Muv-Luv Alternative:Red Cygnus 血染めの白鳥達   作:NageT

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第七十話 未成年の喫煙はいけません。

長岡基地の夜、灯りの落ちた格納庫裏手の喫煙所。レッドキグナス中隊のいつもの面子——保科、涼介、富田、小川、雁部——が無言のまま煙を燻らせていた。静かな空気の中で、ジリリと火種が揺れる。

 

「……やっぱ戦場の後の一服は格別だな」

 

富田が煙を鼻から吐きながら呟くと、保科が小さく笑う。

 

「まあ、俺らにはこの時間が必要だろ」

 

「……ですね」

 

小川がそう返しながら、ライターで火をつけた煙草を軽く指で弾く。雁部は無言で壁にもたれ、スパスパと遠慮なく吸い続けている。

 

そんな中、バタンと勢いよくドアが開いた。

 

「ちょっと!」

 

甲高い声に一同が振り返ると、そこには腕を組んだ鍋島紗栄が立っていた。制服姿のまま、眉を吊り上げて怒気を孕んだ目で男たちを睨みつけている。

 

「あなた達、未成年なのに煙草なんか吸っていいと思ってるの!?」

 

その場に一瞬、凍りつくような沈黙が走る。

 

それに今まで全然言ってこなかった癖に急にどうした?という様な困惑もあるが保科が口火を切る。

 

「……俺は未成年じゃないぞ、紗栄」

 

保科が落ち着いた声で言いながら、くゆらせた煙をゆっくり吐き出した。

 

「俺もな。去年で未成年卒業したっけね」富田も鼻から煙を吹き出しながら軽く笑う。

 

「……戦時下ですし……ね?」小川は言い訳とも主張ともつかぬ声で、煙草を咥えたまま後ろを向いた。

 

雁部に至ってはまったく聞こえていないように、スパスパと気持ちよさそうに煙を吐き続けている。

 

「……ふふっ……」

 

涼介が口元を歪めた。

 

「俺、先日20歳になりました〜。残念でした〜」

 

そう言って、心底憎たらしい笑顔を浮かべたかと思うと、あろうことか紗栄の顔めがけて煙をフーッと吹きかけた。

 

「――キーッ!!」

 

金切り声を上げながら怒りの絶頂に達した紗栄の拳が、見事涼介の鳩尾に突き刺さる。

 

「ぎゃっぷらっん!!」と謎の悲鳴を上げ、涼介は口から変な音を漏らしながらその場に崩れ落ちた。

 

「このバカ兄ぃ!!もー怒ったぞ!!」

 

紗栄は仁王立ちのまま、倒れ込んだ兄を見下ろす。

 

「勝負だ!!チビ兄!!この恨み、タイマンで晴らしてやる!」

 

「ほぅ……」涼介が唸りながら立ち上がる。「紗栄が俺に勝負を挑むとはな……!」

 

「戦術機シュミレーターで真剣勝負だよ!チビ兄!タイマン!!」

 

「おもしれぇ……やったやんよ!!」

 

涼介が口元を拭いながらニヤリと笑う。

 

「その挑戦、受けて立つぜ……!」

 

男たちが口をあんぐりと開ける中、鍋島兄妹の壮絶なタイマン対決が幕を開けようとしていた。

 

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