見せ場だけ書くように徹しているとめっちゃ楽しいし書きたいところばっか出てきて困っちゃうくらい
それではお待たせ致しました!
シンクロ次元編、スタートです!!
「だから早えーよホセ」
少年よ、これが天丼だ
「ど、どうかなさいましたか?」
「いえ、なんでもありません」
不貞腐れたような呟きを拾われたIVは爽やかな好青年の表情でボーイに応対し、ドリンクを受け取った後にチップをサービスして退室させると、ペントハウスの中で再びため息を吐いた
何も知らない或いは分からない読者諸氏の為に順を追って説明しよう
まず、次元転移をしたランサーズは大まかに3組に別れてシンクロ次元“シティ”に辿り着いた
遊矢、沢渡、セレナ、零羅のAチーム。権現坂、デニス、遅れて合流した黒咲のBチーム。そして、IVは零児、月影、バレットらCチームと共にシンクロ次元に転移した
Aチームは現着するなりセキュリティ(シンクロ次元における警察機構『治安維持局』の実行部隊)に囲まれ、人違いで逮捕されそうになるものの、シンクロ次元の住人“クロウ・ホーガン”に助けられ事なきを得た。そのまま彼らに匿われながら情報収集をしつつ他の者と合流しようとした矢先、再びセキュリティに囲まれる。今度はより充実した装備で敵の数も多かった為、クロウとその仲間も含めて遊矢達はセキュリティに捕まり、強制収容所に送られてしまった
一方、街中近くに跳ばされたBチームは、情報収集目的で人を集める為にエンタメデュエルを開始。これを見ていたギャラガーと呼ばれる怪しい男の誘いで、闇賭博の地下ライディングデュエル(Dホイールと呼ばれるバイク型の乗り物に乗りながらデュエルする、シンクロ次元特有のデュエル)に参加。先に侵入していた黒咲とライディングデュエルをする事になったデニスだが、セキュリティの介入によって水入りとなり、そのまま遊矢達と同じ強制収容所に送られる事となった
ここで合流を果たしたA、Bチームは、強制収容所の元締めである“徳松長次郎”に目をつけられる。10年無敗を誇る、運を捨てた長次郎のデュエルに苦戦する遊矢だったが、エンタメデュエルでかつて“エンジョイ長次郎”と呼ばれていた彼の燻っていた心に火を付けた。長次郎本来の運否天賦に委ねたデュエルは凄まじい爆発力で遊矢を追い詰め、しかし遊矢はペンデュラム召喚による逆転勝利の果てに長次郎と和解した
そして紆余曲折を経て遊矢達は長次郎と共に脱獄を決行。事前に脱獄を予測していた治安維持局長官“ジャン・ミシェル・ロジェ”によって脱獄は失敗。再び収容所に入れられそうになるが、ここでCチームが数日掛けて接触したシティの最高権力『行政評議会』が介入し、遊矢達を保護したことで事なきを得た
しかし、ここでロジェは融合次元、アカデミアの危機とランサーズの実力を疑問視する評議会の面々に対してある提案を出す。それこそ、シティの住民達の融和を目的とした大規模ライディングデュエル大会「フレンドシップカップ」にランサーズを参加させ、彼らの実力をその目で確かめる、というものだった……
結果、フレンドシップカップにランサーズは参戦が決定。大会中も評議会から保護という名目で軟禁を強いられ、IVは退屈していたのだった。まあ、治安維持局による捕縛もといロジェの命令による拉致監禁を防ぐ目的故に、IVも文句自体はなかったが
とにもかくにも、シンクロ次元における一大イベントまで辿り着いたIVだったが…
(『シティは1つ、みんな友達』ねぇ)
フレンドシップカップが掲げるスローガンに対して、IVは最大級の嘲笑と侮蔑と共に鼻で笑った
シティは、シンクロ次元全体の1%が富を独占する裕福層“トップス”と、残る99%の明日を生きる事にすら苦心する貧民層“コモンズ”という住民で成り立つ、階級差別が著しい超競争社会だ
