Muv-Luv Alternative:Red Cygnus 血染めの白鳥達   作:NageT

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第八十話 深淵を覗いた決意

隼人を見えなくなるまで見送り、やがて、涼介と紗栄は重い足取りでヘリポートへ向かう。

「チッ、どこもかしこも、初めて来たけどよ、後方ってどこもこんな感じなのか?」

涼介が舌打ちしながら歩く。

辺りを見渡しても胸糞悪い効果が目に入る

キャンプの外れを抜ける途中、また目に飛び込んでくるのは、腐敗の象徴のような光景ばかりだった。

「紗栄がいた頃も物資は少なかったけど、ここまで酷くなかった……」

泥にまみれた子どもが、壊れたバケツを抱えて水の列に並び、その前に立ちはだかる帝国軍兵士に蹴り飛ばされる。

老人は地面に転がったまま起き上がれず、誰も助けない。

一方で、国連軍兵士のテントからは笑い声と女の悲鳴が混じって漏れ聞こえてくる。

皆、諦めに似た表情でただ生きているだけだった。

 

涼介は唇を噛み、血の味を感じた。

紗栄も、拳を震わせながら前を見据える。二人とも先ほど保科に言われた言葉――「絶対忘れるな」が、頭の奥で何度も繰り返し響いていた。

 

「……忘れられるわけねぇだろ……」

涼介が吐き捨てるように呟くと、紗栄が静かに頷いた。

「これを見て、変われなかったら……軍人なんてやめた方がいい」

その声には、妹らしい優しさではなく、鋼のような決意が宿っていた。

 

ヘリポートに着くと、整備兵が黙々とヘリの点検をしていた。

冷たい風が吹き抜け、遠くの空に雲が流れていく。二人は無言のまま、搭乗準備のために並んだ。

 

しばらくして、保科が戻ってくる。

その顔は、表情を作ってはいるが、どこか無理に平静を装っているようにも見えた。

 

「兄貴……」

涼介は口を開きかけたが、何を言っても意味がないと感じ、飲み込む。

 

「待たせたな、行くぞ」

短い一言で、保科はヘリに乗り込む。兄妹も後に続いた。

 

ローターが回転を始め、砂と埃が舞い上がる。

キャンプの全景が視界に広がる――汚れたテントの群れ、並ぶ列、俯く顔、怯えた子ども。

 

やがてヘリが浮かび上がる。

涼介は最後まで視線を外さなかった。紗栄も同じだった。

保科は窓の外を見つめたまま、何も言わない。だがその横顔には、硬く結ばれた唇と、奥底で燃えるような光があった。

 

「……絶対に変えてやる……こんな腐った世の中……」

誰に聞かせるでもないその保科の呟きは、ローター音にかき消され、空へと消えていった。

 

絶望に支配された難民キャンプを飛び立ち彼らはまた戦場に帰る。

その戦いが何を意味するのかはまだわからない。

彼らの戦いが救いである事を切に願う。

 

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