Muv-Luv Alternative:Red Cygnus 血染めの白鳥達   作:NageT

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第七十二話 模擬戦開始 ― 鍋島兄妹、決戦の火蓋 ―

両者、シュミレーターに座り、ディスプレイ越しに市街地フィールドが立ち上がっていくのを見つめる。

 

「準備完了。両名、スタンバイ入りました」

 

淡々とした青島の声が室内に響き、緊張感が一気に高まった。

 

涼介は腕を組んだまま、真っ直ぐ前を睨み据える。余計な力は入っていない。だが目は真剣そのものだった。

 

対する紗栄は、深く呼吸を整えながら、目を閉じて頭の中で戦術の組み立てを進めていた。兄の癖も、機体の特性もすべて記憶にある。

 

そして。

 

「それでは開始します」

 

青島の淡々とした合図と共に、勝負が宣言される。

 

 

模擬戦条件:市街地フィールド

対戦:鍋島涼介中尉 vs 鍋島紗栄少尉

勝利条件:相手機体の撃墜

勝者特典:

• 鍋島中尉勝利→喫煙の続行

• 鍋島少尉勝利→キグナス中隊全面禁煙

 

 

「……え?」

 

その瞬間、観戦していたキグナス中隊の喫煙メンバー4人から同時に困惑の声が漏れる。

 

「俺らもかよ……」

「アドバイスしちゃったよ、めっちゃ真剣に……」

「これはヤバいっけね……」

「ナベさーん!死んでも負けるな!!」

 

すでにただの兄妹喧嘩ではなく生活習慣が懸かっていることに気付き、喫煙組の表情が青ざめる。

 

 

次々と展開される市街地フィールド。その両端に配置される二機の戦術機。

 

最初に現れたのは──不知火。紗栄の愛機だ。第三世代の主力機であり、柔軟な機動力を持つ。

 

続いて──激震。無骨なフォルムが表示される。

 

「……あっ」

 

観戦していた全員が同時に声を上げた。

 

「はぁ?激震?どうなってんだ!?」

「……え、機体間違ってません?」と、涼介本人が困惑する。

 

その問いに対し、青島が動じず告げる。

 

「鍋島中尉にはハンデとして、搭乗機を激震に設定させていただきました。装備は同一ですのでご安心ください」

 

「ふざけんな!第一世代機で不知火と戦えってか!?」

 

涼介の抗議も虚しく、青島の声が試合開始を告げた。

 

 

「それでは、模擬戦──開始」

 

「──あー!もうやってやらァッ!!」

 

怒声と共に、涼介の激震が動き出した。ここ数年、不知火ばかりに乗っていたせいで、激震の動きは重く、ぎこちなく感じる。しかし──

 

「……すぐ思い出すさ、コイツは俺の“相棒”だ」

 

地獄の京都で生き抜いた旧友のような機体。愛機だった激震を、涼介はまるで手足のように操り始める。

 

「禁煙なんかしてられっか! 俺たちの憩いの場は命かけて守ってやらァ!!」

 

その言葉に観戦席が湧いた。

 

「バカ涼介、突っ込むなよ!激震で真っ直ぐは無茶だ!」

保科が心配そうに声を上げる。

 

 

一方、紗栄は──冷静だった。

 

「補足したよ、チビ兄……」

 

ビルの影から姿を現し、不知火の突撃砲が火を吹く。足元へと撒かれた弾丸が激震に迫る!

 

だが、激震は急制動からの急発進。火花を散らしながらスライドするように回避し、回避軌道で逆に距離を詰める。

 

「ちっ、流石に不知火には追いつけねぇか……!」

 

不知火の機動性に翻弄されつつも、市街地の遮蔽物を巧みに使い、チャンスを狙う涼介。

 

紗栄もまた、距離を維持しながら牽制射撃を続ける。

 

「今のはヤバかった……。でも……次はこっちの番っ!」

 

一瞬、後退していた不知火がくるりと方向転換し、レーダーの範囲外へと飛び出す。

 

「狙撃か。いい判断じゃねぇか、さすが俺の妹……」

 

涼介が、思わず口元を吊り上げた。

 

「ったく……さしずめ“光線吶喊”ってやつか。機体といい、初陣を思い出すぜ……!」

 

彼は一度深く息を吸い込み──

 

「よし……行くぞッ!!」

 

激震、加速。爆音と共に獣のような突撃が再開される。

 

 

その戦いの果てに待つのは、兄の意地か、妹の覚悟か。

 

キグナス中隊(一部の)の未来を懸けた、鍋島兄妹の全力模擬戦が、今まさにクライマックスへと突入する――!

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