ファンサービスは僕のモットーですから   作:ジャギィ

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補足回


第19話

『IV、何があったのですか?情報を正確に伝えなさい』

 

そんなロジェからの催促など全く気にならないほど、IVの内心は掻き乱されていた

 

(バカな…!?バカな!?)

 

監視に向かわせた「ギミック・パペット」モンスター達から得た最後の情報

 

謎の光の柱を確認した直後、“榊遊矢、ユーゴ、そして2人に似た顔つきの少年が1つの強大な存在になった”という情報を聞いて、焦る心を全く抑えられなかった。それほどまでに、齎された情報はIVの心の不意を完全についていた

 

(ズァークがこんな早いタイミングで復活しただと!?確かに原作でも復活の危機には陥っていたが、それでも未然に防がれたはずだ!何らかの理由で、柊柚子が復活のタイミングに居合わせなかったとでもいうのか…!?)

「一体…何が起きたんだ…!?」

 

そう考えざるを得ないIV

 

何故、こんなにも早くズァークが復活を遂げたのか…?

 

 

大前提として、この世界線におけるシンクロ次元での大きな相違点は3つ

 

①月影の代わりにIVがフレンドシップカップに参加している事

②セレナが第1回戦で敗退

③バレットの存在

 

この3つの事項の共通点は“ARC-Vという物語の流れを大きく変えるかもしれない”というものだ

 

①は言わずもがな、②もレイの転生体である以上どの陣営にいるかで大きく影響を及ぼす

 

中でも1番不明瞭な要素が③。ただのアカデミア兵とカウントすれば考える事は少ないが、バレットは正史においてセレナ確保において大きな立ち回りをしている。実力もある分、下手をすれば①以上に変化を齎す可能性もある

 

これらの前提を頭に置いた上で、順を追って流れを見ていこう

 

 

まずはセレナの早期敗退。本来ならば2日目の第4試合後にロジェが融合次元に縁のある彼女を捕獲しようとセキュリティを動かすのだが、その流れが史実よりも1日早い為、ロジェの手中に落ちるものだと思っていた

 

しかし、ここでIVがフレンドシップカップに参加した事でフリーとなっていた月影が動く。本来ならば地下の強制労働施設から脱出する手間も時間もこの世界線では消滅した為、セキュリティに一切気づかれることなくセレナを救助し、行政評議会に帰還した

 

丸一日使ってセレナを見つけられなかった事から、ロジェはランサーズに確保されている事を確信し、しかし評議会を制圧する大義名分がなかった為、そのままフレンドシップカップは2日目に移行した

 

ロジェは次に柚子を狙い、捕縛の準備もしていた。しかし、ここで手駒であるセルゲイの暴走により行方不明となり、更に彼女を確保しようと動いたセキュリティは、シンクロ次元に潜入していたアカデミアの工作員…紫雲院素良の妨害によって失敗に終わる(ちなみにデニスも既に素良が融合次元に転送済みの為、デニス関連は正史と特に変わらない)

 

ここでランサーズとセキュリティの睨み合いが続き、ロジェも正史のように準決勝を早めて強行する事もなく、2日目の夜は過ぎるはずだった

 

しかし、そのタイミングで柚子、セレナの誘拐を目的としたアカデミアのオベリスク・フォース部隊がシティに襲撃してきた事により状況が一変

 

アカデミアに対処すべく強制労働施設でランサーズのメンバー(特に黒咲)が起こした騒動に乗じて、シンジが地下に落とされた大勢のコモンズ達を扇動して蜂起。地下から脱出したシンジ達コモンズはシティの革命を謳った暴動を始めた

 

これを好機と見たロジェは“キングス・ギャンビット”を発動。全セキュリティを支配下に置いて『シティ中で起きている暴動を鎮圧する』という名目の元、暴走するコモンズ達への強制執行をついでに、本命の“行政評議会の完全制圧”を目的に動き出した

 

この作戦にはロジェの切り札であるセルゲイも投入されており、再手術でより冷徹なデュエルマシーンへと変貌してしまったセルゲイは、セキュリティと共にひたすら零児と月影を攻め立てた

 

現状評議会サイドで戦える人間が零児と月影しかおらず(セレナは敵の捕獲目標、バレットは離反の危険性あり、零羅は子供故にこのような状況では戦力外)、人海戦術による波状攻撃とセルゲイの新たなデッキによる新戦術には、流石の実力者である零児と月影も消耗せざるを得ず、このままではすり潰されるのも時間の問題だった

 

そんな時だった

 

「私はここにいるぞ!!どうした!?捕まえてみろ!!」

「セレナ、何を!?」

 

