コードヴェイン2のトロコンが終わってソシャゲのイベントもひと段落ついたので、一気に書き上げました
ジャン・ミシェル・ロジェは悩んでいた。
(ふむ…)
大会1日目の最後のデュエルも終えて間もない夜、治安維持局のオペレータールームを見下ろせる場所でロジェは2人のデュエリストのデータを閲覧していた
1人目は榊遊矢。ペンデュラム、融合、エクシーズに加え、シンクロ召喚までも体得した若き少年。前夜祭では“キング”ジャック・アトラスにいいように踊らされて負けた遊矢だったが、ロジェは遊矢が全選手の中で1番伸び代があると考えていた
2人目はIV。エクシーズ召喚しか使わないが、その実力は既にキングに迫れる…いや、ともすれば追い越しているかもしれないレベルのエクシーズのスペシャリストだと確信しており、現在ではフレンドシップカップの最優勝候補として持て囃されてすらいる青年
どちらも
(どちらも行政評議会の庇護下にある。片方に手出しすればもう片方の接触は難しくなるだろう。あえて2人とも呼び出す…?いや、その場合どちらかが私の狙いに勘づけば情報を共有されて利用しにくくなるし、何より計画の前段階で評議会に目を付けられるのは避けたい…やはり選ぶしかないか…)
しかしそうなると、今度はどちらを選ぶべきなのか、という問題に直面する
(ポテンシャルを考えれば榊遊矢に軍配が上がる…しかしそれ故に現段階では未熟、キングと戦う前に敗退する可能性がある…確実に優勝出来るという意味ではIVの方が良いが、あのデュエルを見る限り個人的な感情で確実な勝利を捨てるリスクがあり、私の考えを見抜けるだけの聡明さもある………さて、どちらを取るべきか…?)
未熟だがキングを超える可能性が1番高い遊矢か、コントロールが難しいが堅実に勝ち越せるIVか
両者を秤に掛けた結果、ロジェが選んだのは…
「長官、彼を連れてきました」
「御苦労、貴方は下がりなさい」
「はっ!」
そう言われたロジェの部下は部屋から退出した。部屋に残るのは、部屋の主であるロジェと連れてこられた男だけ
「君と顔を合わせるのはこれで二度目ですね……“IV”君」
「まさか、治安維持局長官から直接お呼び出しに掛かるとは思いもしませんでしたよ」
本当に予想外…と言わんばかりに肩を竦ませるIVの様子に、所詮は子供かと内心見下しつつ、それをおくびにも出さずロジェは余裕のある様子で話を始める
「まずは、君の勝利を称えましょうか。一回戦突破、おめでとうございます。実に見事なデュエルでしたよ」
「長官にそう言っていただけるとは恐縮です」
「そう畏まる必要はありません。殆どの者達があのデュエルを一進一退の攻防だと捉えていたでしょうが、私には分かります。君は先程のデュエルにおいて常に余裕があり、終始戦いの場をコントロールし切っていた。おそらく本気もまるで出していないのでしょう?」
「アージェント・カオス・フォース」には1度だけ墓地から回収できる効果がある。それを使えば「シリアルキラー」を出したターンに「ヘブンズ・ストリングス」をカオス化させる事もでき、そうすればあのターンでデニスにトドメを刺すことも出来た
それをしなかったのはデニスの真の姿を炙り出す為。その為にあれほど危険な綱渡りを涼しい顔でやってのけるのは、IVの実力と精神力の高さの証明でもあった
「君の実力ならば、あの“キング”を倒すことすら夢ではないと思っています」
「ロジェ長官は、僕がキングに勝ってほしいのですか?」
「ええ。シンジ・ウェーバーの試合の後は見ましたか?彼の行動はコモンズ達に要らぬ夢想を抱かせ、シティの治安を乱しかねないものです。これも全て、コモンズ出身のジャック・アトラスが頂点に居続けているのが原因…幸い彼は現体制を壊そうとする考えは持っていないようですが、しかし完全にトップス側に付いているわけでもない」
「だから玉座から引きずり下ろしたいと?」
「ええ」
その探るような問い掛けに対し、慎重に言葉を選びながら答えていくロジェ。鋭い視線がロジェに突き刺さる
「…分かりませんね。何故この話を僕に持ってきたのですか?」
「と言いますと?」