10年前まではエンジョイ長次郎がコモンズを纏めていた事もあってそこまで確執は大きくなかった。が、そんな彼を気に入らないトップスが長次郎を陥れたことにより彼はデュエルを楽しむ心を捨て、己の進退を掛けたデュエルでイカサマを断行。しかしイカサマがバレてしまった長次郎は逮捕され、この事件をきっかけにトップスとコモンズの溝はより深く、大きいものとなった
そんなコモンズ達のガス抜きを兼ね、トップス達に娯楽を提供する目的で始まったのがこのフレンドシップカップだ。それどころか、この大会の敗者は皆シティの地下にある強制労働施設に送られる事から、真実を知る者からすれば、掲げているスローガンなど欺瞞もいいところであった
状況から見て分かるように、フレンドシップカップにはIVも参加する事になっていた。それに伴いトーナメント表も
権現坂昇vsトニー・シモンズ
榊遊矢vsデュエルチェイサー227
柊柚子vs徳松長次郎
デイモン・ロペスvsセルゲイ・ヴォルコフ
黒咲隼vsクロウ・ホーガン
ユーゴvsセレナ
沢渡シンゴvsシンジ・ウェーバー
IVvsデニス・マックフィールド
まず最大の相違点として、月影の代わりにIVが参加している点だ。その月影は既にシティの隠密調査を行っていて、バレットは監視も兼ねて零児と共にいる。この影響か原作とはデュエルする相手が変わっていたり、本来対戦するタイミングが前倒しになっていたりと、幾つかの相違点があった
ちなみに昨晩、前哨戦として遊矢がキング“ジャック・アトラス”の指名を受けてライディングデュエルをし、ジャックの宣言通り3ターンで決着がつき遊矢は敗北したのだが、出てくるモンスターの差異こそあれど原作通りの流れなので割愛する
そして誰が勝ち上がったのか…これも順に説明していこう
まず権現坂とトニー
トニーはクロウの友人である“シンジ・ウェーバー”の仲間だが、漢の真剣勝負に手抜きは無礼!と考える権現坂は全力でデュエルし、無事勝利を収めた
次に遊矢とロジェが放った刺客デュエルチェイサー227とのデュエル
「ゴヨウ」モンスターで次々と遊矢のモンスターを奪い、ロジェが与えた融合モンスター「ゴヨウ・エンペラー」によって「オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン」も奪われ絶体絶命のピンチに陥る遊矢であったが…そんな遊矢を逆転勝利に導いたのは、IVも予想してないモンスターだった
「レベル2の「EMヒックリカエル」に、レベル3の「
「集いし星が、新たな力を呼び起こす!光さす道となれ!」
「シンクロ召喚!!」
「いでよ「ジャンク・ウォリアー」!」
『ハァァァ……! ハァーッ!!』
ジャンク・ウォリアー
レベル5 ATK2300
『なんとぉー!?榊遊矢選手、ペンデュラム、エクシーズといった未知のモンスターに引き続き、シンクロモンスターも呼び出したぁー!!…で、でも「ジャンク・ウォリアー」?シティなら誰もが知っている基本中の基本のシンクロモンスター、あまりに普及しすぎてシティの色んな所で拾うことすら出来るノーマルモンスターを…この土壇場でぇ?』
解説の言うように、このカードは遊矢がクロウに匿ってもらっていた時に「ジャンク・シンクロン」と一緒に拾ったカード。それがこんな土壇場で使う事になるとは、遊矢自身も思っていなかった
『ふざけるなー!!』
『そんなクズカードより、ペンデュラムとかエクシーズとかをもっと見せろー!』
『いいぞー!遊矢ー!』
『コモンズの象徴のカードで、デュエルチェイサーなんかぶっ倒しちまえー!!』
トップスからの自分勝手なブーイングと、コモンズからの見当違いな声援を浴びせられて、嫌な汗が背中でじわりと浮き上がる
