ファンサービスは僕のモットーですから   作:ジャギィ

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第15話

『デニスが召喚したのは、なんとレベル10!攻撃力4500の超大型モンスター!!』

 

「IV…」

 

ペントハウスの中で、そのデュエルを静かに見ていた黒咲が呟く。彼の脳裏に、シンクロ次元に飛び立つ前の記憶が蘇る…

 

 

『本当のスパイだと?』

『そうだ。IVが捕獲したオベリスク・フォースから吐かせた情報が事実ならば、IVの情報と共に我々の情報を流したアカデミアの間者は別にいる。むしろ紫雲院素良の軽率な行動を考えれば、彼は本命のスパイを隠す為の囮だった可能性すら出てくる』

『そして俺の情報は社長の所でしか扱ってねえ…となれば、その裏切り者は社長のお膝元で悠々と諜報活動を勤しんでた事になるなぁ』

『なんだと!おのれ…!』

『こいつは俺がリストアップした、特に怪しいと思う経歴の連中だ。主に海外出身の奴らだな』

『もう用意してるのか…随分と早いな』

『たりめえだろ。赤馬零王が何故、俺の情報だけをピックアップして襲撃を指示したのかは分からねえが……関わった奴らは全員潰す。必ずケジメをつけさせる……』

『…!』

『そして赤馬零王はそれだけじゃ済まさねえ…!奴の野望も…希望も…ありとあらゆる望みを断ち切って、生き地獄に叩き落としてやる…!!』

 

 

オベリスク・フォースと戦った時の激しく燃え盛る怒りとは違う、嵐の前の静けさ。滲み出る憎しみは、たった1人の人間を破滅させる為だけに常に研ぎ澄まされている。それは、人形デュエル塾襲撃の原因の1人とデュエルしている、今この瞬間にもだ

 

思うところが無いわけではない。本音を言えば今すぐにでも戦っているIVと入れ替わってほしいほどだ。しかし、今回の一件では自分以上の感情を抱いている、他でもない当事者のIVが己を抑えてデュエルしているのだ。ならば自分が暴走するのは筋違いだと黒咲は考える

 

「任せたぞ……IV」

 

故に、黒咲は信じた

 

次元を越えた先で最初に出来た仲間の…友の勝利を、黒咲は信じることに決めた

 

 

 

「やれ、「混沌巨人」!!そのデク人形共を粉々にしてやれ!」

 

その号令を認識した「混沌巨人」は、緩慢だが巨体故の素早さであっという間に「シリアルキラー」の全身を片手で掴む

 

ミシミシと音を立てる金色の人形の姿に、IVが苦悶の声を上げてるようにすら感じたと思うのも束の間、「混沌巨人」はそれを観客席の背後にある巨大な壁面に勢いよく投げつけた。壁を粉砕しながら会場の外に投げ出された「シリアルキラー」はシティの上空で光の粒子に還元された

 

そして、観客席を囲う壁が壊れたということは…大量の瓦礫が観客席に降り注ぐことを意味する

 

『ああっ、瓦礫が!!皆逃げてー!!』

 

メリッサの言葉に瓦礫が降り注ぐ近辺にいた人々は逃げ始めるも、逃げ遅れた人々を巨大な影が覆う

 

「きゃあああああっ!!!」

 

瓦礫に潰され、真っ赤な花が咲く…観客の誰もがそう思った

 

「……? え…?」

 

しかし、逃げ遅れた人達は誰1人犠牲になっていなかった

 

それもそのはず、無造作に落下してきた全ての瓦礫が、空中で静止していたのだから。その天辺では、大量の糸がハイライトで煌めき、幾重の光の線となって夜を彩っていた

 

『が、瓦礫が浮いて…?あれって、糸…?』

「そらっ!!」

 

そんな中、手の甲で紋章を紫色に光らせている右手をIVが勢いよく振るった

 

