Muv-Luv Alternative:Red Cygnus 血染めの白鳥達   作:NageT

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第三十二話 望まぬ継承

瓦礫の煙が薄れることはなく、燃え尽きた街の骨組みが不知火のセンサーを照らしていた。

都市突入からすでに6時間。レッドキグナス中隊は、先行部隊の壊滅を受け、第三区の防衛線を単独で支えることを強いられていた。

 

「B小隊、展開完了! 滝本、岸本、後方からの回り込み警戒、やれるな?」

 

「やれるともよ! これくらいでバテてたら、白鳥大尉にしばかれるわ!」

 

「こっちも準備OKだ、有村。弾倉は3スロット目だぞ。連携しろよ」

 

B小隊の布陣は完璧だった。戦車級の流入ルートを予測し、三方向から交互に迎撃する迎撃陣形。

保科大尉の指示の下、不知火たちは火線を繋ぎながら、確実に前進していく。

 

「こちら、滝本。6時方向、戦車級多数、地下道から出てくるぞッ!」

 

「誘導優先! 滝本、正面に立つな、流して斜線に引き込め!」

 

「……悪ィ、ちょい突っ込み過ぎた。岸本、俺の右フォロー頼む!」

 

「了解ッ!」

 

だがその瞬間、地下道の崩落に伴い、滝本の機体がバランスを崩した。

 

一瞬、僅かな隙。それを逃すBETAではない。

 

「滝本、後ろッ!!」

 

保科の叫びと同時に、戦車級の数体が滝本の機体に取りついた。

 

「うああああッ!! チッ……!」

 

短刀で1体、肩を食い破った敵を引き剥がす。しかし、他の個体は脚部、背部、胸部へと喰らいついていく。

 

「クソッ、まだ……まだだ……!」

 

滝本は、あえて倒れずに立ち続けた。機体にしがみつく敵を振り払おうと、脚部を踏み鳴らしながら歩を進める。

 

「俺はまだ、終わんねぇぞ……!」

 

「滝本、引け! 俺がカバーするッ!!」

 

「ダメだ、今抜けたら隊列が崩れる。ここで潰されるくらいなら……!」

 

「やめろッ!!」

 

だが、滝本は叫んだ。

 

「ここは……俺が食い止める!保科大尉、後の部隊、通してくださいッ!!」

 

保科の眼が見開かれた。

彼は理解した。滝本は、撤退のタイミングを完全に捨てていた。

 

「バカ野郎、勝手に――!」

 

滝本は振り返ることなく、戦車級の群れごと最深部へ飛び込んだ。

 

「俺が通す……だから、行けええぇぇッ!!」

 

直後、自決用のS−11が炸裂し、戦車級の大半が道連れにされた。

通信は、……そこで途絶えた。

 

【数時間後/戦闘継続】

 

「くそ……滝本のルートは開いたが、こっちは損害続出だ」

 

「BETAの増援が早すぎます……! 一度戦線を後退すべきでは――」

 

「……接近識別。陽炎、川越基地所属の信号。単機です!」

 

「生き残り……?」

 

焦げた空の向こうから、不恰好な足取りで陽炎が1機、煙を上げながら近づいてきた。

 

「……こちら、帝国陸軍・川越基地所属、小川陸少尉……!我が隊は全滅……合流を願いますッ!」

 

「小川……!?」

 

彼の声は震え、汚れた顔には乾いた血と埃がこびりついていた。

 

「我が隊は全滅……自分一人だけです……!でも、任務は……最後まで、果たします!」

 

「兄貴、あいつ……使えるか?」

 

涼介が保科に問う。

 

「……使うしかない。滝本の抜けた穴を埋めない事にはどうにもならん」

 

保科の声は、少しだけ震えていた。

 

こうして――

小川陸少尉が、レッドキグナス中隊・B小隊の一員として編入される。

 

それは、誰も望んでいなかった“継承”だった。

 

しかし彼らは知っている。戦場で生き残ることが、何よりの意味になることを。

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