Muv-Luv Alternative:Red Cygnus 血染めの白鳥達   作:NageT

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第六十一話 雁部と小林の実力

「本日13時より、BETA制圧戦闘シュミレーター訓練を実施します。対象、A・B小隊全員。オブザーバーにC小隊一部を配置」

 

格納庫に響く青島中尉のアナウンスに、整備兵たちが慌ただしく機体の最終チェックを進める。

涼介は首をポキポキと鳴らしながら、隣の松原に軽口を飛ばした。

 

「おい、今日こそ先に墜ちんなよ? 新入り二人に見せつけられんのはゴメンだ」

 

「……は、はいっ。でも雁部少尉、結構自身に溢れた顔してますね」

 

「ほぉ〜?」

口を挟んだのは富田だった。

 

「口だけじゃねーってとこ、見せてもらうっけね。なぁ? “狂犬”さんよ」

 

「俺ァ訓練も全力派なんで。ボロ出たら笑ってくださいよ〜、へっへ」

 

軽口を返す雁部。その後ろで、小林は黙々と不知火のシステムチェックを続けている。

 

保科は小声で小川に訊ねた。

 

「小林はどうだ?」

 

「無駄がない、って感じです。動きに派手さはないですけど……なんというか、固すぎる感じはしますね。堅実すぎて」

 

保科は短く頷き、最後に皆へ声をかけた。

 

「シュミレーターだが、実戦と同じつもりで臨め。A小隊は前衛展開、B小隊は後衛でカバー。俺は全体を見る、新入りの力を見たいから涼介も前に出過ぎるなよ!」

 

「了解ッ!」

 

格納庫が静まり、各機体がシュミレーター内に再配置される。

舞台は、山間の小規模戦域。敵は突撃級20、要撃級10、戦車級多数――標準的なBETAの小群だが、連携と反応速度が鍵を握る訓練だ。

 

 

【戦闘開始】

 

「ナベさん、先行します!」

 

雁部の不知火が先陣を切る。射線を横切らぬよう巧みに山肌を駆け上がると、BETA群に向けて長刀を振り下ろす。瞬間、突撃級3体が倒れ込む。

 

「速っ!あの起動……」

 

松原が思わず声を漏らした。その隣で松本はのんきに「あっ、強い」と呟く。

 

「雁部、1時方向に要撃級!」

 

「了解ッ!突っ込む前に潰します!」

 

照準を切り替えた雁部の突撃砲が、正確に頭部を貫通。即死。

 

「……こりゃ、噂通りだな」

 

保科の呟きと同時に、小林が静かに動き始める。ガンスイーパー特有の跳躍から、弾幕を精密に張り始めた。

 

「敵、9時方向から戦車級接近。援護します」

 

淡々とした通信と同時に、小林の射撃がすべての弾を“必ず”弱点に叩き込んでいく。

 

「うわ、今の一射で5体落としたぞ……?」

後方の岸本が思わず感嘆した。

 

「判断も早い……動きが“教科書”通りの動きだ」

小川が口を開いた。

 

「無駄がないってこういうことなんすね……」

雁部が笑いながら、隣で合流した。

 

「雁部少尉、右後ろ!追尾してる!」

 

「了解っス!」

 

小林の冷静な報告に即座に対応、雁部が振り向きざまに一閃。突撃級を瞬時に斬り伏せた。

 

「連携、悪くないぞ。補充組とは思えねぇな」

涼介が後方で援護射撃を加えつつ言った。

 

「まぁ、自分ら国連と本土防衛軍の合わせ技っすから。どっちのクセも慣れてますよ」

 

「クセって言うな」

小林が冷静に突っ込む。

 

やがて演習は終盤、A・B小隊の被弾ゼロ、敵は全滅という形で終了。

 

「――戦闘終了。シュミレーター得点、トップは雁部少尉。次点、小林少尉」

 

青島の淡々とした声が通信に響く。

 

「へっへ、やりましたよ、ナベさん!」

 

「うるせぇ!まぁよくやったんじゃねぇか」

 

涼介に殴られそうになりながら、雁部はへらへらと笑う。

 

「……それにしても、2人ともいい動きでしたね」

松原がぼそりと漏らした。

 

「自分は、ただやるべきことをやっただけです」

小林はそう答えるが、前園が低く呟く。

 

「やるべきことを完璧にできるやつは、強い」

 

その言葉に、富田が大きく頷いた。

 

「安心して背中預けられるっけね、二人ともな。よし、次の実戦でその力、思いっきり見せてくれよ」

 

「へい、まっかせてくださいよ!」

 

雁部はサムズアップし、小林は静かに敬礼を返した。

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