Muv-Luv Alternative:Red Cygnus 血染めの白鳥達 作:NageT
作戦コード【黄昏撃ち】
出撃時刻:19:20/天候:曇/気温3℃
目的:AO06区画におけるBETA補給群の殲滅・前進阻止
制限時間:120分
――夜の帳が降りる多摩川左岸、防衛ラインのさらに前方。
廃墟と瓦礫、焼け焦げたコンクリートの谷を、12機の不知火が静かに駆け抜ける。
「レッドキグナス、全機通過。索敵開始。任務を開始する」
通信に保科の声が落ちると、全機が自動的に動き出す。
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◉作戦前、小休止のブリーフィング
「どうせまた“間引け”ってやつだろ、これ」
涼介は背を壁に預け、煙草を唇にくわえる。だが火は点けない。
「間引くって言い方、嫌いなんだよな……。生かすも殺すも、BETA相手じゃ“仕事”じゃねえ」
「……“生かせない”って前提で話すしかない戦場ってのも、嫌なもんだな」
有村が言うと、松原が小さくこくりと頷く。
「でも……僕たちは、まだやれます。今の機体、不知火なら……怖いけど、それ以上に“動ける”」
「そうだな」
保科は冷静に目を伏せ、声を低くした。
「俺たちは、“間引き作戦”の中核だ。正面から叩いて、敵の前衛と後衛を分断する。
A小隊は左翼から突入、B小隊はそこに火線を重ねる。C小隊は後衛で全体支援と第二波の抑え。――全員、帰ってこい。誰一人欠けるな」
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◉戦闘開始(AO06区画)
「接触まで30秒。BETA、前方に密集。突撃級40以上、要撃級混在、補給個体あり」
志織が淡々と報告しながら、既にスコープを覗いていた。
「松本、俺の後ろ。高梨、松原、横展開で斜めに入れ!」
「うんっ、りょーかい隊長っ!」
「行くぞ、俺たちが先陣切る」
A小隊が先頭を切ってBETAの群れへ突入。
地面を滑るように走り抜け、長刀を閃かせながら突撃級を両断していく。
歩夢は一瞬、突撃級の巨体に飲まれそうになるが、すんでのところで涼介が機体ごと突き飛ばす。
「バカ、後ろって言ったろ!」
「へへ……つい、動いちゃいましたぁ」
「まったく、お前は……!」
高梨と松原は連携し、交差するように長刀でBETAの脚を切断、転倒したところを確実にトドメを刺す。
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◉B小隊・中衛火力支援
「滝本、岸本、中央の遮蔽越しに交差射撃! 有村、左から回って長距離照準!」
「よっしゃぁ、まとめて灰にしてやんぜぇ!」
「了解、任せろッ!」
保科の不知火が先陣を張り、正確に光線級の頭部を破壊。
その一発で、BETA群の動きに隙が生まれる。
「岸本、右にもう一体いる!」
「……見えてる!」
滝本と岸本が左右から挟むように射撃、数秒で7体を撃破。
有村の支援砲撃が残った突撃級の集団を粉砕する。
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◉C小隊・後衛制圧と第二波警戒
「前園、花村、西脇! 道塞げ!」
「了解ッ、行くよっ!」
西脇が遮蔽用の瓦礫を撃ち崩して通路を封鎖。
美月は左右の隙間を爆風で埋め、前園がそこから飛び出すように突撃。
「花村、そっち任せた!」
「任されとけぃッ!」
インパクトガードの突撃砲で、集団を一気に吹き飛ばし、砲撃のタイミングを合わせるように後衛が焼き払う。
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◉作戦終了――帰還後の夜
静かな夜。市街地の廃屋の一角。
12機は任務を終え、それぞれの機体に身を寄せている。
「……やっぱ、誰も欠けねぇってのが一番いいな」
涼介がそう呟き、火を点けない煙草を口にくわえる。
「火、点けねぇの?」
と保科が聞く。
「今点けたら、吸いすぎて死にそうだからな」
と涼介は笑った。
「でも、兄貴……この作戦、いつまで続くんだろな。間引いても間引いても、奴らは減らねえ」
「……だが、それでもやる。やらなきゃ、“向こう側”に行けねぇからな。……生きてる限り、俺は諦めねえ」
涼介の言葉に、分隊員たちも黙って聞き入る。
歩夢がぽつりと、「じゃあ、絶対に、誰も死なせちゃダメですね」と言った。
涼介はそれに「当たり前だ」と返す。
そしてその目は、再び夜の闇の向こうにいる“敵”を睨んでいた。
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これが、間引き作戦でのレッドキグナス中隊の戦いの一幕。
不知火を得た彼らの戦いは、ここからますます苛烈になる。