すると、同じモーションで「ヘブンズ・ストリングス」も剣を振るい、それに合わせて()()()()()()()()()()()()が会場の中心部に向かって隕石のように降り注ぎ、最悪の事態は未然に防がれた

 

『ひょ、ひょっとして、IVが助けてくれたって事…?…もしかすると、IVって良い人なの…?』

 

メリッサがそんな呟きを漏らす中、IVは事の発端であるデニスに向かってキレた

 

「テメェ何考えてんだッ!?俺が介入してなきゃどれだけの人間が死んだと思ってやがるデニス!!」

 

それに対してデニスは飄々と答える

 

「スリルを味わってもらうのも手品の醍醐味だよ。それに君がファンを傷つけない人だっていうのは知っていたからね、必ず守ると思っていたさ」

「!! …………こいつ……」

「さあ、狩りの続きといこうか!「古代の機械混沌巨人」は全ての相手モンスターに1度ずつ攻撃できる!!続けて「ヘブンズ・ストリングス」を攻撃!」

 

次に「ヘブンズ・ストリングス」を掴み、空高く掲げる機械巨人。狙いは…あろう事かIVそのもの

 

「お望み通り、今度は観客席を狙わないでやるよ…「混沌巨人」!」

「チィッ!!」

 

後方から悠々と指示を飛ばし、前を走るIVに向かって「混沌巨人」が天からの使者を投げ飛ばした

 

『ちょっと、やり過ぎじゃない!?これ、怪我とかじゃ済まないんじゃ…』

 

メリッサがIVの安否に不安を覚える中、砂塵と瓦礫の中からしがみつくようにIVが乗っているホープ・トゥ・ディスペアーが投げ出された

 

『ああ良かった!生きてるわ、IV!でもDホイールごと投げ出されてしまっている!クラッシュ確定か!?』

 

誰もがIVのクラッシュを想像した中…紋章が強く輝く

 

Dホイールのオートパイロットモードの画面にノイズが走り、代わりに紋章が浮かび上がる。すると機械では決して有り得ない、まるで猫のような姿勢制御を空中で行い着地。降り注ぐ瓦礫もドリフト、ターン、バック走とあらゆる走行テクニックで回避し続け、IVは何食わぬ顔でデュエルに復帰した

 

「何!?」

 

その華麗な操縦技術に観客達は沸き上がり、冷静な者達はIVの操縦に驚愕し、或いは感嘆していた

 

『う、うっそぉ…?何あの動き…本当にライディングデュエル初心者?』

 

無論、これはIVの素の技術によるものではなく、紋章の力でDホイールのシステムをハッキングした事で可能となった動きである。頭の中で思い浮かべた動き通りに動くDホイールにしがみつけさえすれば、後は自動的に動いてくれるというカラクリだ

 

「っと…!「ヘブンズ・ストリングス」のORUとして墓地に送られた「ブラッディ・ドール」は手札に戻る」

「カードを1枚伏せて、ターンエンド。…やるねIV。まさかあんな動きが出来るなんて思ってもいなかったよ」

「お褒めに与り光栄…とでも言っておこうか?デニス」

「正直に言おう。君は今までボクが見てきた、戦ってきた中で、1番のエクシーズ使いだ……」

 

そしてデニスはIVがカードをドローした瞬間…セットしたカードを発動した

 

「俺のターン、ドロー!」

「だからこそ、君は終わりだっ!永続罠「サモン・リミッター」を発動!!」

「「サモン・リミッター」だと!? っ…!!」

 

予想外のカードを使われた事でIVが驚愕する中、両者のDホイールの間に、網の目とも蜘蛛の巣とも言えるような紋様が浮かび上がる

 

「この永続罠がフィールド上に存在する限り、ターンプレイヤーは召喚・反転召喚・特殊召喚を合計2回までしか行えなくなる!」

『ちょ、ちょっと待って!2回しかモンスターを召喚出来ないって…それってシンクロ召喚やエクシーズ召喚が出来なくなるじゃない!』

 

