出走前 控室
「トレーナー君。少しいいかな?」
「ん?このDIOに…何か用か?」
「ああ、決勝戦出走前に話をしたくてね」
「ほほう、七冠ウマ娘であるあのシンボリルドルフが、このDIOと試合前に話をしたいと?」
「揶揄わないでくれトレーナー君」
「ふんっ、まぁいいだろう。そろそろパドックに行く時間だから手短にしろ」
「ありがとう。すぐに済むさ。1つだけお願いを聞いて欲しいのだが、どうだろう?」
「お願い…だと?」
「…スカウトの時、私の夢である【全ウマ娘の幸福】に対して君が言ってくれた言葉をもう一度聞かせてくれないか?」
「あの3年前の言葉をもう一度か…。
…フフ、ハハハハハハハハハハハハハハハ!いいだろう!ではその大きな耳でよく聞くといい!!!」
「人間は誰でも不安や恐怖を克服して安心を得るために生きる」
「名声を手に入れたり 人を支配したり 金もうけをするのも安心するためだ。
結婚したり 友人をつくったりするのも安心するためだ。
人のために役立つだとか 愛と平和のためにだとか すべて自分を安心させるためだ。
安心を求める事こそ人間の目的だ」
「……ありがとう、トレーナー君。今でも私はあの時君を選んだのは間違いじゃなかったのだと断言できる」
「少し違うぞ、ルドルフ。お前がおれを選んだのではない!このDIOが‘皇帝’シンボリルドルフを選んだのだ!」
「ふふっ、そうだったな。っと、そろそろ時間だな。それではトレーナー君、行ってくるよ」
「皇帝の名に恥じぬ振る舞いを心がけろ」
「わかった。期待しててくれ」
〜 〜
『ーー中山の直線は短いぞ!後ろの子達は間に合うか!?
!シンボリルドルフが外から上がってきた!今先頭を抜きその差を少しずつ広げていく!』
「はあああーーーー!!!」
『シンボリルドルフ先頭!シンボリルドルフ先頭!残り200!…100!勝ったのはシンボリルドルフ!!!URAファイナルズ優勝を手にしました!2着はーー』
〜 〜
控室 勝利後
「フン、勝って当然だ。…だが、少しは骨のある相手だったようだな」
「君の言うとおりだったよ。勝利のあと、不思議と心が静かなんだ。満たされているというか、安心しているというか…」
「安心…フン、くだらん概念だ。だが…そのくだらんもののために、人は命すら懸ける」
「君の言葉、私の中で生きているよ。あの時、あの瞬間。君にスカウトされたあの日のことを、今日の勝利でようやく証明できた気がする」
「違うな、ルドルフ。お前は“証明”などしていない。“証明”とは、他者に認めさせる行為だ。だが、皇帝たる者、自らを示すだけでいい。お前はそれを果たしただけのことだ」
「……ふふっ、言ってくれる。だが、今夜はこの勝利にだけは、少し酔わせてくれ」
「構わん。だが明日になればまた走れ。皇帝に安息はない。……“神話”を刻むにはな」
「了解だ、トレーナー君。君となら、私はその先へ行ける気がする」
〜 〜
次の日 朝 トレセン学園食堂
「……トレーナー君、これは一体……?」
「見てわからんのか。朝食だ。“皇帝”には相応の栄養が必要だろう」
「いや、これは明らかに量が……常軌を逸していると思うのだが?」
「フハハハハハ!貴様のような栄光を背負う者には、食卓すら“神話級”でなければならん!!」
「……この山盛りオムレツ、何個分だい?カロリーだけで私の1日分を超えている気がするのだが」
「気にするな!トレーニングで帳消しになる!なに、トレーナーであるこのDIO自ら作ったものだ。残さず食え」
「いや、私の意思はどうなるんだ……。って、これは……意外に、悪くない味だな」
「当然だ。素材はすべて“選び抜いた者たち”……このDIOの手により仕入れた一級品だ」
「ふふっ、相変わらず突き抜けているな君は。でも、まあ……ありがとう。昨日の勝利を君と迎えられて本当に嬉しかったよ」
「礼などいらん。“当然”の結果を迎えただけだ。むしろ、喜ぶのはこれからだ」
「……と言うと?」
「本日のメニューだ。“坂路特訓200本”に“砂浜インターバル走”に“DIO式メンタル鍛錬”が待っている」
「……待ってくれ。それは一体何時間分のトレーニングなんだ?」
「24時間だ。安心しろ、休憩は許可する。水分補給も許可する。“皇帝”には死すら鍛錬の糧となるのだ!」
「ま、待てトレーナー君!私は皇帝であって、戦闘民族ではないんだぞ!?一晩でサイヤ人になれとでも!?」
「問答無用!このDIOが選んだ限り、お前には限界という概念は存在しないッ!」