Muv-Luv Alternative:Red Cygnus 血染めの白鳥達   作:NageT

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第六十七話 新潟戦線・白銀の地獄

佐渡島から渡海してきたBETA群が、雪に閉ざされた越後平野を埋め尽くす。

白と赤――吹雪の中に、血のような波が押し寄せていた。

 

「接敵まであと30秒!距離2000!」

 

青島葵中尉の落ち着いた声が、全機の通信に響く。

レーダーには膨大な数の赤点。突撃級、要撃級、戦車級、さらに要塞級も混在している。

 

「A小隊、包囲突破行くぞ!このまま突っ込む!」

 

「うぉ〜!ひさびさに暴れられるぅ〜」

 

涼介の雄叫びに、松本、松原そして雁部が各々のペースで応じる。

 

松本はよくわからない気合いを入れて叫ぶが、機体の動きは誰よりも俊敏だった。

 

「僕も鍋島中尉みたいに……やれるっ!」

松原が不知火の跳躍ユニットを最大出力で吹かし、突撃級に格闘戦を仕掛ける。

 

「おらおらおらァァ!散れやコラァァ!!」

雁部の不知火が回転する様に斬撃で突撃級を薙ぎ払う。狂犬の異名に違わぬ攻めだった。

 

「……いい突っ込みだ。後衛、火線合わせるぞ!」

 

保科の不知火壱型丙が跳躍ユニットで跳ね上がり、BETAの密集地帯に突撃砲を撃ち込む。

 

「岸本、右に抜けた突撃級を狙って!小林は左、砲撃援護!」

 

「了解ッ!“斉射っ!”」

「こっちは任せてください!」

 

掃討に長けたB小隊が、左右から突撃してくるBETA群を的確に迎撃していく。

 

「C小隊、支援体制を維持。前方に光線級2体確認、座標送信」

 

「見えたぜ青島中尉、潰すッ!」

 

富田の不知火の突撃砲を上げ、制圧射撃を叩き込む。

命中。2体の光線級が爆発四散。

 

「ナイスヒット、富田中尉。もう一体、左の建物の陰」

大友が即座に次の座標を提示。

 

「前園、警戒しながら下がって!小さい鍋島、構えっ!」

 

「了解……っ。撃てます……!」

 

妹の紗栄の不知火が、訓練で磨いた照準で光線級の眼を正確に貫いた。

 

「やった……倒せた、ちゃんと……!」

 

「まだ安心しないで鍋島少尉。次が来るよ!」

大友が機体を前に出して庇う。

 

その瞬間、斜め上空から敵の光線が地面をえぐる。

 

「光線級、まだいたか!数が違う……!」

 

青島の分析が追いつかないほど、敵の進軍速度は異常だった。

そしてその中に、奇妙なシルエットの個体が混じっていた。

 

「……要塞級。複数体の個体を確認」

 

「はぁ!?この規模で要塞級が複数体!?マジかよ!」

涼介が舌打ちする。

 

「狙撃する、俺に任せろ」

保科が迎撃位置を移動し、要塞級に照準を合わせる。

 

「こちらCP、各小隊に通達。BETA群は佐渡島より更に新たな増援を展開中。

 本戦域の制圧は困難と判断。時間稼ぎと戦力削減を優先」

 

「退けってのかよ……!」

涼介が叫ぶ。

 

「そうだ。だが、退くためにも戦うぞ」

保科が冷静に言い返した。

 

その時、CPから再び通信が入る。

 

「涼介中尉、損耗を避けてください。貴方は突出しすぎです」

 

「青島中尉……俺は!」

 

「……考えます、と言ったでしょう?」

 

その一言に、涼介は一瞬だけ顔を緩ませ、

「へへっ……了解、青島中尉。命に代えても守ってみせるぜぇ!」

 

再び咆哮を上げ、レッドキグナスは雪の戦場を駆け抜ける。

敵の数は減らない。それでも、誰一人退かない。

 

地獄のような吹雪の中――

赤と白と火線が交差する、白銀の地獄が広がっていた。

 

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