Muv-Luv Alternative:Red Cygnus 血染めの白鳥達   作:NageT

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間話 保科と小林

長岡基地の一角、格納庫脇の人気の少ない通路。薄暗い照明の下、整備兵の足音が遠ざかると、静寂が戻る。

 

「……保科大尉。少し、お時間をよろしいでしょうか」

 

小林洋平がそう切り出したのは、演習終わりの遅い時間だった。いつもながら真っ直ぐな目をしているが、今夜はどこか張り詰めたものをまとっていた。

 

「……構わねえよ。どうした、小林」

 

「ここで話すことではないので、別室へ」

 

通されたのは、かつて戦死者の追悼式に使われた記録室。今は誰も使わない、がらんとした空間だった。小林は一礼し、静かに切り出す。

 

「本日は私が、なぜこの部隊に出向してきたのか。今夜、その本当の理由をお話しします」

 

保科は黙って頷く。小林は内ポケットから折り畳まれた紙の束を取り出した。だが、すぐには渡さず、まず自分の言葉で語り始める。

 

「私は、本土防衛軍第一大隊所属、中尉です」

 

「……中尉?」

 

「はい。階級は偽って配属されました。私の役目は、ある“人物”を見極めることでした」

 

保科は眉をひそめたが、すぐに理解したように深く息をついた。

 

「なるほどな……それで“俺”を見てたってわけか」

 

小林は頷く。続けて、まっすぐな視線を保科に向ける。

 

「今の日本帝国は、国家としての理念も軍の在り方も曖昧です。戦術機でいくらBETAを殲滅しても、国を支える志がなければ未来はない。私たち本土防衛軍は、その志を取り戻すため、選ばれた者を各部隊に送っているのです」

 

保科は黙ってその言葉を聞いていた。

 

「私はあなたを見てきました。何度か2人で話もさせていただき、戦場での指揮、部下との向き合い方、そして何より――日本帝国という国に対する目を。あなたはこの部隊で唯一、“士”の資格を持っていると判断しました」

 

そう言って、小林は手紙を差し出す。

 

「これは、本土防衛軍第一大隊の沙霧大尉からの手紙です。あなたに直接渡すよう、託されました」

 

保科は受け取り、静かに目を通した。文面は厳しくも誠意に満ちていた。

「日本帝国を、再び真の国たらしめるために。志ある士を求む」――そう綴られていた。

 

手紙を閉じた保科は、少し考えてから口を開いた。

 

「……小林。ありがとな。お前が俺をどう見てきたか、ちゃんと伝わったよ。でも、すぐには答えられない」

 

「承知しています。ただ……あまり時間は残されていません。日本帝国の腐敗も、BETAの脅威も、あなたが思う以上に速く進んでいる」

 

言葉を残して、小林は敬礼をし、その場を去った。

 

静寂の中、保科はしばらく手紙を見つめていた。

 

「“国を思う士”……か、その気持ちは確かにあるけどよ……」

 

そう独り言ちた保科の横顔は、普段の厳しさとはまた違う、迷いと覚悟の入り混じったものだった。

 

――長岡の夜が、再び静かにその帳を下ろした。

 

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