Muv-Luv Alternative:Red Cygnus 血染めの白鳥達 作:NageT
長岡基地、整備区画。
うなりを上げて戻ってきた不知火壱型丙が次々とカタパルトから格納庫へ滑り込む。焼け焦げた装甲、弾痕の残る機体。だが幸いにも、レッドキグナス中隊は全機帰還を果たした。
機体ハッチが開き、汗と火薬の匂いをまとった衛士たちが地上に降り立つ。
「……ふぅーっ、生きて帰ってきたな」
最初に口を開いたのは雁部だった。いつもの調子で髪をかき上げると、大きく伸びをする。
「おいおい、最後の突撃んとき、俺の横を通り過ぎてったの誰だ? あんなスピードで飛ばれたら、バカヤベーことになるぜ」
「へっ、俺だ俺!」
胸を張ったのは涼介だった。顔は汗で汚れていたが、勝ち誇ったような笑みを浮かべている。
「BETAの群れに突っ込むなら、派手にやらなきゃな!」
「鍋島中尉は派手すぎなんですよ」
小川が強化装備の襟元を緩めながら愚痴る。
「おかげで俺がカバーに回って弾切れ寸前ですよ」
「ははっ、それでこそ小川だろ? 堅実なお前がいてくれるから俺は突っ込めるんだよ!」
涼介の軽口に、小川は口を尖らせながらも「……ったく」と肩をすくめた。
整備員たちが手際よく機体をチェックする間、富田と岸本も加わってきた。
「俺なんて、鍋島の後始末で何度引き金引いたと思うっけね? 指がつるかと思ったっけね」
富田が苦笑する。
「お前ら二人が暴れると、こっちはついていくだけで精一杯だ」
岸本はをため息を吐きながらその場に座り込み、息を整えていた。
「そういうこと言うなって。俺は信じてるんだぜ? 後ろに兄貴も、みんなもいるってよ」
涼介が声を張ると、格納庫の奥から隼人が現れた。
「……チビ兄、信じるのはいいけどもう少し考えて動いてよ」
紗栄は汗を拭いながら涼介を睨む。
「そうですよ!、危なっかしい動きするたびにこっちはそれに合わせて着いたかないといけないんですから」
松原もジト目で涼介を見ながら愚痴が止まらなくなる。
「お前らがフォローしてくれるって分かってるからな!」
「……分かって言うな。余計に腹立つ」
前園のため息に、周囲から笑い声が漏れた。
そこへ、少し遅れて保科が降りてきた。中隊長の姿を見て、全員が自然と背筋を伸ばす。
「ご苦労だったな。……全員、無事で何よりだ」
その一言に、仲間たちの間に安堵が広がる。
しかし保科の視線はすぐに鋭さを取り戻した。
「反省点は山ほどあるが、突撃バカのA小隊のフォローから連携まで、各々が役割を真っ当出来ていたと思う。」
全員が苦笑いしながら、A小隊の面々を見る。
A小隊の涼介、松松コンビ、雁部は笑っていたが。
「みんながいるから俺らは安心して突っ込める。それは忘れちゃいねぇよ」
涼介の言葉に保科が目を向けると、涼介は続けた。
「今まではただ突っ込むだけだったが、みんながフォロー入れてくれるタイミングも最近はわかる様になってきてるし、孤立するような真似はしてねぇと思う。でも……たまに、熱くなっちまったら助けてくれ」
真剣に自己分析をする涼介だったが最後は舌を出しておちゃらける。
やがて保科が歩み寄り、涼介の肩を軽く叩いた。
「だが、お前の突撃が突破口になったのも事実だ。A小隊が押し上げる分俺たちは周りを見る余裕もできるしな」
涼介が顔を上げる。保科は真剣な眼差しを向けていた。
「衛士は衝動で動いてはいけない。だが誰かが先頭に立っていかなければ戦線は維持できない。今日のお前は、その両方を示した」
涼介は照れくさそうに笑い、拳を握りしめる。
「珍しく褒めるじゃねぇか兄貴」
「ああ」
保科ははっきりと告げた。
「涼介。お前はもう、一人前の衛士であり、部隊の要だ」
格納庫の空気が変わった。小川が口元を緩め、雁部が「ようやく言ってもらえたな」と笑う。小川と岸本は頷き合い、富田は黙って涼介の背を叩いた。
涼介は唇を震わせながらも、誇らしげに笑った。
「……へへっ。よっしゃ!これからももっと突っ込んでやらぁ!」
「おい、だから突っ込むなって言ってんだろ!」
隼人の叱声が響き、仲間たちの笑いが再び格納庫に広がった。