Muv-Luv Alternative:Red Cygnus 血染めの白鳥達   作:NageT

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第七十七話 仙台行きの命令

昼下がり、ブリーフィングルームに呼び出された涼介と紗栄。

ドアを開けると、保科が机の上に書類を広げながらこちらを見上げた。

 

「今日な、本土防衛軍から連絡が来たんだが。俺は明日、仙台に呼び出された。お前らも同行しろ」

その言葉に、涼介と紗栄は同時にハッと顔を上げた。仙台──現在、首都機能を移し臨時政府が置かれている、その場所は。そして……

 

「仙台の難民キャンプには、お前らの両親、それから俺の両親もいるはずだ」

 

一瞬の沈黙の後、保科は軽く笑ってみせる。

「会いに行く時間ぐらいはあるだろう。明日の朝出発だ。準備しておけ」

 

説明が終わるや否や、涼介は「了解!」とだけ叫び、椅子から立ち上がると部屋を飛び出した。

足音が遠ざかっていくのを見送りながら、保科は呆れたように息を吐く。

「……まったく、あいつは」

 

残された紗栄は、机の前に立ったまま視線を落とした。

「どうした、紗栄」

保科の声は柔らかかった。

少し間を置き、紗栄は小さく答える。

「……お父さんとお母さん、元気かなって……あの難民キャンプ、あんまり環境とか良くなかったから」

 

保科の眉が動いた。

「そんなに酷いのか?」

「うん……配給は少ないし、狭い場所に大勢押し込められて、お風呂も数日に一度しか入れなかったって……戦時中とはいえ、あんな扱い……紗栄は適正があったみたいで、すぐに士官学校入ったけど……」

 

淡々と語るその声には、抑えても滲む怒りと悲しみが混じっていた。

保科は深く息を吸い、低く吐き出す。

「……仙台の政府は何やってんだ」

 

次の瞬間、紗栄の瞳から涙がこぼれ落ちた。

「お母さん達、あんなに大変なのに……今まで忘れてた……」

嗚咽が漏れ、肩が小刻みに震える。

 

保科は黙って近づき、彼女の頭を軽くポンポンと叩いた。

「それだけ必死だったんだ。……お土産、いっぱい持って行こうぜ」

 

「……うん」

紗栄は赤くなった目を手の甲で擦り、泣き笑いの表情を見せた。

「そうと決まれば、準備しなきゃ!」

そう言って、先ほどの涼介のように勢いよく部屋を出て行く。

 

開けっぱなしになったドアを見つめながら、保科はふっと苦笑した。

「……やっぱり似た物兄妹だな」

 

だが次の瞬間、笑みは消え、表情は引き締まる。

視線を机上の命令書に落とし、低く独り言を漏らす。

「……今の政府の現状を、その目で見に来いってことか」

 

その声も、険しい表情も、誰の目にも触れることはなかった。

窓の外、夕陽はゆっくりと沈み、明日の出発を告げるかのように西の空を紅く染めていた。

 

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