「貴方も評議会で聞いていた通り、僕らはアカデミアという組織を止める為、このシンクロ次元にやってきました。言わばこの街でもっとも異端な存在。直接情報を渡された議員の皆さんですら半信半疑であったというのに、何故シティの管理者である貴方が我々の事を……信用、そう、信用しているのか。そこがどうしても分からないんですよ…ただし、普通に考えれば、ね」
「ほう?どういう意味ですか?」
「単刀直入に聞きましょう」
「貴方は融合次元、それもアカデミアに属していた人ですね?」
それを聞いたロジェは、シンクロ次元では自分以外誰一人知るはずがない秘密を突かれていながら、取り乱すことなく聞き返した
「…どうしてそう思ったのですか?」
「第一に融合召喚。シンクロ次元では決して使われるはずがない召喚法を、この世界の住人が使った。しかもその人物はデュエルチェイサー、貴方の御膝元の人間で、肝心の融合モンスターもデュエルチェイサー専用デッキに合わせて作られたもの。治安維持局トップの介入があったと考えて当然でしょう」
「それだけでは私が融合次元に
「そこで2つ目の理由です。5年前、このシティにリアルソリッドビジョン等の技術を持ち込んだのはロジェ長官、貴方らしいですね?リアルソリッドビジョンを開発したのは零児君の父親、赤馬零王だと聞き及んでいます。その赤馬零王はアカデミアのトップに君臨し、融合次元にそれらの技術を広め、発展させた」
「……ふむ、続けなさい」
「…貴方はリアルソリッドビジョンを持ち込んだ…
ここまで言えば、もはや答えを言ってるも同然である。ロジェが持ち込んだ技術の出処は全て融合次元でなければ有り得ず、融合カードの製作技術も持っている…状況証拠も多いが、ロジェが融合次元、それも元アカデミア所属である事を示す可能性が非常に高かった
全てを話し終えてから暫し沈黙が続き…次に発せられた音は、控えめに拍手する音だった
「素晴らしい洞察力です…やはり私の目に狂いはなかった」
「…やけにあっさり認めるんですね。状況証拠ばかりだと言うのに」
「これ程まで理路整然と並べられてはシラを切っても醜い悪足掻きに過ぎません。それに君の中では既に確信しているようですし、正直に認めた方が心象も良いでしょう?」
焦る様子を見せず自身の正体を認めたロジェは、それならば都合が良いと話を切り出す
「君の推察通り、私はかつてアカデミアに所属していました。しかし10年以上前に赤馬零王がアカデミアに訪れてから、アカデミアは狂いました。プロデュエリストを養成する事を目標とした学校は、他次元の侵略を目的とした兵士を生み出す軍事校に姿を変えていった。瞬く間に赤馬零王に支配されていくアカデミアに私は恐怖し、彼の技術を盗み出してシンクロ次元に逃げ込んだ…」
「何故、シンクロ次元を選んだのですか?」
「アカデミアに対抗するには、力が劣っているスタンダードでも平和ボケしているエクシーズでもダメです。力で勝ち取る事が全てであるシンクロ次元こそ、アカデミアに対抗出来るデュエリスト達を育てられると踏んだからです」
しかし、とため息と共に自身の最大の悩みの種であるキングが如何に邪魔であるかを語る
「このシティを支配する為には、反抗する多くのコモンズ達が邪魔なのですよ。彼らが反発を続ける限り、そしてそんなコモンズから成り上がったキングが存在する限り、アカデミアと戦う為のシティの完全統一は成し遂げられない」
「ナルホド…ねェ……」
ロジェの話に俯きながら低い声で呟くIV。そしてその顔を上げてみれば、先のデュエルでも見せた残虐な表情が顔に浮かび上がっていた
「人が悪いなぁジャン・ミシェル・ロジェ。要は俺にシティを支配する手伝いをしろって言いてぇんだろぉ?……イイぜ、手を貸してやるよ」
IVの変化もそうだが、あまりにあっさりと自身の要求を承諾され、少し警戒気味にロジェは問う
「…どういう風の吹き回しですか?」
「なぁに、俺にもメリットがあるって話さ。俺は赤馬零王に復讐がしたいんだよ。そしてアンタはアカデミアを潰す為にこの街を支配したい。だからアンタの計画に乗る。赤馬零王を潰す事に協力してくれるってんなら、俺は喜んでアンタをこの次元の“