そう、メリッサの言う通り、2回しか召喚・反転召喚・特殊召喚出来なくなるという事は、召喚するのにフィールド上のモンスターを2体以上必要とするシンクロ・エクシーズ召喚に対して非常に強い制限を掛けられることを意味していた。無論すり抜ける方法も幾つかあるにはあるが…その手段がかなり限られているのもまた事実だった

 

 

「シンクロ召喚やエクシーズ召喚には強い制限を掛けられる…でも…」

「融合召喚は連続召喚を必要としない…!」

「俺が生み出したペンデュラム召喚がなければ、あのカードが出ただけで融合使いの独壇場になる…!」

「対シンクロ・エクシーズのカード…アカデミアの決闘者でなければする必要のない対策…」

 

 

『フィールドには攻撃力4500のモンスター!更にエクシーズ召喚も封じられて、絶体絶命のIV!!このままデュエルの決着が着いてしまうのか!?』

(それだけじゃない。更にボクのフィールドには3回まで効果によるダメージを無効化できる「ハット・トリッカー」も存在している。万が一「サモン・リミッター」を破壊出来たとしても、お得意のバーンも通じない以上、IV、もはや君に為す術はない)

 

さて、デニスの考えるようにIVに為す術がないのかというと…そんな事はなかった

 

IVは自分の手札を見た。あるのは先程手札に加わった「ギミック・パペットーブラッディ・ドール」にドローカードの「ギミック・パペットーギア・チェンジャー」、元々あった「手札抹殺」「ギミック・パペットーリトル・ソルジャーズ」そして…「ジャンク・パペット」の計5枚

 

(俺のEXデッキにはもう1枚の「シリアルキラー」がある。「ジャンク・パペット」でランク8の「ギミック・パペット」を蘇生して、それをトリガーに墓地の「アージェント・カオス・フォース」を回収、「アージェント・カオス・フォース」で2体目の「シリアルキラー」を呼び出して「サモン・リミッター」を破壊する

 

「サモン・リミッター」の制限が無くなればこっちのもん。「リトル・ソルジャーズ」で「ビスク・ドール」を墓地に落としてレベル8にし、墓地の「ビスク・ドール」を除外することでアクションカードによる妨害をケア。「ブラッディ・ドール」でデッキの「カトル・スクリーム」と共に特殊召喚、「ファンタジクス・マキナ」をエクシーズ召喚して効果で2枚目の「RUM」をサーチ、「ネクロ・ドール」なり「カトル・スクリーム」なりを出して「ヘブンズ・ストリングス」の召喚まで漕ぎ着けば、後はカオス化させてリーサル……)

 

頭の中で展開を広げ、勝利への道筋を即座に組み立て

 

 

(だが俺のファンサービスは、んなクソつまんねえ勝ち方なんざしねぇんだよ!!!)

 

 

IVはそれを即座に切り捨てた

 

「テメェも憐れなもんだぜ」

「っ……どういう意味だい?」

「デュエルに勝つって意味でも、お望みのエンタメを続けたいって意味でも、こんなガラクタを出さずにテメェのデュエルを続ければ俺に勝てたかもしれねえってのによ」

 

「ギミック・パペット」は「Em」…というより「トラピーズ・マジシャン」が()()()()()()()()()()()()()()()との相性が致命的なほど悪い。それこそ、そのモンスターをフィールドに維持され続けただけで引き次第では完封されかねないほどに

 

IVの情報を流したのならば、当然デニスも「ギミック・パペット」デッキの特性は知っているし、その相性差にも気づいているだろう。それでも尚、デニスが「混沌巨人」を召喚した理由は?

