ファンサービスは僕のモットーですから   作:ジャギィ

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第22話

「俺のターン、ドロー!」

 

ドローカードと4枚の手札を見比べながらユーゴはしかめっ面をする

 

相手のフィールドには高ランクのエクシーズモンスターが3体、下級アタッカーが1体。普通ならばシンクロ召喚して「キラーナイト」辺りを狙うのだが…

 

(IVのフィールドにいる「ファナティクス・マキナ」。あいつがいる限り下手にシンクロモンスターを出せば破壊されて返り討ちに遭う…「ファナティクス・マキナ」の効果をブラフで使わせるか、効果を無効にするか、そもそも対象に取るモンスター効果を無効化出来る「クリアウィング」を出すか、だ)

『加えて、IVがセットしたリバースカード。あの中には「ギミック・パペット」エクシーズモンスターの数だけコントロールを奪う「サービスト・パペット」も入っているはず。それも考えて動かねばならない』

「ああ、分かってるぜ!」

 

そう言いつつ、Dホイールを走らせながらアクションカードを拾う。拾ったカードの効果を読んで、ユーゴはニッと笑う

 

「良いカードを拾ったぜ!アクションマジック「緊急停止」!相手モンスター1体の効果をターン終了時まで無効にする!「ファナティクス・マキナ」の効果を無効だ!」

 

「ファナティクス・マキナ」の前に突如現れたストップを表す掌のマーク。これで1ターンだけ「ファナティクス・マキナ」は無力化される

 

「チッ!」

「俺はチューナーモンスター「SR三つ目のダイス」を召喚!そして墓地の「マッハゴー・イータ」の効果発動!俺のフィールドに「スピードロイド」チューナーがいる時、自身を墓地から特殊召喚出来る!蘇れ!「マッハゴー・イータ」!」

(レベル8…「クリスタルウィング」か)

「俺はレベル5の「マッハゴー・イータ」に、レベル3の「三つ目のダイス」をチューニング!」

 

 

「数多の鉄鳶(てつえん)よ!今連なりて、風を切り裂く龍になれ!」

 

 

「っ!?」

(口上が違う!?「クリスタルウィング」じゃない!?)

 

突如現れた、鉄で出来た無数の小さな円盤と凧

 

それが緑に光る糸で細長く連結し、四肢とハングライダーのような緑光の翼を持った鉄龍へと姿を変える

 

 

「シンクロ召喚!!」

 

 

「現れろ、レベル8!「HSRカイドレイク」!!」

 

 

HSRカイドレイク

レベル8 ATK3000

 

(レベル8の「HSR」…!そういやそんなカードもあったな…)

 

IVの記憶力も万能ではない

 

何せ、OCGだけでも1万種類以上ものカードが存在するのだ。加えて、所謂アニメ産のカードにアクションカード、この世界に来て初めて確認した未知のカードも今では記憶せねばならず、そうなれば関わりの少ないカードの記憶が摩耗していくのも当然と言えよう

 

それでも未知のカードに対しては膨大な知識から効果に当たりをつけ、ある程度は予測して対処出来るのだから、凄まじい記憶力と頭の回転をしている事に変わりはない

 

(この状況で「クリスタルウィング」より優先して出してきたという事は、「クリスタルウィング」以上に場持ちがいいか、盤面に干渉出来る効果を持っているという事…)

「「HSRカイドレイク」のモンスター効果!このカードがシンクロ召喚に成功した時、『このカード以外の全てのカードを破壊する』効果か、『相手フィールドの表側表示カード全ての効果を無効にする』効果かを選んで発動する!俺は、『このカード以外の全てのカードを破壊する』効果を選ぶぜ!」

(ほらな!)

「トラップ発動!「傀儡遊儀ーサービスト・パペット」!このカードは俺のフィールドの「ギミック・パペット」エクシーズモンスターの数だけ相手モンスターを対象に発動でき、対象モンスターのコントロールのターンの終わりまで得る!「カイドレイク」は預からせてもらおうか!」

 

鉄凧の龍が空から降り注いだ糸にコントロールを奪われ、IVのフィールドに引きずり込まれる

 

「だが、「カイドレイク」の効果が止められる訳じゃねえ!いけぇ!「カイドレイク」!!」

 

ユーゴの声に呼応して「カイドレイク」の眼光が橙色にギラつく。身体中から幾つもパージされた鱗がビームの翼を展開してジェット噴射で飛び交い、IVの盤面を蹂躙する

 

さながら翠の鏃が、何度も何度もフィールド上のモンスターや魔法・罠カードを貫き、やがて穴だらけになったそれらは全て爆散し、光の粒となって消えていった

 

『凄い!自分の「強制終了」も破壊してしまいましたが、それでもIVのフィールドを跡形もなく全滅させたー!!』

「見たか!これで状況はイーブンになったぜ!」

 

しかし、フィールドを一掃されても…IVは笑っていた

 

「っ!? なんだ!?」

 

破壊跡から3つの光球がIVの元に集い、それらが3枚のカードとなって手札に補充される

 

「モンスター、ORUとして墓地に送られた「キラーナイト」と「ブラッディ・ドール」、更に破壊されたリバースカード「マーシャリング・フィールド」の効果だ。「キラーナイト」「ブラッディ・ドール」はそれぞれ墓地から回収され、フィールドから墓地に送られた「マーシャリング・フィールド」の効果で2枚目の「RUMーアージェント・カオス・フォース」をデッキから手札に加える」

