Muv-Luv Alternative:Red Cygnus 血染めの白鳥達   作:NageT

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第五話 血と汗の証明・総戦技演習

訓練学校での最後の訓練の夜。涼介たちは、明日に控える総戦技演習の準備を終え、いつもの倉庫裏に集まっていた。

 

「まさか、ここまで来るとはな……」

池田裕平がぼそりと呟きながら、額の汗を拭った。坊主頭に夜風が心地よさそうに吹き抜ける。

 

「何だよ、しみじみして。まだ卒業してねぇぞ?」

涼介は笑いながら地面に腰を下ろす。彼の髪はすっかりモヒカンヘアーとして馴染み、かつての幼い面影はもうほとんどなかった。

 

「フッ……そういうお前が一番緊張してんだろ。ほら、足、ずっと動いてるぞ」

歳刀慶が肩をすくめながら缶入りの麦茶を傾ける。彼は変わらず冷静だったが、その目の奥には確かな闘志が灯っていた。

 

「緊張してねぇよ。ただ……明日、勝てる気がするんだ。いや、勝つしかねぇ!」

涼介の拳が地面を叩く。近藤静が口元をほころばせた。

 

「ふふっ、じゃあ言ってやるわよ。今のお前の戦績、池田に三勝、歳刀に一勝、私には……ゼロ。どうせ明日も、カバーしてやんないとね」

「うっせ!本番前にやめろよ!」

涼介が不機嫌そうにフンっと鼻を鳴らし腕を噛み静かを睨む。

 

「冗談よ冗談。……でも、本気で行くわ。私、絶対に落ちない」

誰もがそう誓う夜だった。

 

──そして、夜が明ける。

 

総戦技演習。それは戦術機が使えない状況を想定した、候補生最後の試練。班単位で投入された彼らは、煙と瓦礫に覆われた廃都市フィールドで、迫り来る敵役である兵士から“48時間の生存”を命じられる。

 

「行くぞ、全員──生き延びて、卒業するぞッ!」

鍋島班は4人小隊単位で班長の鍋島涼介を筆頭に、副班長である近藤静、歳刀慶、池田裕平、とともに突入した。

 

最初の接敵は演習開始から3分。廃ビル街にて敵である歩兵部隊と遭遇。即座に発煙弾で視界を奪い、静が突入する。

 

「敵歩兵部隊、左からくる! 静、任せた!」

「了解ッ!」

涼介は池田と共に右へ展開。敵候補生が斬りかかってくるが、訓練用のカタールで受け流し、肩口に叩き込む。

 

“ピッ”という電子音。ヒット確認。

 

続いて歳刀が後方から挟み込み、敵2名を一挙に脱落させる。

 

残り5分。

 

木立の中、隊は再編成を図る。だが──

 

「前方に3部隊……両サイドから1部隊づつ……囲まれてる! ここは後退だ!」

歳刀の冷静な判断が光る。

 

「逃げるのかよ!」

涼介が声を張る。

 

「違う、“戦うために生き残る”んだ。勝つのが目的じゃない、“今は生き延びる”のが任務だろ!」

歳刀の言葉に、涼介は舌打ちしつつも従った。

 

総戦技演習──残り3分。砂塵が舞う瓦礫地帯。四方から敵部隊の攻勢が迫る。

 

「いくぞ!」

静が叫び、先陣を切って飛び出した。

 

涼介は池田とともにその後方を固め、歳刀が側面を守る。隊員たちは一体となり、瓦礫を盾にしながら連携攻撃を繰り返す。

 

「池田、援護頼む!」

「任せろ!」

池田は冷静に射撃を続ける。仲間の盾となり、前線を支えた。

 

48時間。長くも、命の時間が刻まれる。

 

そして、最後の数秒──

 

“ピーーッ!!”

 

試験終了のブザー。鍋島班、生存者は4名全員。見事な連携で任務達成だ。

 

倒れ込んだ涼介は、赤く染まった夕焼けの空を見上げ、ぽつりと呟いた。

 

「……なんだよ、いるじゃんよ。あの時見た、赤い白鳥……」

 

胸の奥に熱い何かが灯り、仲間との絆と共に、戦士としての覚悟が確かなものになっていた。

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