なんとセレナが独りでに評議会会場から飛び出し、夜の入り組んだコモンズの居住区に逃げ出したのだ。それを追い掛けるようにセルゲイとセキュリティ達は去っていき、零児達は九死に一生を得た

 

疲労のものとは別の汗が零児の頬を伝う

 

「まさかセレナ殿、我々を助ける為に自ら囮を…」

「無謀だ…いくらセレナほどのデュエル戦士と言えど、あの数を相手に逃げ切れる訳がない。最悪なのが今のシティにはアカデミアの精鋭部隊もいること…彼女がアカデミアの手に堕ちれば、どうなるかが予想出来ない」

 

無論、如何に脳筋のセレナでもそんな事は百も承知だった。自分や柚子がアカデミアひいては赤馬零王の目的に必須なピースであり、だからこそその死守の為に零児や月影が命懸けでデュエルしたのも、自分がしている事がどれほど愚かな行為なのかも分かっていた

 

分かっていても、セレナには我慢出来なかった

 

融合次元がエクシーズ次元に対して行った所業、アカデミアの歪んだ教育、IVという一個人に向けられた残虐な行為と殺意。セレナが教えられた誇り高きアカデミアなどどこにもなかった。全てが嘘だった

 

根は心優しい彼女は、そんな自分を仲間だと受け入れ、自らを犠牲にしてでも守ろうとする零児達の姿を見るのが耐えられなかった。デュエルの楽しさを教えてくれた世界を、醜い我欲で滅ぼそうとする連中の生け贄にするなど、セレナが許容出来るはずがないのだ

 

セレナという重要な駒が、自ら盤面を大きく動かした。それは多くの者達の注目を集め、誘導した

 

故に零児と月影は、バレットが評議会内から消えている事実に、遅れて気づくのだった

 

 

一方、遊矢は夜の街中を走っていた。デュエルの後、セルゲイの追撃により消息を絶った柚子を探す為だった

 

何故ペントハウスで軟禁されているはずの遊矢が外に出られているのか…

 

“偶然”シティ中で起きている騒ぎによって監視が無くなり、“偶然”暴動による停電が起こった事で扉のロックが解除され、そして“偶然”オベリスク・フォースの姿を視認出来た遊矢は、それを追ってシティの闇の中を駆けていた

 

…偶然…そう、全て“偶然”の出来事だった。ともすれば何者かの介入も疑うほど遊矢にとって都合のいい出来事の連続は、恐ろしいことにIVも、そして遊矢の中にいる“ナニモノ”かすらも、何の関係もしていないのだ

 

もし…もし、IVがこの出来事を認識出来ていたのならば、彼は間違いなく、皮肉げにこう言っただろう

 

“まるで世界そのものが、この『運命』を望んでいるかのようだ”…と

 

 

そうして、遊矢が辿り着いた廃墟…その中に入った遊矢はある光景を目にする

 

「素良…!?それに、バレット!?」

 

そこに居たのは、本来の歴史ならば柚子を保護し共に行動していたはずの紫雲院素良と、アカデミアの尖兵としてセレナを捕縛しにシンクロ次元に来るはずのバレット。その2人がボロボロになりながらも肩を並べてデュエルしているという奇妙な光景だった。床にはカードにされたオベリスク・フォース達がばら撒かれている

 

そして、個人でのデッキ所持を認められたアカデミアでも上澄みのデュエル戦士2人を相手取って涼しい顔をしているのは…たった1人の少年

 

「……うん?誰だい、キミ?」

「俺と…同じ顔…!」

 

遊矢はここで初めて、融合次元における自分の同一存在“ユーリ”と邂逅した

 

「遊矢…!?どうしてここに…!」

「遊矢…?…あぁ、なるほど!キミが柚子の言っていた“遊矢”くんかぁ」

「柚子だって…!」

「遊矢!そいつの名前はユーリ!アカデミアの中でもとびっきり強くて、危険で、柚子とセレナを捕まえる為にシンクロ次元にやって来たんだ!セレナも既に融合次元に転送されてしまった!」

「セレナが…!?柚子…柚子は無事なのか!?」

「安心して、命に別状はないし大きな怪我もしてない。今は離れた場所で隠れてもらってる」

「そう、か…無事なんだな、柚子…」

 

立場上は敵対しているが、大切な友達だと思っている素良から幼馴染の安否を聞いた遊矢は、安堵の息を吐く。そして、そんな友達を傷つけ、追い詰めている元凶の方へと顔を向ける

 

「…お前、なんで柚子とセレナを!」

 

そう遊矢に問われたユーリはあっさり答える

 

