Muv-Luv Alternative:Red Cygnus 血染めの白鳥達   作:NageT

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第七十三話 兄妹激突 ― 砂塵の決着 ―

レーダーから消えた紗栄の不知火を、涼介は一瞥もしなかった。

 

「どうせ、あの辺だろ……!」

 

視線は真っ直ぐ前方。激震を加速させ、市街地のど真ん中を突き進んでいく。

 

「……来る!」

 

狙撃ポイントの一角に潜んでいた紗栄の不知火が、その姿を捉える。突き出された支援突撃砲の照準が涼介の激震に重なる。

 

「もらったよ、チビ兄……」

 

インサイトにしっかりと捉えたその瞬間、激震が突撃砲を乱射した。

 

「なっ!?」

 

激しい爆音が市街地に鳴り響く。破壊されて崩れ落ちるビル、舞い上がる瓦礫と砂塵が周囲を包み込む。

 

涼介は突撃しながら、狙撃ポイントになりそうな場所を予測して片っ端から撃ち崩したのだ。

 

「狙撃ポイント撃っときゃ……どうにかなんだろ!!」

 

吹き荒れる爆風の中で、激震のシルエットは完全に視界から消えた。

 

「……見失った」

 

紗栄はすぐにモードを切り替える。通常カメラからサーモセンサーへ、機動予測モードへ──しかし、どれにも映らない。

 

「いない……!?」

 

瓦礫の残骸、舞い上がる砂塵、視界は最悪。だがその環境を逆手に取ったのは涼介だった。紗栄が確保した狙撃ポイントは、砂塵のせいでむしろ無防備な位置と化していた。

 

「くそ……」

 

紗栄は、ブレス音を抑えるように息を潜める。相手が動くのを、待つしかない。

 

そのとき──

 

パンッ

 

「発砲音……!」

 

砂塵の中から、明らかに機体の火器が鳴った。

 

「やっぱり我慢できなかったね、チビ兄っ!」

 

音源を即座に補足し、狙撃モードの支援突撃砲が唸りを上げる。

 

「食らええええぇっ!!」

 

狙撃仕様のロングバレルから放たれた高初速弾が一直線に飛び、次の瞬間、爆炎が吹き上がる。

 

「やったっ……チビ兄に、勝った!!」

 

紗栄はディスプレイ越しに爆発を確認し、安堵の吐息と共に笑みを浮かべた。

 

だが──その刹那。

 

ブオンッッ!!

 

跳躍ユニットの轟音が、背後から近づいてきた。

 

「──ッ!?」

 

「見つけたぜぇ……紗栄ぇ!!」

 

砂塵の幕を裂くように現れたのは、無傷の激震。その右手には長刀。斜めに構え、まるで斬鉄の獣が駆けるかのように突撃してくる。

 

「えっ……なんで!?さっき、撃墜したはず……!」

 

視界が追いつく前にパニックが紗栄を襲う。反射的に跳躍ユニットを噴かし、不知火を高く飛ばす。

 

「なら、上から叩くしか──っ!」

 

宙から見下ろす形となった不知火が、突撃砲を乱射する。

 

「喰らええええ!!」

 

連射される36mm弾が激震に雨のように降り注ぐ。

 

「チッ……バカ妹がァ!!」

 

涼介は激震の鈍重なフレームをねじ込みながら、装甲で無理やり弾丸を受け止めた。硬い、重い、だが止まらない──それが激震だ。

 

跳躍を終え、着地した瞬間、不知火の足元に涼介の激震が突っ込んでいた。

 

「──そこだ!!」

 

シュウッと風を切る音の後、激震の長刀が不知火の脚部を切断する。

 

「くっ……!」

 

脚を失い、体勢を崩した不知火が地面に倒れ込む。

 

その胴体めがけ、激震の長刀が突き立てられた。

 

ズガァンッ!!

 

爆発を伴う擬似的な撃墜判定が下され、模擬戦用の警告アラートが鳴り響く。

 

 

キグナス中隊始まって以来の兄妹喧嘩は、兄・涼介の勝利により終結した。

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