Muv-Luv Alternative:Red Cygnus 血染めの白鳥達 作:NageT
長岡基地の夜、灯りの落ちた格納庫裏手の喫煙所。レッドキグナス中隊のいつもの面子——保科、涼介、富田、小川、雁部——が無言のまま煙を燻らせていた。静かな空気の中で、ジリリと火種が揺れる。
「……やっぱ戦場の後の一服は格別だな」
富田が煙を鼻から吐きながら呟くと、保科が小さく笑う。
「まあ、俺らにはこの時間が必要だろ」
「……ですね」
小川がそう返しながら、ライターで火をつけた煙草を軽く指で弾く。雁部は無言で壁にもたれ、スパスパと遠慮なく吸い続けている。
そんな中、バタンと勢いよくドアが開いた。
「ちょっと!」
甲高い声に一同が振り返ると、そこには腕を組んだ鍋島紗栄が立っていた。制服姿のまま、眉を吊り上げて怒気を孕んだ目で男たちを睨みつけている。
「あなた達、未成年なのに煙草なんか吸っていいと思ってるの!?」
その場に一瞬、凍りつくような沈黙が走る。
それに今まで全然言ってこなかった癖に急にどうした?という様な困惑もあるが保科が口火を切る。
「……俺は未成年じゃないぞ、紗栄」
保科が落ち着いた声で言いながら、くゆらせた煙をゆっくり吐き出した。
「俺もな。去年で未成年卒業したっけね」富田も鼻から煙を吹き出しながら軽く笑う。
「……戦時下ですし……ね?」小川は言い訳とも主張ともつかぬ声で、煙草を咥えたまま後ろを向いた。
雁部に至ってはまったく聞こえていないように、スパスパと気持ちよさそうに煙を吐き続けている。
「……ふふっ……」
涼介が口元を歪めた。
「俺、先日20歳になりました〜。残念でした〜」
そう言って、心底憎たらしい笑顔を浮かべたかと思うと、あろうことか紗栄の顔めがけて煙をフーッと吹きかけた。
「――キーッ!!」
金切り声を上げながら怒りの絶頂に達した紗栄の拳が、見事涼介の鳩尾に突き刺さる。
「ぎゃっぷらっん!!」と謎の悲鳴を上げ、涼介は口から変な音を漏らしながらその場に崩れ落ちた。
「このバカ兄ぃ!!もー怒ったぞ!!」
紗栄は仁王立ちのまま、倒れ込んだ兄を見下ろす。
「勝負だ!!チビ兄!!この恨み、タイマンで晴らしてやる!」
「ほぅ……」涼介が唸りながら立ち上がる。「紗栄が俺に勝負を挑むとはな……!」
「戦術機シュミレーターで真剣勝負だよ!チビ兄!タイマン!!」
「おもしれぇ……やったやんよ!!」
涼介が口元を拭いながらニヤリと笑う。
「その挑戦、受けて立つぜ……!」
男たちが口をあんぐりと開ける中、鍋島兄妹の壮絶なタイマン対決が幕を開けようとしていた。