エンタメデュエルの時とは違う種類の歓声に戸惑う中、デュエルチェイサーの蔑む声が響く
「血迷ったか!そんなクズモンスターをこの「ゴヨウ・エンペラー」の前に出すなど!クズがいくら力を合わせたところで、強大な権力に敵う道理などないのだ!!ハハハハハ!」
「俺の…俺の仲間達をクズ呼ばわりするのは許さない!!「ジャンク・ウォリアー」のモンスター効果!「ジャンク・ウォリアー」がシンクロ召喚に成功した時、俺のフィールドにいるレベル2以下のモンスター全ての攻撃力を、「ジャンク・ウォリアー」の攻撃力に加える!俺のフィールドには攻撃力600の「チアモール」が1体!「ジャンク・ウォリアー」は600ポイント攻撃力がアップ!『パワー・オブ・フェローズ』!」
ATK2300→2900
「それでも私の「ゴヨウ・エンペラー」には届かない!攻撃力を上げても無駄だったな!」
「それはどうかな?」
「何だと?」
「「ゴヨウ・エンペラー」に届かなくてもいい。攻撃力を上げることそのものが重要なんだ!「EMチアモール」の効果発動!「チアモール」の効果は攻撃力が変動しているモンスターを対象に発動でき、その攻撃力の変化に1000ポイントを追加することが出来る!」
「っ! つ、つまり、「ジャンク・ウォリアー」の攻撃力は上がっているから…!」
「600ポイントに加え、更に1000ポイント攻撃力がアップする!」
ATK2900→3900
「「ゴヨウ・エンペラー」の攻撃力を上回っただと!?」
(マズい!「ゴヨウ・エンペラー」がフィールドから離れれば、「オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン」のコントロールが戻ってフィールドがガラ空きになり、私は負ける!)
「バトルだ!「ジャンク・ウォリアー」で「ゴヨウ・エンペラー」に攻撃!」
「くっ!」
くず鉄の戦士が空高く飛ぶ。右拳を握り固め、背面のブースターから勢いよくロケット噴射し、捕縛の皇帝に向かって右拳を突きつけ急降下する
「『スクラップ・フィスト』ォ!!」
「ジャンク・ウォリアー」の攻撃が「ゴヨウ・エンペラー」に突き刺さる…観客達がそう思った直後、デュエルチェイサーが通行上に落ちていたカードを拾い、発動した
「アクションマジック「回避」!モンスターの攻撃を無効にする!」
全てを砕く拳はバリアのようなものに阻まれ、「ジャンク・ウォリアー」の攻撃は失敗に終わった
『なんとここでアクションマジック!遊矢選手の逆転の一撃が防がれてしまったー!!』
「惜しかったな!だがこれで私の」
「この瞬間、速攻魔法発動!」
「勝ち………え?」
「「ダブルアップ・チャンス」!モンスターの攻撃が無効になった時、そのモンスターの攻撃力を倍にしてもう1度攻撃することが出来る!」
ATK3900→7800
「こ、攻撃力、7800ッ!?」
「行くぞ!「ジャンク・ウォリアー」で二回目の攻撃!」
「ば、馬鹿な!?」
再び天を舞う「ジャンク・ウォリアー」。その腕は先ほどよりもオーラに満ちていて、赤熱化した拳が唸りを上げて大気を切り裂く
「『ダブルアップ・フィスト』ォ!!」
鉄拳は「ゴヨウ・エンペラー」を跡形もなく吹き飛ばし、デュエルチェイサー227のライフポイントも消し飛ばす
「う、うわあああああ!?!?」
LP3600→0
……まさかあんなに早くシンクロ召喚を体得しているとは、IVも予想外だった。しかも決め手となったのが「ジャンク・ウォリアー」に「ダブルアップ・チャンス」と来たもんだ
こんなもの遊戯王シリーズのファンボーイであるIVからすれば極上のファンサービスでしかなく、思わずモニターの前で絶叫しながら超絶良い笑顔でガッツポーズした程だ。これこれ!これだよ!俺らがARC-Vに求めていたものは!
