Muv-Luv Alternative:Red Cygnus 血染めの白鳥達 作:NageT
「本日13時より、BETA制圧戦闘シュミレーター訓練を実施します。対象、A・B小隊全員。オブザーバーにC小隊一部を配置」
格納庫に響く青島中尉のアナウンスに、整備兵たちが慌ただしく機体の最終チェックを進める。
涼介は首をポキポキと鳴らしながら、隣の松原に軽口を飛ばした。
「おい、今日こそ先に墜ちんなよ? 新入り二人に見せつけられんのはゴメンだ」
「……は、はいっ。でも雁部少尉、結構自身に溢れた顔してますね」
「ほぉ〜?」
口を挟んだのは富田だった。
「口だけじゃねーってとこ、見せてもらうっけね。なぁ? “狂犬”さんよ」
「俺ァ訓練も全力派なんで。ボロ出たら笑ってくださいよ〜、へっへ」
軽口を返す雁部。その後ろで、小林は黙々と不知火のシステムチェックを続けている。
保科は小声で小川に訊ねた。
「小林はどうだ?」
「無駄がない、って感じです。動きに派手さはないですけど……なんというか、固すぎる感じはしますね。堅実すぎて」
保科は短く頷き、最後に皆へ声をかけた。
「シュミレーターだが、実戦と同じつもりで臨め。A小隊は前衛展開、B小隊は後衛でカバー。俺は全体を見る、新入りの力を見たいから涼介も前に出過ぎるなよ!」
「了解ッ!」
格納庫が静まり、各機体がシュミレーター内に再配置される。
舞台は、山間の小規模戦域。敵は突撃級20、要撃級10、戦車級多数――標準的なBETAの小群だが、連携と反応速度が鍵を握る訓練だ。
⸻
【戦闘開始】
「ナベさん、先行します!」
雁部の不知火が先陣を切る。射線を横切らぬよう巧みに山肌を駆け上がると、BETA群に向けて長刀を振り下ろす。瞬間、突撃級3体が倒れ込む。
「速っ!あの起動……」
松原が思わず声を漏らした。その隣で松本はのんきに「あっ、強い」と呟く。
「雁部、1時方向に要撃級!」
「了解ッ!突っ込む前に潰します!」
照準を切り替えた雁部の突撃砲が、正確に頭部を貫通。即死。
「……こりゃ、噂通りだな」
保科の呟きと同時に、小林が静かに動き始める。ガンスイーパー特有の跳躍から、弾幕を精密に張り始めた。
「敵、9時方向から戦車級接近。援護します」
淡々とした通信と同時に、小林の射撃がすべての弾を“必ず”弱点に叩き込んでいく。
「うわ、今の一射で5体落としたぞ……?」
後方の岸本が思わず感嘆した。
「判断も早い……動きが“教科書”通りの動きだ」
小川が口を開いた。
「無駄がないってこういうことなんすね……」
雁部が笑いながら、隣で合流した。
「雁部少尉、右後ろ!追尾してる!」
「了解っス!」
小林の冷静な報告に即座に対応、雁部が振り向きざまに一閃。突撃級を瞬時に斬り伏せた。
「連携、悪くないぞ。補充組とは思えねぇな」
涼介が後方で援護射撃を加えつつ言った。
「まぁ、自分ら国連と本土防衛軍の合わせ技っすから。どっちのクセも慣れてますよ」
「クセって言うな」
小林が冷静に突っ込む。
やがて演習は終盤、A・B小隊の被弾ゼロ、敵は全滅という形で終了。
「――戦闘終了。シュミレーター得点、トップは雁部少尉。次点、小林少尉」
青島の淡々とした声が通信に響く。
「へっへ、やりましたよ、ナベさん!」
「うるせぇ!まぁよくやったんじゃねぇか」
涼介に殴られそうになりながら、雁部はへらへらと笑う。
「……それにしても、2人ともいい動きでしたね」
松原がぼそりと漏らした。
「自分は、ただやるべきことをやっただけです」
小林はそう答えるが、前園が低く呟く。
「やるべきことを完璧にできるやつは、強い」
その言葉に、富田が大きく頷いた。
「安心して背中預けられるっけね、二人ともな。よし、次の実戦でその力、思いっきり見せてくれよ」
「へい、まっかせてくださいよ!」
雁部はサムズアップし、小林は静かに敬礼を返した。