Muv-Luv Alternative:Red Cygnus 血染めの白鳥達   作:NageT

39 / 224
第三十四話 焦燥の戦場

戦場は、もはや「都市」ではなかった。

瓦礫、崩落した高架、焦げついた信号機、そして無数の戦車級の残骸――。

レッドキグナス中隊は、陽が昇ってからすでに20時間以上、市街地を掃討し続けていた。

 

「前園ッ!右側、まだ残ってるぞ、掃討急げ!」

 

「了解ッ、キグナス10、前に出る!」

 

不知火が足場の悪い路面を踏み抜きながらも加速、残存の戦車級2体に短刀を突き立てて吹き飛ばす。

 

そのすぐ脇、涼介の不知火が滑るように移動しながらも敵の死角を突き、突撃砲を放つ。

 

「クソッ……!いくら潰しても、湧いてくるじゃねぇか……!」

 

不知火の長刀が、燃え上がる瓦礫の中で閃光を放つ。

 

だが、BETAの圧力は依然として強く、戦線はわずか数百メートルしか押し上げられていなかった。

 

 

「A小隊、前方の拠点制圧完了。B小隊、損耗軽微。有村機が軽い表面損傷。C小隊、砲撃残弾5割以下」

 

青島中尉の声が通信に流れる。CPもまた休む間もない。

 

『鍋島中尉、帝都軍第三機甲中隊、左隣接ラインから後退しました。側面警戒を増強願います』

 

「ちっ……また押し戻されたのか……」

 

レッドキグナス中隊のラインは、すでに二つ隣の部隊が撤退した後の空白地帯の一部を補っている。

疲労は限界に近く、誰もが口にはしないが焦りが募っていた。

 

「兄貴、もう二日近く出ずっぱりじゃねぇか……このままじゃ、どっかで一気に抜かれるぞ……」

 

「……わかってる。だが、ここで下がったら誰が突入部隊を援護する」

 

保科の声は低かったが、その瞳はぎらりと研ぎ澄まされていた。

 

後方に目をやれば、再補給の為に置かれた補給コンテナの列が途切れ途切れに見える。

機体の補修も十分ではなく、装備の耐久値もすでに規定を超えていた。

 

 

そして――。

 

【22:13】

作戦指揮センターから一報が届いた。

 

『第一次突入部隊の通信が――途絶しました』

 

青島の声が、一瞬だけ、震えた。

 

『各隊へ告知。第一次突入部隊……帝国陸軍第11戦術機中隊、ならびに国連強襲大隊の全戦力との通信が途絶。

状況確認のため、ドローン及び衛星映像により確認中。……おそらく……全滅と推測されます』

 

静寂が、通信回線を支配した。

 

「……マジでぇ」

 

松本歩夢が、思わず呻く。

 

「大隊丸ごと、かよ……」

 

「……何人いたんだ……あそこには、百人以上……」

 

「俺たち、突入支援部隊だぞ? もし……もし突入まで届いてたら、俺らも――」

 

涼介は黙ったまま、視線を前に向けていた。

 

誰よりも突入を望んでいたはずの彼が、何も言えずにいたのは、目の前の現実がそれほど重かったからだ。

 

不知火のコクピットの中、彼の右手は震えていた。

だが、それを握りしめる拳は、かすかに声を発した。

 

「――俺たちは、まだ、生きてる」

 

その言葉が、通信に乗る。いや、隊内回線全体に染み込むように伝わっていった。

 

「小川。聞いてるか」

 

「はい、中尉」

 

「……陽炎でも、不知火でも関係ねぇ。突入できなきゃ、意味がねぇ。

この戦場、誰がどんな機体で立ってるかじゃねぇ。

“誰が生きてここを抜けて、戦えるか”だ」

 

一瞬、沈黙――

 

「了解です、中尉……俺、死にません」

 

「ならそれで十分だ。A小隊、次拠点まで200メートル。行くぞ!いいよな兄貴!」

 

「大尉だ、馬鹿やろう……よしB、C小隊もA小隊に続け!戦線を押し上げる!レッドキグナス中隊行くぞ!」

 

夜の闇を照らすのは、火花と爆発だけだった。

突入部隊の喪失は、確かに痛手だった。だが――彼らの戦いは終わっていない。

 

レッドキグナス中隊は、後退しない。

 

彼らは次の戦場に向かい、再び戦火へとその身を投じていった――。

 

好きなキャラクターアンケート

  • 鍋島涼介
  • 鍋島紗栄
  • 保科隼人
  • 白鳥真凜
  • 池田裕平
  • 歳刀慶
  • 近藤静
  • 青島葵
  • 江上哲也
  • 滝本翼
  • 土岐
  • 富田宏明
  • 松原充
  • 松本歩夢
  • 高梨詩織
  • 小川陸
  • その他
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。