「プロフェッサーに命令されたんだよね。柚子って子とセレナを融合次元まで連れて来いってさ」

「命令されたからって人を攫うのか!?」

「さっきそう言ったじゃん。人の話聞いてないの?」

「遊矢…ユーリと話し合っても無駄だよ…そいつは自分の事しか考えていない。オベリスク・フォースをカード化したのもボク達じゃなく、こいつなんだよ」

「なんだって…!?」

 

仲間を自らカードにしたという衝撃の事実に遊矢は困惑する

 

「だってしょうがないじゃん?プロフェッサーはボクに2人を連れて来いって言ったんだよ?それを邪魔したんだから、消されても仕方なくない?」

「何を言ってるんだ…!?」

 

あまりに身勝手な思考回路に理解が追い付かなかった

 

ユートやユーゴは、誤解こそあったがまだ話し合える余地があると思った。しかし目の前の少年は…ユーリは「邪魔だった」という理由だけで何の感慨もなく仲間をカードに変えた。遊矢にはユーリが、対話の余地がない悪魔に見えて仕方がなかった

 

「お喋りが長過ぎたね。さっさと仕事を終わらせるか」

「っ!」

「モンスターで攻撃」

 

ユーリのフィールドにいる分厚い花弁を持った巨大な肉食植物が牙を剥き、素良とバレットのモンスターと一緒に2人のライフを同時に消し飛ばした

 

「うわあああああ!!」

「ぐわあああああ!!」

 

リアルソリッドビジョンの衝撃を受けて吹き飛び、壁面に激突して素良とバレットは倒れ伏す。それを見たユーリは嗜虐的な笑みを浮かべながら、デュエルディスクを2人に向けた

 

「まさか…!やめろ!もう決着はついただろ!?」

「何言ってんの?負けた奴に価値はない…消えるのがこの世の道理なんだよ」

「ふざけるな…!負けたから消えるのが当たり前なんて、そんなデュエルはあっちゃいけないんだ!」

 

遊矢は倒れる2人を庇うように立ち塞がり、デュエルディスクを構える

 

「遊矢…」

「榊遊矢…何故…?」

「2人をやらせはしない!デュエルだ、ユーリ!」

「へぇ…?このボクの前にわざわざ立ち塞がるだなんて、凄い度胸だねぇ。まだ仕事は残ってるけど…いいよ、相手してあげる」

 

そうしてデュエルディスクを構えたユーリの様子に、遊矢は冷や汗を掻きながらもアクションフィールドを発動

 

 

「そのデュエル、ちょっと待ったぁ───!!」

 

 

「えっ!?」

 

──する直前、大きな声と共に白いDホイールがフロアの中に突撃し、遊矢とユーリの間を横切ってドリフトしながら停止した

 

「ようやく見つけたぜ…リンと瑠璃を攫ったクソ野郎!」

「ユーゴ!」

 

現れたのはユーゴだった。彼は暴動のニュースでユーリの姿を視認すると、居ても立っても居られずペントハウスから脱走(遊矢と同じように停電でロックが外れていた)し、オベリスク・フォースを薙ぎ倒しながらこの場まで辿り着いたのであった

 

ヘルメットを脱いだユーゴが怨敵であるユーリを睨みつけるも、当人はニヤニヤ笑いながら惚ける

 

「あっれぇ…?キミ、誰だっけぇ?」

「ふざけてんじゃねえぞテメェ!」

「アッハハハ!!いい反応するねキミ!…で、何の用?」

「リンと瑠璃の2人を返しやがれ!」

 

ユーゴの要求をユーリは笑って拒否する

 

「やーだね。せっかく苦労して捕まえてきたのに、わざわざ逃がしたら二度手間じゃない?」

「やっぱ、大人しく返す気はねえか…!」

「ユーゴ、どうしてここに!」

「こうして話し合うのは初めてだな遊矢。お前の話は柚子やユートから聞いてるぜ」

「え…ユートからって…?」

 

柚子はともかく、何故消えたはずのユートの名前が出てくるのか、遊矢には分からなかった

 

「その話は後だ!こいつはリンや瑠璃と同じように、柚子を攫おうと付け狙っているらしいぜ!」

「…柚子だけじゃない!セレナも既に攫われたって!」

「なんだと!?テンメェ…ゼッテェに許さねえ!!」

『デュエルモード、スタンバイ』

 

機械音がユーゴのデュエルディスクから響く。バイクに跨ったままだが、狭い場所だからか少なくともライディングデュエルをするつもりはないらしい

 

闘志を漲らせるユーゴを見て、ユーリは面白くなってきたと言わんばかりにニンマリと笑みを浮かべる

 

「イイね…さっきの2人じゃ物足りなかったんだよねぇ。キミ達ならちょっとは……楽しめるかな?」

 

 

「「「デュエル!!」」」

 

 

「俺の先攻!俺はスケール1の「星読みの魔術師」とスケール8の「時読みの魔術師」で、ペンデュラムスケールをセッティング!」

「ペンデュラムスケール?」

「これでレベル1から7のモンスターが同時に召喚可能!