そのIVから持ち掛けられた交渉に最初は驚くも、ロクでもない未来図を思い描いたのか、ロジェは徐々に口角を上げて愉悦に笑う
「…驚きました。君はあの
「ハッ!社長も含め、アイツらは揃いも揃って甘ちゃんだからなぁ。それに…」
とびっきり邪悪な笑みでIVは言った
「この街を変える努力も、ましてや自分達が助かろうとする努力すらもしない虫ケラ共がいくら死のうが、俺には知ったこっちゃないんでね。だったらアンタらの奴隷として活用した方が、幾分かマシってもんだろ?」
「………フ、フフフフ…ハハハハハ!君も中々に人が悪いじゃないか!?…どうやら、君とは良い関係が築けそうな気がしますよ」
「奇遇だな、俺もそう思っていた所だぜ」
「フフフフフ…」
「ククククク…」
「「ハァーハッハッハッハッ!!」」
日付が変わる音をも掻き消す邪悪な笑い声と共に、第2回ドSサミットは終了した
……そして、IVの提案を受け入れたばかりに……
ただでさえ悲惨な末路を遂げるロジェは、消息不明後も徹底的にシティを纏め上げる為の起爆剤兼潤滑油兼緩衝材として利用され続けることになる事を
この時のロジェは知る由もなかった…
区切り良くしたら短くなったので、後書きで他のキャラ達がIVをどう思っているか書いてみました
榊遊矢
過激な面も多いがとても思慮深く、デュエルに対しても非常に真摯なエンタメデュエルの先輩。父さんのファンである事が嬉しい。自分の1番のファンらしい
でもモンスターの趣味に関しては度し難いと思う
柊柚子
手段を選ばないが意外と律儀で真面目な人。プリン渡された時は戦々恐々。遊矢の事に関しては内心感謝している
でもモンスターの趣味に関しては度し難いと思う
権現坂昇
遊勝塾を巻き込んだ件で複雑な心境であるが、ケジメはつけたので普通に接している。コロンのデュエルから指南の腕もあると考えている
モンスターの趣味に関しては度し難いと思う
紫雲院素良
融合モンスターを下敷きにした嫌なエクシーズ使い。でもプリンくれたし寛大な心で許してやろうと思っている。遊矢に負けたし、所詮はスタンダードのエクシーズ使いだと思っている
モンスターの趣味は悪くないが、使い方は少々エゲツないと思う
赤馬零児
正体不明のエクシーズ使い。個人的な同盟関係で頼もしい仲間だが、その力と過激なやり方に時々ヒヤヒヤしている。実は2つ歳上の先輩な為、精神的にも頼りにしている。IVの本気を知っている数少ない人物
モンスターの趣味に関しては筆舌に尽くし難いと思う
黒咲隼
最初はアカデミアのスパイと疑っていたが、今は強いシンパシーを感じて、ユートに次ぐレベルで信頼している。IVの本気を知っている数少ない人物
モンスターとデュエルの趣味に関してはどうにかならないものかと時折思う
沢渡シンゴ
“決闘者の貴公子”などと持て囃されてるいけ好かない奴。ネタ枠扱いしたの絶対許さねえ
モンスターの趣味に関しては度し難いと思う
セレナ
すごくこわい。たすけてゆず
IVの本気の一端を知っている数少ない人物
バレット
恐ろしい人物であり実力者。ともすればユーリをも超えているかもしれない
IVの本気の一端を知っている数少ない人物
デニス・マックフィールド
最強のエクシーズ使いにして自身の行いによる被害者。デュエルでケジメをつけて尚、罪悪感を抱いている
でもモンスターの趣味に関しては度し難いと思う
赤馬零羅
兄さんの仲間。でもデュエルもモンスターも怖い
志島北斗
いつかリベンジするつもりだったが、あまりに遠過ぎる実力差に心が折れかけている
IVの本気の一端を知っている数少ない人物
光津真澄、刀堂刃
いつかリベンジするつもり
榊洋子
カッコいいイケメンで息子の先輩。息子との仲を取り成してくれた優しい子
赤馬零王
悪魔の再来。必ず滅ぼさなければならない
デメット・ドール
ぶっきらぼうだが優しい自慢の義息子
本人もモンスター達も楽しそうにデュエルすると思う
人形コロン
ちょっとイジワルで怖いけど優しいお兄ちゃん
IVのモンスターは皆カッコよくて可愛いお人形さんだと思う
早く帰ってきてね!