Muv-Luv Alternative:Red Cygnus 血染めの白鳥達 作:NageT
「後衛の残弾、半数以下。前衛の機体損傷率40%以上――限界です」
青島葵中尉の冷静な声が、戦場に木霊した。
吹雪の中、レッドキグナス中隊は文字通り地を這いながら戦っていた。要塞級の下で連携を強めたBETA群は、予想以上に手強かった。戦車級の波が押し寄せ、光線級は隙間を縫って正確に照準してくる。
「……くそっ、これ以上粘っても無駄死にだ。後退するぞ!」
保科が判断を下すと、すぐに各小隊が機動を切り替えた。
「後退ルートを確保します!」
富田の不知火が火力で進路を開き、前園と紗栄が左右から掩護する。
「小川、小林、援護頼む!」
「任せてください、大尉!」
「こっちは潰れてません!」
B小隊が突撃級の波を迎え撃ち、後退するA小隊を守る。
「松本、松原、落ち着いて下がれ!雁部、援護頼む!」
「あ……弾切れが近い。省エネモード!」
「背中は預けろ、松本ォ!」
「バカヤベーっ! 全員で生き残るぞッ!」
レッドキグナス中隊は隊列を組み、撤退路にあらかじめ設定された支援ポイントまで強行後退を遂行する。CPの青島は、随時ルートを更新しながら、的確な指示を飛ばし続けた。
⸻
――二時間後。後方支援拠点。
が天幕を叩く中、メンバーは束の間の整備と補給を受けていた。
外では整備員たちがBETAの返り血で血まみれの機体を洗浄し、補給車両が慌ただしく動いている。
「全員、生きてますか……」
小川が地面に腰を下ろして呟いた。誰も欠けていない。それが、ただの奇跡ではなく、仲間全員の連携と覚悟の結晶であることを誰もが理解していた。
「僕……さっき正直、死ぬかと思いました。」
松原が膝に拳を置いたまま、ぽつりと呟く。
「……だが死ななかった。だから、やり返すぞ」
保科が、タバコに火をつけながら静かに言う。
「要塞級はまだ残ってる。あいつを潰さない限り、この戦線は終わらねぇ」
「なべ中尉、げんきだね〜?」
松本がだらしない表情のまま尋ねる。
「当たり前だ……やり返す。全力でな!」
――その数時間後、夜戦。
補給を終え、再出撃したレッドキグナスは、戦術を根本から変更していた。正面突破ではなく、三方向からの包囲殲滅戦。青島の作戦構築は完璧だった。
「A小隊、左翼より侵入!B小隊、中央制圧!C小隊は弾幕と陽動で支援しつつ要塞級の位置を固定!」
「了解、行くぞォッ!」
涼介が吠えた。
「突撃、開始!」
A小隊が側面から突撃級の群れに切り込む。
「雁部、やれるな!?」
「当たり前だァ!ナベさんも遅れんなァ!」
松本は長刀を手に、BETAの眼を一つずつ潰していく。
「ふぃ〜……帰ったら焼きそばたべたいなぁ〜」
「松原、下がるなよ!合わせるぞ!」
「了解です中尉!」
中央ではB小隊が主戦線を維持しながら、機動戦を展開していた。
「火力集中、狙うは要塞級!」
保科の指示に、小川と岸本、小林が即応する。
「撃てッ!」
「いけェェ!!」
要塞級の頭部が吹き飛んだ瞬間、BETA群の動きが一斉に鈍る。
「今だ、総攻撃!!」
C小隊が突撃砲と俸給の際装備してきた多目的誘導弾システムのミサイルでBETAの群れを一掃しはじめる。
「鍋島少尉、左の突撃級、狙って!」
「……了解っ!」
「見ろよ……押してるっけね、押し返してるっけ!!」
富田の声に皆が気づく。――勝っている。あの地獄の中から戻ってきた彼らが、今、戦場を支配している。
「各機、損傷率30%以内。弾薬残量70%。……継戦可能です」
青島の報告がそれを裏付けた。
「これで終わりだァァァ!!」
最後の光線級が踏み潰しし、白銀の戦場に静寂が戻る。
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――戦後、午前4時。
朝焼けが新潟の雪原を淡く染めていく。
「……BETA、全滅」
青島の最終確認が入った瞬間、無線にざわめきと歓声が沸き上がる。
「やった……!」
「生き残った……本当に」
「お疲れ様です、みなさん。全員、生還です」
青島が淡々と、けれど少しだけ柔らかく報告する。
「よし。全員、帰るぞ……長岡までな!」
保科の声に、誰もが応えた。
戦場を照らす光の中、レッドキグナス中隊の不知火たちは、雪を踏みしめながら勝利の帰路についた。