 

「テメェはな、負けたがってんだよ。いや、正確にはアカデミアに逆らえない自分自身を終わらせたがっている…ってとこか」

「負けたがってるだって…ボクが…?…バカバカしい!たった1回のプレイングミスで」

「さっき発動した「サモン・リミッター」だってそうだ。俺が2回モンスターを召喚してから発動しておけば、俺は何も出来ずにターンを終了するしかなかったんだぜ?」

「……!!」

『あっ!た、確かに…!』

「お前は無意識に、心のどこかで期待してんだよ、自分が負ける事を。心の動きはプレイングに反映される…お前ほどのデュエリストがこんな露骨な凡ミスをして、負ける気がないってのは無理があるもんだぜ」

 

プレイングミスを細かく指摘されて表情を強ばらせるデニスに、IVは追い打ちをかける

 

「おっと、今こう考えているな。『アカデミアに所属する自分がわざわざ負けてやる理由がない』ってな」

「な…!?」

「それだって簡単に推測出来る。ようは…お前は罪の意識に耐え切れなくなったんだよ」

「罪の意識だと!」

 

実際は前世の記憶から知識として知っていただけなのだが、その事をおくびにも出さずにIVは嘯く

 

「榊遊勝のデュエルは衝撃だったか?エンタメデュエルを真似してみた感想は?人々を自分の手で笑顔にする度、楽しくて嬉しくて仕方がなかっただろう?」

 

「そしてデュエルの楽しさに目覚めれば目覚めるほど、アカデミアの所業に加担している本当の自分が醜くて惨めで仕方なかったんだよなぁ!?」

「ぐっ…ううう……っ!!」

「だがアカデミアという強大な組織に逆らう事だけは決して出来ない。結果…恐怖と罪悪感の板挟みになる憐れな男が誕生したって訳だ…反論があるなら聞いてやるぜ?デニス君?」

 

黙りこくるデニス。しかし何かを思い返したかのように目を瞑ると、意を決した表情で言い返す

 

「…全くもって違うねぇ。罪悪感?そんなもの、ある訳ないじゃないか!」

「ほう?」

「理由を教えてやるよ。加担してるなんてもんじゃない、アカデミアによるハートランドへの侵攻作戦…その攻撃のGOサインを出したのは、他でもないボク自身なんだよ!!」

 

それをモニターで聞いていたランサーズの面々は絶句する。特に故郷を焼き払われた黒咲は、憎悪が籠った眼光でモニターの睨みつけたほどだ

 

「分かったかい?罪悪感なんか抱くわけがないんだよ。エクシーズ次元の人間がどれだけ犠牲になろうと、ましてや君の家族が理不尽に傷つけられようと、ボクには知ったこっちゃないんだからさぁ!」

「演技が下手だな、デニス」

「は…?」

「口元、笑ってねえぜ」

「!?」

 

思わず口元を押さえるデニス。しかし、その口角は間違いなく上がっていた

 

「マヌケは見つかったようだな」

「!! 君、このボクにブラフを…!」

「アカデミアのせいにして命乞いはせず、黙ってた方が良い事を言ってでも、あくまで悪党としての報いを受ける、か……デニス、テメェまだ救いがあるぜ。少なくともあのクソ野郎(赤馬零王)クズ(オベフォ)共に比べればなぁ!」

 

さっき「シリアルキラー」を観客席に向かって投げつけた時もそう。わざわざIVが救出できるルートを通れるような場所に投げつけていた事を、IVはデニスの言葉で気づいた。アカデミアの尖兵として見れば矛盾している行動だ

 

傷付けたくないという心と傷付けなければならない立場…その二律背反の表れをその目で何度も見たからこそ、IVは言ったのだ。「憐れ」だと

 

「罰が欲しいってんならくれてやる!エクシーズ次元の、黒咲の、そしてこの俺の怒り!!とっておきのファンサービスに乗せて、テメェにぶつけてやるぜ!!」

 

言葉は尽くした。後は希望を与え、そしてそれを奪うファンサービスを行うだけ!

