Muv-Luv Alternative:Red Cygnus 血染めの白鳥達   作:NageT

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第四十話 演習迫り来る前線

帝国陸軍・長岡基地。灰色の空の下、戦術機の咆哮が響き渡る。レッドキグナス中隊は、前線派遣に向けた実戦形式の総合演習に臨んでいた。

 

演習場には中隊所属の94式「不知火」が計12機、3小隊に分かれて配置され、想定された敵戦力を模したターゲット群へ連携攻撃を加える。指揮はもちろん、レッドキグナス中隊長・保科隼人大尉。冷静かつ的確な指示で全体をまとめ上げる。

 

「――A小隊、第一ライン突破を確認!C小隊、支援の位置に展開!」

 

コマンドポストにいる青島葵中尉の声が通信回線に響く。彼女の指揮支援があるからこそ、この演習も成立する。

 

「了解!A小隊、突撃継続!行くぞ!松本、ついてこい!」

 

鍋島涼介中尉が熱く叫び、松本歩夢少尉がのんびりとした声で「は〜い」と返す。続いて松原充少尉が「敵影多数、右側制圧に回る」と冷静に報告する。

 

「C小隊、敵の側面に制圧射撃を!紗栄、カバーいけるか!」

 

「了解しました、富田中尉!」

 

鍋島紗栄少尉の声が緊張と冷静さを含み、即座に射撃支援を行う。機体から放たれた制圧砲が標的に炸裂し、瞬時に敵陣に煙幕が張られる。

 

「さっすが鍋島の妹だな!しっかり押さえてくれてっぞ!」

 

富田宏明中尉の焼津訛りの入った声が飛ぶ。

 

「紗栄少尉、右上方に別目標。切り替えお願いします」

 

前園浩輔少尉が落ち着いた声でサポート。寡黙ながら常に的確な仕事をする彼の存在が、C小隊の安定感を支えていた。

 

「全機前進、援護します!柊少尉突撃します!」

 

新たにA小隊に加わった柊直樹少尉が気迫の声で飛び出す。無鉄砲にも見えるが、その突進力は頼もしい。

 

「ちょっと突っ込みすぎだって、柊っち!」

 

松本が笑いながら後ろから援護に回る。

 

「大友少尉、もう少し上げます!一緒に制圧を!」

 

「了解、支援位置を維持して援護に回る!」

 

新任の大友美香少尉も、C小隊での立ち回りを徐々に掴んできたようだ。

 

その頃、演習の全体を見渡す指揮にいる青島て保科が通信でやり取りをしていた。

 

「全体の連携、かなり良くなってきたな。新入りもいい感じだ」

 

「ですね。……特に鍋島紗栄少尉、兄の涼介中尉を前にしても、完全に職務モード。感心します」

 

保科は苦笑しながら、「あいつは嬉しさが顔に出すぎてる」と涼介を見てため息をはきながら言った。

 

──そして、訓練終了。

 

演習後の整備区画、隊員たちは整備兵と共に戦術機のメンテナンスに入る。

 

「ふぃ〜、今回もバッチリだったな。……なあ、青島中尉、今日こそ一緒に飯どう?」

 

涼介がニカッと笑って葵に近づく。葵は苦笑いを浮かべながら、データパッドを持ち上げる。

 

「またですか?……指揮ログまとめが残ってるので、先にそっち済ませます」

 

「じゃ、片付いたら連絡くれよ!」

 

そんなやり取りを見ていた紗栄は、工具を手にしながらその様子に目を細めた。

 

「……全く、チビ兄は相変わらずですね」

 

「ん、何か言ったか、紗栄?」

 

「いえ、鍋島中尉。整備を急いで終わらせておきますので、報告は後ほど」

 

ぴしりとした口調で言われ、涼介はバツの悪そうな顔になる。

 

「お、おう……」

 

それでも、どこか緩んだ笑みを見せる妹の表情に、涼介も安心したのか、背中をポンと叩いて歩き出す。

 

そこに保科が現れ、全員に告げる。

 

「明後日から前線配備に向けた移動が始まる。最後の調整期間、気を引き締めていけよ。レッドキグナスは……ここからが本当の再出発だ」

 

全員の顔に緊張が走り、そして小さな笑みが広がる。

 

かつての仲間たちの想いを受け継ぎ、新たな力を加えたレッドキグナス中隊。

 

その歩みは、再び戦場へと向かっていく――。

 

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