その時まで、生きろ。歯を食いしばってでも、生きろ」
涼介は震えながら立ち上がった。
その目には怒りと絶望、そして――決意の光が宿っていた。
「――ああ。俺は……絶対に、佐渡に帰る。BETAなんざ、全員ぶっ殺してでも……な」
誰もが沈黙する中、涼介と保科の決意だけが静かに、しかし鋭くその場を貫いていた。