 

「マジックカード「ジャンク・パペット」!墓地の「ギミック・パペット」モンスター1体を特殊召喚する!」

「「ブラッディ・ドール」じゃない…!?」

「蘇れ、「ヘブンズ・ストリングス」!そして「ギミック・パペット」エクシーズモンスターが特殊召喚された時、墓地の「RUMーアージェント・カオス・フォース」の効果発動!デュエル中に1度だけ、このカードを手札に戻す!」

「なんだと!?…ハッ!」

(もし2枚目の「シリアルキラー」がIVのデッキにあれば「サモン・リミッター」を破壊出来る!まさかそれを狙って…!)

「焦るなよデニス…俺の本当のファンサービスはこれからだ!カードを1枚伏せ、「手札抹殺」を発動!」

 

そして、このタイミングで発動された「手札抹殺」に疑問を抱くデニスに、メリッサや観客も含めて説明する

 

「分からねえ奴らの為に教えてやる。手札の「リトル・ソルジャーズ」や「ブラッディ・ドール」、「RUM」を使えば、ここで「手札抹殺」を使うよりももっと確実な方法でデニスのライフを0にする事が出来る。だがせっかくのファンサービスが長ったらしいソリティアなんざ無粋だろ?それにデニス、お前にも「勝利」という希望がないとな…」

『ど、どういう事?』

「俺のデッキには()()()()()()()がたった1枚だけ入っている。そのカードを引ければ俺の逆転勝ち、引けなければ…例えどれだけ良いカードを引いたとしても使わねえ。何ならその時に即サレンダーしてやるよ」

『な、なんとIV、ここで目的のカードを引けなければサレンダーすると宣言!!彼曰く確実な勝利を捨ててまでも、大きな賭けに出てきたー!』

 

“おおおおおおっ!!”

 

『『『IV!!IV!!IV!!』』』

 

その言葉に、場内の半数ほどの観客が立ち上がってIVに凄い声援を送り始めた。それもそのはず、どんな手段を使ってでも勝ってのし上がる事こそが全てであるこのシンクロ次元で、自らを窮地に追いやって戦う人間など居なかったのだ

 

そんな命知らずの行動に多くのシンクロ次元の住人がIVに興味を持ち、心を鷲掴みにされていた

 

「バカなっ!!3枚もドローするとはいえ、たった1枚のカードに全てを委ねて勝ちを捨てるのか!?」

「捨てるだと?…捨てたのはお前だデニス」

「っ!?」

「お前が命惜しさに捨てたエンタメ(ファンサービス)を、自分自身を、“IV”という名の決闘者の生き様を…俺は絶対に捨てねえ。それが……俺がデュエルに懸ける覚悟だッ!!デニス・マックフィールド!!」

「……っ……!!」

 

デニスは完全に気圧された

 

決して万人に受け入れられるはずがない己のデュエルに文字通り生命を掛ける。デニス自身には出来なかったエンタメデュエリストとしての生き様を目の当たりにし、デニスの心は既に敗北を認めていた

 

「まずは1枚目からだ…ドロー!!」

 

一斉にカードを引かず、1枚ずつドローする事で観戦者達の注目を集め、緊張とプレッシャー、高揚の中カードを見せつける

 

「1枚目はモンスターカード「ギミック・パペットーリトル・ソルジャーズ」。良かったなデニス。俺の宣言が無ければ、テメェはこの時点で敗北していたぜ」

『最初のカードはどうやら外したみたいです!!』

「2枚目行くぜ!ドロー!!」

 

次のカードは罠カード「無限泡影」、またも目当てのカードではなかった。周囲から残念そうな声が聞こえてくる

 

『2枚目も外してしまった!次のドローで狙っているカードが引けなければ、IVは自動的に敗北してしまうー!!』

「フフフ…!フハハハハ…ハァーッハッハッハ!!」

「な、何がおかしい…!?」

 

デニスの困惑を無視してデッキトップに指を重ねる

 

(このひりつく感覚、俺の一挙手一投足に全員が目を離せない視線の嵐…これだからこの世界のデュエルは最高なんだ!さあ、もっと俺のデュエルを見ろ!!感じろ!!)

