Muv-Luv Alternative:Red Cygnus 血染めの白鳥達 作:NageT
戦場は、もはや「都市」ではなかった。
瓦礫、崩落した高架、焦げついた信号機、そして無数の戦車級の残骸――。
レッドキグナス中隊は、陽が昇ってからすでに20時間以上、市街地を掃討し続けていた。
「前園ッ!右側、まだ残ってるぞ、掃討急げ!」
「了解ッ、キグナス10、前に出る!」
不知火が足場の悪い路面を踏み抜きながらも加速、残存の戦車級2体に短刀を突き立てて吹き飛ばす。
そのすぐ脇、涼介の不知火が滑るように移動しながらも敵の死角を突き、突撃砲を放つ。
「クソッ……!いくら潰しても、湧いてくるじゃねぇか……!」
不知火の長刀が、燃え上がる瓦礫の中で閃光を放つ。
だが、BETAの圧力は依然として強く、戦線はわずか数百メートルしか押し上げられていなかった。
⸻
「A小隊、前方の拠点制圧完了。B小隊、損耗軽微。有村機が軽い表面損傷。C小隊、砲撃残弾5割以下」
青島中尉の声が通信に流れる。CPもまた休む間もない。
『鍋島中尉、帝都軍第三機甲中隊、左隣接ラインから後退しました。側面警戒を増強願います』
「ちっ……また押し戻されたのか……」
レッドキグナス中隊のラインは、すでに二つ隣の部隊が撤退した後の空白地帯の一部を補っている。
疲労は限界に近く、誰もが口にはしないが焦りが募っていた。
「兄貴、もう二日近く出ずっぱりじゃねぇか……このままじゃ、どっかで一気に抜かれるぞ……」
「……わかってる。だが、ここで下がったら誰が突入部隊を援護する」
保科の声は低かったが、その瞳はぎらりと研ぎ澄まされていた。
後方に目をやれば、再補給の為に置かれた補給コンテナの列が途切れ途切れに見える。
機体の補修も十分ではなく、装備の耐久値もすでに規定を超えていた。
⸻
そして――。
【22:13】
作戦指揮センターから一報が届いた。
『第一次突入部隊の通信が――途絶しました』
青島の声が、一瞬だけ、震えた。
『各隊へ告知。第一次突入部隊……帝国陸軍第11戦術機中隊、ならびに国連強襲大隊の全戦力との通信が途絶。
状況確認のため、ドローン及び衛星映像により確認中。……おそらく……全滅と推測されます』
静寂が、通信回線を支配した。
「……マジでぇ」
松本歩夢が、思わず呻く。
「大隊丸ごと、かよ……」
「……何人いたんだ……あそこには、百人以上……」
「俺たち、突入支援部隊だぞ? もし……もし突入まで届いてたら、俺らも――」
涼介は黙ったまま、視線を前に向けていた。
誰よりも突入を望んでいたはずの彼が、何も言えずにいたのは、目の前の現実がそれほど重かったからだ。
不知火のコクピットの中、彼の右手は震えていた。
だが、それを握りしめる拳は、かすかに声を発した。
「――俺たちは、まだ、生きてる」
その言葉が、通信に乗る。いや、隊内回線全体に染み込むように伝わっていった。
「小川。聞いてるか」
「はい、中尉」
「……陽炎でも、不知火でも関係ねぇ。突入できなきゃ、意味がねぇ。
この戦場、誰がどんな機体で立ってるかじゃねぇ。
“誰が生きてここを抜けて、戦えるか”だ」
一瞬、沈黙――
「了解です、中尉……俺、死にません」
「ならそれで十分だ。A小隊、次拠点まで200メートル。行くぞ!いいよな兄貴!」
「大尉だ、馬鹿やろう……よしB、C小隊もA小隊に続け!戦線を押し上げる!レッドキグナス中隊行くぞ!」
夜の闇を照らすのは、火花と爆発だけだった。
突入部隊の喪失は、確かに痛手だった。だが――彼らの戦いは終わっていない。
レッドキグナス中隊は、後退しない。
彼らは次の戦場に向かい、再び戦火へとその身を投じていった――。
好きなキャラクターアンケート
-
鍋島涼介
-
鍋島紗栄
-
保科隼人
-
白鳥真凜
-
池田裕平
-
歳刀慶
-
近藤静
-
青島葵
-
江上哲也
-
滝本翼
-
土岐
-
富田宏明
-
松原充
-
松本歩夢
-
高梨詩織
-
小川陸
-
その他