Muv-Luv Alternative:Red Cygnus 血染めの白鳥達 作:NageT
演習場に朝日が差し込む中、レッドキグナス中隊の面々が戦術機の整備とシミュレーション準備に取り掛かっていた。
先日の涼介と紗栄の模擬戦は、部隊内に小さくも確かな影響を残していた。互いに刺激を受け、誰もが自分の役割をより鮮明に意識し始めていたのだ。
「おい、雁部。昨日のブリーフィングで、テメェ居眠りしてただろ」
涼介が肩で笑いながら声をかける。
「いやいや、あれは目を閉じて戦況をイメージしてただけっすよ、ナベさん」
雁部は涼介の背中を軽く叩くと、タバコをくわえたまま工具箱を持ち上げた。喫煙組の二人は、何気ない会話でも息が合っている。
一方、松松コンビの松本と松原はシミュレーター前で口論中。
「だから〜、みっちゃんがつっこみすぎなんだってぇ〜」
「松本、あれはむしろお前の方が突っ込んでただろ?――」
「ほら〜、またかたいこといった〜」
周囲の隊員たちは苦笑しながらも、この二人の掛け合いが妙に訓練場を和ませることを知っている。
後方ではB小隊の小川が、ポジション変更後の迎撃戦術を岸本と確認していた。
「ガンスイーパーからガンインターセプターに変わると、視界の取り方も変わりますね」
「お前なら順応できる。だが甘く見るなよ」
小川は真剣にうなずく。その横で保科は地図を片手に作戦プランを練っていたが、その視線が一瞬だけ小林に向く。
(こいつの正体を知ってるのは俺だけだ…それにしても今日も見られてるな)
保科の胸中は穏やかではないが、表情には出さない。
C小隊の富田は、紗栄と大友に射撃フォームの指導をしていた。
「小さい鍋島、肘が開きすぎだ。ほら、こう」
「は、はい…」
「大友さん、こいつまた泣きそうだっけ」
「泣く前に覚えさて富田中尉」
富田が困った顔で大友に泣きつくも、さらっと笑顔で返す大友、そんなやり取りに、涼介が笑いながら近づく。
「おぅ〜紗栄またベソかいてんのか?助けてやろうか?」
「チビ兄が来ると気が抜けるんだよ!あっち行って!」
紗栄の頬がふくらみ、皆が笑い声を上げた。
コマンドポストでは青島が淡々と訓練状況をモニターしている。
「A小隊、模擬戦区域へ移動してください」
「了解、終わったら飯行こうぜ!」
「考えておきます」
このお約束のやり取りに、管制室のスタッフたちまでくすりと笑った。
こうして一人ひとりの特性を活かしつつ、互いの癖や間合いを理解する時間が続いていく。
その積み重ねが、やがて戦場での確かな信頼となることを、誰もが無意識に感じていた。