 

 

揺れろ、魂のペンデュラム

 

 

天空に描け、光のアーク

 

 

ペンデュラム召喚!現れろ、俺のモンスター!」

 

 

「雄々しくも美しく輝く二色(ふたいろ)(まなこ)!「オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン」!!」

 

 

異なる虹彩を持つ赤竜が咆哮と共に現れる

 

「俺はこれでターンエンド!」

「ペンデュラム召喚…!いきなりレベル7のモンスターを呼び出すなんて、面白いねえ!」

 

初めて見るペンデュラム召喚に驚かないばかりか、まるで手品を見た時の子供のように無邪気に笑うユーリの姿に、遊矢は驚きつつどこか薄ら寒さを感じた

 

「そうやって余裕ぶっこいてられんのも今のうちだぜ!俺のターン、ドロー!」

『1ターン目から「オッドアイズ」を出すとは、遊矢も本気だ。俺達も出し惜しみせずにやるぞユーゴ!』

「分かってるぜユート!俺のフィールド上にモンスターが存在しない時、手札の「SRベイゴマックス」は特殊召喚できる!」

 

ユートの言葉に同調しつつ、ユーゴは展開を始める

 

「「ベイゴマックス」は召喚・特殊召喚に成功した時、デッキから「スピードロイド」モンスターを1枚手札に加えられる!俺は「SRタケトンボーグ」を手札に加え、特殊召喚!「タケトンボーグ」は俺のフィールドに風属性モンスターがいる時、手札から特殊召喚できる!更に「SRバンブーホース」召喚!こいつは召喚された時、手札から「スピードロイド」1体を特殊召喚できる!こい、チューナーモンスター「SR吹持童子」!」

 

次々と特殊召喚される玩具をモチーフとしたモンスター達。そして「チューナー」というワードを聞き、ユーリが察する

 

「チューナー…シンクロ召喚か」

「そいつはまだ早いぜ」

「うん?」

「俺はレベル4の「バンブー・ホース」と「吹戻童子」の2体で、オーバーレイ!」

 

 

「漆黒の闇の中より、愚鈍なる力に抗う反逆の牙…今降臨せよ!!」

 

 

「エクシーズ召喚!!」

 

 

「現れろ!ランク4!「ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン」!!」

 

 

「へぇ…この次元の人間がエクシーズ召喚をするなんて。しかもこのモンスター…」

 

「ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン」に見覚えがあるのか目を細めるユーリだったが、すぐに元の人を小馬鹿にするような態度に戻ってからかい始める

 

「でも良かったのかな?貴重なチューナーを使ってエクシーズモンスターなんか出しちゃってさ」

「へっ、問題ねえよ!俺は「タケトンボーグ」の効果で、自身をリリースして効果発動!デッキから「スピードロイド」のチューナー1体を特殊召喚する!ただし、この効果の発動後、ターンの終わりまで俺は風属性モンスターしか特殊召喚出来なくなる!」

「…なるほど。だから先に闇属性の「ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン」を出したのか」

「現れろ!チューナーモンスター「SR赤目のダイス」!「赤目のダイス」の特殊召喚時効果で、「ベイゴマックス」のレベルを6にする!」

 

「ベイゴマックス」と「赤目のダイス」のレベルの合計は7。つまり…ユーゴの切り札と同じレベル

 

「レベル6となった「ベイゴマックス」に、レベル1の「赤目のダイス」をチューニング!」

 

 

「その美しくも雄々しき翼翻し、光の速さで敵を討て!!」

 

 

「シンクロ召喚!!」

 

 

「現れろ!レベル7!「クリアウィング・シンクロ・ドラゴン」!!」

 

 

光の中から現れたのは黒が入り交じった白い竜。翠に光り輝く翼で夜の闇を照らしながら、「ダーク・リベリオン」の隣に降り立つ

 

ユーゴのフィールドに反逆の黒竜と翼の白竜が並び立った。それを見たユーリは感心した風に口笛を吹き、ユーゴのプレイングを褒めた

 

「攻撃力2500のモンスターが2体…やるねぇキミ」

「言ってろ!テメーは必ずぶっ潰す!俺はこれでターンエンドだ!」

 