「これが俺からのファンサービスだ!!ドロォォー!!」

 

カードを確認するIVの様子に、多くの者達が固唾を飲んで見守る中…貴公子はニヤリと口角を上げた

 

「来たぜ…勝利の方程式は揃った!!これが俺の引いた逆転のカード、「オーバーレイ・リジェネレート」だ!」

「そのカードは!」

 

「「オーバーレイ・リジェネレート」…発動したこのカード自身をORUに変換してエクシーズモンスターに与える魔法カード…そうか!IVの狙いは!」

 

「エクシーズ使いのテメェならよぉく知ってるだろう?…この魔法カードの効果により、このカードをORUとして「ヘブンズ・ストリングス」に与える!」

『エクシーズモンスターにORUを与える効果!?…って事は、「ヘブンズ・ストリングス」はモンスター効果が使えるようになる!?』

「その通り。「ヘブンズ・ストリングス」の効果!ORUを1つ使い、このカード以外の全てのモンスターにストリングスカウンターを乗せる!そしてストリングスカウンターが乗ったモンスターは次の相手のターン終了時に全て破壊され、破壊した数×500ポイントのダメージを相手に与える!」

「バカめ!その効果じゃあ次のボクのターンに「混沌巨人」で「ヘブンズ・ストリングス」を戦闘破壊してしまえば不発になるだけだ!」

「鈍いな、俺の伏せられたカードを忘れたのか?」

「何…? …っ!」

 

IVに言われ、デニスは思い返した。「手札抹殺」で捨てられたカードの中に「アージェント・カオス・フォース」はなかった。そして“カオス化”というエクシーズ次元でも無かった未知の現象に、「ジャイアントキラー」と同じく「No.」の名を冠する「ヘブンズ・ストリングス」…

 

「まさか!「ヘブンズ・ストリングス」もカオス化出来るのか!?」

「気づくのが遅えんだよバァカ!リバースカードオープン!「RUMーアージェント・カオス・フォース」超動!「ヘブンズ・ストリングス」1体でオーバーレイ!1体のモンスターでオーバーレイネットワークを再構築!

 

カオスエクシーズ・チェンジ!!」

 

 

「現れろ、“CNo.40”!」

 

 

「人類の叡智の結晶で、悪魔よ甦れ!」

 

 

「「ギミック・パペットーデビルズ・ストリングス」!!」

 

 

CNo.40 ギミック・パペットーデビルズ・ストリングス

ランク9 ATK3300

 

 

『IVの「ヘブンズ・ストリングス」が、更に強力なエクシーズモンスターに生まれ変わりました!』

「「デビルズ・ストリングス」のモンスター効果!このモンスターが特殊召喚に成功した時、フィールド上に存在するストリングスカウンターが乗った全てのモンスターを破壊し、1枚ドロー!そして破壊したモンスターの中で、元々の攻撃力が1番高いモンスターのその数値分のダメージを相手に与える!」

「なんだって!?」

「「古代の機械混沌巨人」の元々の攻撃力は4500。そして全てのモンスターを同時破壊する為、「ハット・トリッカー」の効果ダメージ無効の効果も不発となる!やれ、「デビルズ・ストリングス」!!」

「くっ!」

 

「古代の機械混沌巨人」と「Emハット・トリッカー」に絡み付いていた糸が赤く染まり、その挙動を狂わせる。「デビルズ・ストリングス」は殺戮の刃に怨念を込めて、空高く掲げた

 

「アクションカードを取れば…!」

 

それでもアカデミアとして足掻き、進路上のアクションカードに手を伸ばし

 

ガクン!