残る試合だが、柊柚子vs徳松長次郎、デイモン・ロペスvsセルゲイ・ヴォルコフのデュエルに関してはほぼ原作通りと言えよう
続く黒咲隼vsクロウ・ホーガンのデュエル。本来なら2回戦かつクロウの勝利で終わるデュエルだったが、なんと勝利したのは黒咲。どうやったのかは分からないが、試合後に互いに拳を合わせていた所を見るにクロウの中の疑念や蟠りも解けたらしい
そして次の試合…
それはおそらく…いや、間違いなく、もっともインパクトの強いデュエルだっただろう
ユーゴ LP200
クリアウィング・シンクロ・ドラゴン
レベル7 ATK2500
VS
セレナ LP2700
レベル8 ATK2800
レベル10 ATK3500
「俺の、タァーン!!…俺は「SR バンブー・ホース」を召喚!」
玩具をモチーフにした「SR(スピードロイド)」モンスター、生き物のように意思を持った竹馬が出てくる。その「バンブー・ホース」が甲高く吠えると、吹き戻しという笛を持ったデフォルメされた少年が空間の穴から現れた
「「バンブー・ホース」は召喚に成功した時、手札からレベル4以下の「SR」モンスターを1体、特殊召喚出来る!チューナーモンスター「SR
「チューナーモンスター…シンクロ召喚か!」
「………ああ、行くぜ!俺は、レベル4の「バンブー・ホース」に、同じくレベル4の「吹戻童子」で
『!?』
「漆黒の闇の中より、愚鈍なる力に抗う反逆の牙…今降臨せよ!!」
「エクシーズ召喚!!」
「現れろ!ランク4!「ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン」!!」
ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン
ランク4 ATK2500
「何だって!?」
「ユーゴがユートのドラゴンを召喚…!?」
「何故奴が「ダーク・リベリオン」を!?」
ペントハウス内でデュエルを観戦していた遊矢が、柚子が、黒咲が、それを見た感想を口にする
『これは驚き!ユーゴ、ここでいきなりエクシーズモンスターをエクシーズ召喚ー!!』
「エクシーズモンスターだと…!」
「「ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン」の効果発動!ORUを1つ使い、相手フィールドに存在するレベル5以上のモンスター1体を選択し、ターンの終わりまでそのモンスターの攻撃力を半分にし、その数値分、「ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン」の攻撃力をアップさせる!俺が選ぶのは「月光舞豹姫」!」
漆黒の竜の翼についた宝玉が光り始める。すると翼が展開され、そこから迸る紫電が獣人を捕え、パワーを強引に吸い取る
「『トリーズン・ディスチャージ』!」
ATK2800→1400
ATK2500→3900
「残るORUも使うぜ!「ダーク・リベリオン」の効果発動!『トリーズン・ディスチャージ』!」
ATK1400→700
ATK3900→4600
「攻撃力4600!?」
それを見たセレナは、自分が通過する付近に落ちていたアクションカードをキャッチ。拾ったカードが「回避」だった事はセレナの後ろを走っているユーゴにも確認出来た
「バトル!…まずは「クリアウィング・シンクロ・ドラゴン」で「月光舞豹姫」を攻撃!」
(くっ…この攻撃を止めれば、「ダーク・リベリオン」の攻撃が止められなくなり負ける…!ここは受けるしかないか!)
ユーゴの宣言と共に、シティ全体を見渡せるほどの高さまで上昇し、クリスタルのような両翼が翠に光り輝く
「『旋風の、ヘルダイブ・スラッシャー』!!」
そして豪風を纏った「クリアウィング」が竜巻と化して猛スピードで突撃し、「舞豹姫」を破壊した
「ぐうぅぅ…!」
LP2700→900
「こいつで終わりだ!「ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン」で「月光舞獅子姫」を攻撃!!」
効果を使用した時のように翼を展開する「ダーク・リベリオン」。違うのは、先ほどのように紫電を相手に放つのではなく、自らの翼に纏い推力にすることで必殺の一撃を打てるようにする為だ
「アクションマジック「回避」!相手モンスター1体の攻撃を無効にする!」
『ああ〜っと!防がれてしまう!…って、ユーゴ、急加速!?』
「え?」
勝ちを確信していたセレナだったが、解説を聞いてユーゴの方を見れば、既に隣で並走していてコーナーを曲がろうとしていた
