Muv-Luv Alternative:Red Cygnus 血染めの白鳥達 作:NageT
C小隊が到着したのは、BETAの包囲が最も狭まり、A・B小隊が完全に孤立状態にあったタイミングだった。
富田の不知火が先陣を切り、前園、大友、そして紗栄の不知火が縦列を組んで進撃する。
「大尉! 生きてますか!」
富田の怒鳴り声が戦場に響いた。
「遅ぇぞ! クソッタレ!」
涼介が怒鳴り返すその声に、C小隊の全員が無事を確認して表情を緩める。
有村と柊がいないことは先程の青島中尉の通信で報告を受けていたが、6機しか存在していない不知火を見て紗栄が表情を歪める
「……有村少尉、柊少尉……」
富田は何も言わなかった。ただ、噛みしめるようにうなずいた。
C小隊が合流し、突撃、後退、迎撃、。怒涛の連携で包囲を突破したレッドキグナス中隊は、損耗と疲労を抱えながら、後方の一時補給地点へと辿り着いた。だが、そこにも「安堵」はなかった。
補給を終えてなお、再出撃命令が来ない。奇妙な沈黙。
「おかしい……作戦は継続中のはずだ」
保科は中隊のデータリンクからHQへの通信を試みるが――
「……ノイズが強すぎる。回線が繋がらない……」
その時だった。補給部隊の通信士が急報を告げる。
「HQより緊急入電!現在 、後方HQがBETAに急襲され――」
ザザッ……ガガ……!
通信がノイズに塗れ、そこで途切れた。
沈黙の中、涼介が立ち上がった。
「ちょっ、待て待て待て! HQって……青島もそこにいるんじゃねぇのか!?」
機体のハッチに飛び乗ろうとする涼介に、保科が素早く立ちふさがる。
「待て、涼介! 落ち着け!」
「落ち着けるかよ! 青島がそこにいるんだぞ!? アイツが――!」
「だからこそだ」
保科の声が、強く、しかし冷静に響いた。
「今、俺たちが勝手に動いてどうする。HQが潰れて、戦域管制も途切れてる状態で前に出ても、全滅しに行くようなもんだ」
「でもよ……!」
涼介の拳が震える。
「俺は……この作戦が終わったら青島とデートすんだよ……!」
「――言ってる場合か。青島中尉がどんな人間か、お前が一番わかってるだろ」
保科は静かに目を細めた。
「アイツは、無表情で、誰にでも敬語で……そのくせ、部隊の全員を一人残らず見てる。俺たちが勝手に動いて死んで、喜ぶような奴じゃない」
涼介は奥歯を噛んだまま動かない。
周囲の隊員たちは沈黙していた。誰もが不安を抱え、それでも保科の言葉を否定できなかった。
松本が呟くように言った。
「あたしも……心配だけど、青島さんなら、きっと……生きてる」
「……青島中尉ならいつもの顔で大丈夫ですって戻ってきそう……」
紗栄の声も静かだった。兄の背中を、ただじっと見つめていた。
「……すまん。取り乱した」
涼介がようやく座り込む。
保科は深くうなずき、無言で全員を見渡した。
「――今は、まず状況確認だ。それが、今の俺たちにできる最善だ。青島中尉も、それを望んでるはずだ」
誰も反論しなかった。重苦しい沈黙が、補給基地に流れる。
そしてその数分後。
再び通信が届く。
「……現時刻を待って出雲作戦は失敗、繰り返す出雲作戦は失敗。これより撤退戦に入る各部隊は各々が判断で撤退を開始せよ、殿は近衛第3大隊が引き受けるデータリンクはチャンネルを……」
涼介は、すぐに立ち上がった。
「撤退だとッ!ふざけんな!」
保科は涼介を見つめ首を振る。
「撤退だ……総員準備しろ……青島中尉は諦めろ……」
保科大尉の言葉が灰色の戦場に響く