 

「あっ…!」

 

…先程、自分が指示した「混沌巨人」の攻撃により荒れ果ててしまったコースによって、デニスはカードの上を大きく飛び越えてしまった

 

アクションカードを取るサポートをしてくれた「トラピーズ・マジシャン」の時と違い、「混沌巨人」は結果的にデニスの勝利の妨害をしてしまったのは皮肉としか言えなかった。それがエンタメを捨てたデニスに対する罰なのかどうかは……神にすらも分からない

 

「せめてもの情けだ…派手に散りな」

 

IVはドローした「おろかな埋葬」を見ながら、哀れみの言葉と共に吐き捨てた

 

 

「『メロディ・オブ・マサカ』!!」

 

 

悪魔が放った波動は2体のモンスターを容易く消し飛ばし、その余波はDホイールにも大きく伝わり、凄まじい破壊を起こしながらデニスを空高く吹き飛ばした

 

「うわあああああああ!!!」

 

デニス・マックフィールド LP3200→0

 

「うあっ!! …こ、これは…!?」

『決まりましたー!!デュエルの勝敗を制したのは、宣言通り逆転のドローを決めた、って、えぇっ!?デニス・マックフィールドが浮いてるぅ!?』

 

メリッサの言うように、吹き飛ばされたデニスは空中で磔にされるように浮いていた。デニスは自分の体にくっついている糸を見て、これを行った人物にすぐ気づいた

 

 

「まだだ、俺のファンサービスは終わらないぜ!…「デビルズ・ストリングス」!!」

 

 

『ちょ、ちょっと!?もう勝負はついたでしょ!!』

 

 

「お前には彼がファンサービスを喜んでるのが分からないのか?行け!「デビルズ・ストリングス」!!」

 

 

悪魔の人形がその巨大な剣で袈裟斬りしようとした一瞬。ほんの僅かな一瞬だったが、IVは見た

 

斬られる直前…デニスが小さく微笑んでいたのを

 

 

「『デビルズ・ブレード』!!」

 

 

「ぐあぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 

 

静寂がスタジアム内を支配する中、ライダーメットを外しながらIVは仰向けに倒れたデニスに近づく。斜め一線に引き裂かれたライダースーツが実に痛々しかった

 

如何(いかが)だったかなデニス?俺のファンサービスは」

「痛いくらい…シビれたね…一生、忘れられそうにないよ…」

「そうかよ」

 

息も絶え絶えにそう答えるデニス。今にも気絶しそうなのを痛みと気力で堪え、デニスはIVに問う

 

「IV…君は一体、何者なんだ…?」

「何者、ね…」

「ボクは、君の情報を特別にピックアップしてアカデミアに渡したワケじゃない…LDSの戦力のひとつとして、その他大勢の内の1人として扱ったに過ぎなかった…でも、プロフェッサーは…赤馬零王は…君と志島北斗のデュエルログの最後を見た瞬間、明らかに狼狽えていた…あんな様子のプロフェッサーは初めてだった……」

「…………」

「何故、プロフェッサーがそれほどまで君を…危険視するのかは分からないけど…気をつけた方がいい…彼は、本気で君を排除しようとしている…これまで以上に警戒しておく方が、身のためだよ…」

「……御忠告、痛み入るぜ」

 

そこまで聞いて背を向けたIVに、デニスは最後に聞く

 

「これで、ボクは…少しでも、ボク自身が犯してしまった罪を……償えたのだろうか…?」

「知らねえよ」

 

IVの答えはどこまでも冷徹だった

 

「お前のコロンと爺さんへのケジメはつけてやった、これで終わりだ。…だがな、エクシーズ次元を滅ぼす引き金を引いた償いが、()()()()で全部清算出来たとお前の心は本気で思っているのか?」

「……っ…」

 

ズキリと、胸の奥が痛んだのをデニスは感じ取った

 

 

「人様に言われた贖罪で満足すんじゃねえよ。テメェ(自分)で考えて…テメェ(自分)で償い続けるか決めるんだな」

 

 

言いたい事を言い終えたIVが、ヘルメットを肩に背負いスタジアムから退場していくその背中を見ながら、デニス・マックフィールドは意識を失った




たった2ターンだけの話で1万字も書いちまったよ
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