オートパイロットモードでは決して有り得ない挙動からマニュアルで操作しているのが分かる。今のスピードのままでは絶対に曲がり切れず、誰もがクラッシュすると思った
「うおおおおおっ!!」
しかし、ユーゴはその並々ならぬ操縦テクニックでコーナーを曲がり切り、減速しないまま走り続け…目的のアクションマジックを確保した
「なっ、しまった!」
「アクションマジック「ノーアクション」!アクションマジックの発動と効果を無効にし、破壊する!」
セレナの発動した「回避」が粉々に砕け散る。そして目の前には、攻撃準備を終えた「ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン」の姿が
「『反逆の、ライトニング・ディスオベイ』!!」
フワリと浮き上がり、そのまま凄まじいスピードで相手モンスターに迫り、顎下先端にある反逆の牙が獅子の女獣人を切り裂いた
「うああああああっ!!」
LP900→0
…と、ユーゴが勝利を得た訳だが、そんな事が霞むほどの情報がこのデュエルで発覚した。即ち、ユートは遊矢ではなく、ユーゴと統合を果たしてしまっていた…という事実だ
とんでもない原作乖離だが、実はIVは何となくこの展開を予測出来てきた
勝鬨戦のリーサルで「オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン」を使った時は遊矢に強く介入した結果かと深く考えてはいなかったが、その後の幾つかのデュエルで出せば勝てる盤面でも頑なに「ダーク・リベリオン」を使わず、黒咲との会話でもユートの消息について言葉を濁していた
遊矢はユートと接触済みで、それでもユートの所在に確信を持てないという事は遊矢の中にユートは存在せず、それでいてユートの消息は不明…すると消去法で大まかに残っている可能性は、ユートが単独でスタンダード次元から去ったか…シンクロ次元でのズァークの転生体である“ユーゴ”に吸収されたか、だ
しかしこうなると、原作知識を持ってるIVをもってしてもこの先の展開が予測出来なくなってきた
遊矢の強さの根幹は、強い感情に呼応して新しいカードを創造するズァークの力に依るところが大きい。そこにユートの悲惨な記憶と怒りの感情を共有することでズァークの力を引き出していた。だがこの世界の遊矢は著しく成長し、ズァークこそまだ残っているものの、感情に振り回されることも少ないだろう
(…ヤバい。ひょっとして遊矢の奴、弱体化してんじゃねえのかこれ?)
「レイジング・ドラゴン」こそあるものの、それだけで勝ち続けられるほどデュエルの世界は甘くない
(もはや祈るしかできねえか…)
コンコン
そう思考の海に溺れようとした時、唯一の扉からノックの音が聞こえきた
『IV様、試合時間が迫っております。私に着いてきて、デュエルの準備を行ってください』
「あぁ?……って、もうそんな時間が経ってたのかよ」
モニターを見れば、大型シンクロモンスターで逆転勝ちしたシンジが勝鬨を上げ、コモンズ達を扇動する姿が見えた
それを静かに見ているIVだったが、無言で扉を開けて部屋を出ると、ボーイに着いていくのだった
『さぁ〜、フレンドシップカップ第一回戦もいよいよ大詰め、最後の試合です!選手はコチラ!“IV”vs“デニス・マックフィールド”!!』
カウガールのような格好をした美女、解説役のMC“メリッサ・クレール”の声に合わせて、2つのDホイールがスタートに着く
IVが着ているライダースーツやDホイールは、白を基調としていながら黒や赤が散りばめられたコントラストのハッキリしたカラーリング。Dホイールの素体は曲線が多く、逆に外装は多角的でこれまた対比の激しいデザインであり、IVは自身にピッタリのDホイールとスーツを用意した人間のセンスを、内心これでもかと言うほど褒め称えた
そんなIVを見て、デニスが話し掛けてくる
「随分楽しそうじゃないかい、IV」
「ええ。はっきりと申し上げますと、今この瞬間、世界中の誰よりも僕はワクワクしてると思っています」
何せライディングデュエルだ
子供の頃、玩具のデュエルディスクを自転車に括り付けてライディングデュエルごっこをしたのが実に懐かしい。あの頃夢見ていた体験が、今まさに叶おうとしている。ワクワクしないはずがない
「ハハ、いいね!楽しいデュエルを期待してるよ、IV」
「ええ、互いに全力を尽くしましょう」
『両者共に称え合いながら、第一回戦最後のデュエルが行われようとしています!それでは、カウント開始!』
メリッサの掛け声で、赤いシグナルが点灯し始める
『3…』
『2…!』
『1ッ!』
「「ライディングデュエル…!」」
点灯していたシグナルが、青色に変わった
「「アクセラレーションッ!!」」