遊矢とユーゴのフィールドには、それぞれ攻撃力2500のモンスターが1体と2体存在している。ユーリはそれでも余裕な態度を一切崩さず、必ず自分が勝つという確信の元、デュエルを進行させる

 

「それじゃあ、いよいよボクのターンだ。…頑張って耐えてよ?あんまりあっさりやられたらつまらないからさ…ドロー!」

 

ユーリはドローカードを手札に加え、そのまま手札にある渦巻き模様の魔法カードを見せつけた

 

「ボクはマジックカード「融合」を発動」

「「融合」…!」

「手札の「捕食植物(プレデター・プランツ)フライ・ヘル」と「捕食植物モーレイ・ネペンテス」で融合召喚する!」

 

ユーリの背後の渦で、ハエジゴクとウツボカズラがモチーフの植物モンスターが混ざり合い…そこから紫の輝きと共に禍々しい気配が溢れ出る

 

 

「魅惑の香りで虫を誘う二輪の美しき花よ!今一つとなりて、その花弁の奥の地獄から、新たな脅威を生み出せ!」

 

 

翼のような物体が邪悪に口を開き、粘液を糸引きながら開かれた部位から水晶のような球体が顔を覗かせる

 

 

「融合召喚!!」

 

 

「現れろ!飢えた牙持つ毒龍!レベル8!「スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン」!!」

 

 

長い尾をしならせて咆哮する毒龍は、全身に数多く埋め込まれた小さな球体を赤と黄に妖しく光らせながら、その姿を遊矢達の前に曝け出した

 

「なんだ、こいつは…!?」

「これがユーリのエースモンスターかよ…!」

 

他のモンスターとは比較するのもバカバカしい程の禍々しさに、一瞬怯むも負ける訳にはいかないと勇気を出して1歩踏み出し

 

 

ドグンッ!

 

 

「ぐっ!?」

 

──直後、遊矢の鼓動に異変が起きた

 

ドグンッ!ドグンッ!ドグンッ!

 

急激に変わり出した心臓の鼓動の大きさと速さに、遊矢は痛みに耐え切れず左胸を強く押さえて膝をつく

 

「がっ、あああ…!?な、なに、が…!?」

 

『グオオオオオ!!』

『ギュルアアアアア!!』

 

「「オッドアイズ」…!?ほ…他のドラゴンも…!」

 

まるで()()()()()()()()()かのような咆哮を上げる「オッドアイズ」と、それに共鳴するように吼える「ダーク・リベリオン」「クリアウィング」「スターヴ・ヴェノム」

 

変化はそれだけに留まらず、デュエルをしていたユーゴとユーリも、眼を爛々と輝かせながらうわ言を呟き、ゆっくりと遊矢に近づいてくる

 

「1つに…1つに…」

「今こそ…1つに…」

「ユーゴ…!?ユーリも…!一体…どうしたんだよ2人とも!?」

 

ドグンッ!

 

「うがぁっ!?」

(お…同じだ…!スタンダードで、ユートとユーゴが暴走した時と…!あの時と、同じだ…!)

「し…しょうきに、もどれぇ…!」

 

必死に痛みに堪えながら訴えかける遊矢だが、そんな遊矢を嘲笑うかのように()()()()()から悍ましい声が響く

 

『1つに…今こそ1つに…!』

(っ!?なんだ…!?俺の…中から…声が…!?)

『そうだ…!この世の全てを破壊し尽くす為に…!』

「やめ、ろぉぉぉぉぉ…っ!!」

 

 

 

「今こそ、1つにぃ!!」

 

 

「うわああああああああああっ!!!」

 

 

 

「っ!?今のって、遊矢の声…?」

 

聞き間違いようのない、シティ中に響き渡る幼馴染の絶叫を聞いた柚子は居ても立っても居られず、素良が連れてきてくれた隠れ場所から飛び出した

 

すると夜を引き裂くような光柱が目に移り、それは徐々に細くなっていき、やがて消えた

 

「あっちの方からだわ…遊矢!!」

 

 

 

IVの存在によってトーナメントに差異が生じなければ

 

遊矢が柚子の身を案じて探しに行かなければ

 

ユーゴがユーリを見つけて追い掛けなければ

 

セレナが自らを囮に評議会から離れなければ

 

素良がまだ怪我が治ってない柚子を隠さなければ

 

バレットが素良と共にユーリの足止めをしなければ

 

 

そんな、ありとあらゆる小さな事柄の積み重ねが…かつて『1つだった世界』を滅ぼした悪魔を復活させる事態を引き起こしてしまったのだった

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