Muv-Luv Alternative:Red Cygnus 血染めの白鳥達   作:NageT

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第四十八話 八雲作戦 戦場のキグナス達

「レッドキグナス中隊」は、一時的な補給地点へと撤退し、補給整備班の迅速な作業によって再出撃の準備を進めていた。満身創痍とは言え、皆まだ戦える。その目には確かな闘志と、先の戦闘で燃え上がった闘争心が宿っていた。

 

「総員、行けるな?」

 

保科隼人大尉の問いかけに、誰一人として異を唱える者はいなかった。特にA小隊の松原充少尉の目には、これまでとは違う強い意志が宿っていた。

 

「僕はもう、大丈夫です。高梨少尉の分まで……僕が前に出ます」

 

涼介が振り返ると、松原はしっかりと彼の目を見据えていた。明星作戦以来、どこか危うくて消えてしまいそうだった彼が、今は戦場に向かうべく前を向いている。

 

「いい顔になったな、松原。突っ込むなら、俺と一緒に行こうぜ!」

 

「はい、鍋島中尉!」

 

補給を終えた94式「不知火」たちは次々と再起動し、通信回線には各少隊の再編成と展開指示が流れ始める。その頃、青島葵中尉がコマンドポストから静かに声を送ってきた。

 

「敵密集地点、先ほど近衛と防衛軍が荒らしたところに再び集結の兆候あり。目標地点をマークしました。各分隊、再突入を」

 

「よし――行くぞ、レッドキグナス!」

 

保科大尉の号令で出撃と同時に戦術機の駆動音が唸りを上げ、戦場へと再び舞い戻る。その中でも、最も先行していたのはA小隊。先陣を切った松原の機体が、真っ直ぐに敵の密集部へと飛び込む。

 

「僕に行かせてください! BETAの頭かち割ってきます!」

 

咆哮と共に放たれた突撃砲が、次々とBETAの群れを貫く。その間隙を突いて突進する松原の機体が、次々と光線級の砲口を潰していく。

 

「松原、やるじゃねえか!」

 

「はいッ! 僕、もう逃げませんから!」

 

彼の奮戦に続いたのは、天然の天才肌・松本歩夢少尉。そしてその後方からは涼介の機体が援護するように迫る。

 

「松本、右から回るぞ!」

 

「りょーっす、なべ中尉!」

 

まるで呼吸を合わせたような動きで、2機の不知火が次々と強襲突撃を仕掛ける。松本の精密な射撃が前方の敵を削ぎ落とし、涼介の近接戦による一刀が敵陣を切り裂く。

 

「今だ、松原! もう一歩前に!」

 

「任せてください!」

 

突貫の末、敵の防衛ラインを一時的にでも突破することに成功したA小隊。その後方では、小川陸少尉と保科隼人大尉による砲撃支援が続いていた。

 

「このタイミングで撃てば、前線は保てます!」

 

「さすが、小川。もう器用貧乏とは言わせねぇな!」

 

「ありがとございます、大尉!」

 

本来ならば別部隊にいたはずの男、小川陸。その柔軟な戦術眼と全ポジションをそつなくこなす実力は、今や中隊には欠かせぬ存在となっていた。的確な砲撃支援と牽制によって、A小隊の突撃を裏から支えていく。

 

その動きを見ながら保科は唇を引き締める。

 

「……この中隊、やっぱり強くなってるな。あとは――俺も燃えねえとな」

 

そう呟いた次の瞬間、保科の不知火が敵の側面を突き、要塞級の要撃に成功。自ら最前線に出ることで全体の士気を一気に引き上げる。

 

「キグナス、全機前進だ! 一気にこの戦場、制圧するぞ!」

 

涼介の「おっしゃ!行くぜぇ!」という叫びと共に、突撃を仕掛けるレッドキグナス中隊。その姿は、まさしく精鋭のそれだった。

 

それぞれが、それぞれの戦いを持ち、それでも仲間の動きに呼応していく。再度補給の後の再出撃――レッドキグナス中隊は、確かに戦場の流れを取り戻しつつあった。

 

そして彼らはこの日、かつて「帝国陸軍の一部隊」から、「帝国の精鋭部隊」へと、確実に歩みを進めていたのだった。

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