Muv-Luv Alternative:Red Cygnus 血染めの白鳥達   作:NageT

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第五十二話 不知火VS壱型丙 − 涼介と隼人の激突

静まり返った長岡基地のシミュレーション室。中央の全天周スクリーンに、訓練区域のCGが展開されている。

 

「――シュミレーター、レディ。模擬戦開始までカウントダウン」

 

ブザーが鳴る。

目の前に広がる仮想の戦場には、二機の戦術機が対峙していた。

一機は、鍋島涼介中尉の不知火。そのコクピットで決意を表情の涼介。

もう一機は、隊長機として新たに配備された不知火壱型丙。パイロットは保科隼人。

 

「四百九十九戦目……今度こそ、勝たせてもらうぜ、兄貴」

 

「言うのは自由だ。全力で来い、涼介」

 

機体が静かに身構える。

 

「――模擬戦、開始!」

 

号令とともに、両機が一気に跳躍。跳躍ユニットが火を噴き、砂煙がCG空間を舞う。

先に仕掛けたのは涼介だった。背部懸架している突撃砲を素早く展開し、遠距離から牽制射撃を放つ。

 

「ちぃっ、やっぱ当たらねぇか!」

 

涼介の砲撃を、保科の壱型丙は大型化された機体にも関わらず見事な荷重操作で回避していく。

旋回しながら中距離へと間合いを詰め、返すように突撃砲を撃ち返してくる。

 

「機体の出力差、舐めるなよ――!」

 

衝撃波が走るたびに仮想空間の大地が揺れる。

だが、涼介は止まらない。猛然と斜め後方に跳躍し、次の瞬間には下から保科の機体を狙って突き上げるように駆ける。

 

「やっぱ射撃の距離じゃ勝てねぇ。なら、近接だ!」

 

「判断が早くなったな、だがまだ甘い!」

 

保科も接近に応じ、長刀を構えたまま両機が一瞬交差――刃と刃が火花を散らす。

 

「はぁああああっ!!」

 

気迫で押し切ろうと、涼介の攻撃が畳み掛けられる。二刀を振り回し、跳躍とスラスターで翻弄しながら連撃を仕掛ける。

 

「やるようになったな……涼介」

 

保科は最初、アドバイスを交えながら応じていた。

 

「もっと腕をひねれ、無駄に機体を捻るな。距離の取り方が甘い。右手の角度が――」

 

だが、涼介の勢いは止まらなかった。

あまりにもしつこく、激しく、獣のように飛びかかる戦い方に、保科のトーンが変わっていく。

 

「……なるほど。遊んでいられないか」

 

次の瞬間、保科の壱型丙が姿勢制御を切り替え、機体の重さを感じさせない鋭さで反撃を始める。

高出力の駆動で踏み込み、涼介の攻撃を受け流し、押し返していく。

 

「涼介、言ったはずだ。突撃だけでは、勝てない」

 

「それでもッ……今日は、負けねぇ!!」

 

涼介が叫び、体勢を崩した保科の壱型丙の右側面に滑り込む。

 

「――もらったァ!!」

 

跳躍と同時に両腕を交差しながら突き込む涼介の不知火。

刃が届く、そんな距離。

 

だが、その瞬間だった。

 

「だから……視野を広く持てって、いつも言ってるだろ」

 

保科の静かな声が響いた。

次の瞬間、壱型丙が低姿勢から大きく旋回し、涼介の機体の背後へと回り込む。

 

「――ッ!?」

 

「見えていないのは、お前自身の後ろだ」

 

長刀が振り下ろされ、涼介の背部に命中。

 

「シュミレーター戦闘終了――勝者、保科隼人大尉」

 

無機質な音声とともに、CG空間が静かに消えていく。

 

 

シュミレーターのハッチを開け、中から顔を出す涼介。

 

「はぁ……っくそ、また負けたか……っ!」

 

シュミレーターから出てきた保科が、口元だけ小さく緩めた。

 

「よく食らいついてきた。少しは、対人戦の戦い方が見えてきたようだな」

 

「うるせぇ……次は勝つ……絶対勝つからな、兄貴……!」

 

「ふっ。なら、次は500戦目だ。節目にふさわしい勝負を用意しておこう」

 

滲んだ汗が視界を曇らせる。

だが、涼介の目には確かな闘志が宿っていた。

 

 

次の500戦目が、彼らの運命を大きく変えることになるとは、まだ誰も知らなかった――。

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