「なんだと!?」

『IVの手札が一気に3枚増えたぁ!?しかも手札には「ブラッディ・ドール」もいるから、次のターンも確実にエクシーズ召喚されちゃう!?』

『なんて継戦能力の高さだ…』

「クソ…!俺はカードを1枚伏せて、ターンエンド!」

「俺のターン、ドロー!」

 

IVは引いたカードを即座に手札に加え、大仰に右腕を振りながらファンサービスの続きを宣言する

 

「3回目のファンサービスだ。今度は耐えられるかな?」

「またエクシーズ召喚する気か…!」

『しかし、IVのフィールドはがら空きだ。立て直すのはIVとて容易ではないはず…』

「「ブラッディ・ドール」の効果!「ヘブンズ・ストリングス」を公開し、このカードとデッキの「ギミック・パペットーナイトメア」を特殊召喚する!そしてこの2体でオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!」

 

IVの近くに2体の人形が現れたかと思うと、間も置かず紫色の球に変化して渦に飲み込まれ…巨大な心臓が出てくる

 

「エクシーズ召喚!!現れろ!「No.15 ギミック・パペットージャイアントキラー」!」

「2体目の「ジャイアントキラー」だぁ!?」

「そしてこの瞬間、墓地の「ギミック・パペットーファンタジクス・マキナ」の効果を発動!俺のフィールドに「ギミック・パペット」エクシーズモンスターが特殊召喚された時、墓地のこのモンスターを自分か相手フィールドに守備表示で特殊召喚する!俺のフィールドに蘇れ、「ファンタジクス・マキナ」!」

 

巨大な穴から糸に吊り下げられた人形が、紳士的にお辞儀しながらIVの元に舞い戻る

 

「更にこの効果には続きがあり、俺の墓地の「RUM」1枚を手札に戻す事が出来る!「RUMーアージェント・カオス・フォース」を回収!」

「なっ!?」

「そして今手札に戻った「アージェント・カオス・フォース」を発動し、「ファンタジクス・マキナ」でオーバーレイネットワークを再構築!

 

カオスエクシーズ・チェンジ!!」

 

 

「現れろ、“CNo.40”!」

 

 

「人類の叡智の結晶で、悪魔よ甦れ!」

 

 

「「ギミック・パペットーデビルズ・ストリングス」!!」

 

 

CNo.40 ギミック・パペットーデビルズ・ストリングス

ランク9 ATK3300

 

「「デビルズ・ストリングス」は特殊召喚時、フィールド上のストリングスカウンターの乗ったモンスター全てを破壊して1枚ドロー、その後破壊したモンスターの中で元々の攻撃力が最も高いモンスターの攻撃力分の効果ダメージを相手に与えるが…フィールド上に該当するモンスターがいない為、この効果は不発となる」

 

味方すらも殺す皆殺しの剣を構え、振るう悪魔の人形。しかしその刃には怨念が一切篭っておらず、剣が宙で空振るだけの結果に終わった「デビルズ・ストリングス」は、心做しかどこか不服そうな雰囲気で元の姿勢に戻った

 

「……?」

「そして「ギミック・パペットーテラー・ベビー」召喚!召喚時効果で、墓地の「ギミック・パペット」モンスター1体を守備表示で特殊召喚する!」

 

青い体色の赤ん坊の人形がケタケタ不気味に笑うと、IVの切り札である超大型モンスター…「ファナティクス・マキナ」があっさりとフィールドに舞い戻る

 

ギミック・パペットーファナティクス・マキナ

DEF1500

 

「ウ、ウソだろ…!?」

『し、信じられません…!ユーゴの起死回生の反撃から、何事もなかったかのように立て直してしまいました…!』

「ORUを取り除き、「ジャイアントキラー」の効果!その玩具をスクラップにしてやりな!」

 

ユーゴにこれを防ぐ手立てはなく、攻撃力3000の大型シンクロモンスターは為す術なく破壊された

 

「ぐっ…!」

「「デビルズ・ストリングス」で攻撃!『デビルズ・ブレード』!」

「罠カード発動!「ダイスロール・バトル」!」

 

そして「デビルズ・ストリングス」が手に持った凶器をユーゴに振り下ろす瞬間、罠カードが光り輝いた

 

「「ダイスロール・バトル」は相手モンスターの攻撃宣言時に、墓地の「スピードロイド」モンスター1体を対象として発動出来る!そのモンスターと俺の手札の「スピードロイド」チューナーをゲームから除外する事で、その2体の元々のレベルの合計と同じレベルを持つシンクロモンスター1体を、EXデッキから特殊召喚する!俺は墓地の「マッハゴー・イータ」を選択し、手札のチューナーモンスター「SR電々大公」と一緒にゲームから除外!」

『「マッハゴー・イータ」のレベルは5、「電々大公」のレベルは3…レベルの合計は8!』

 

「電々大公」が3つのリングに変化して「マッハゴー・イータ」を潜らせ、シンクロ召喚のようなエフェクトが煌めく

 

 

「神聖なる光蓄えし翼煌めかせ、その輝きで敵を討て!」

 

 

「出でよ!レベル8!「クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン」!!」

 

 

地獄の人形達から護るように、水晶の白竜がユーゴの前に突如現れた。しかもその隙にアクションマジック「ハイジャンプ」を拾うという動作もし、IVはそれを見逃さなかった

 

『なんとユーゴ!ここで「クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン」を召喚しました!これには「デビルズ・ストリングス」も攻撃を躊躇してしまっています!』

「そいつがテメェの切り札か。だが、そんな大層なモンスターすらも俺の前では演者の1つに過ぎねえって事を思い知らせてやる…攻撃は中断!カードを1枚伏せて、ターンエンドだ!」

 

「クリスタルウィング」は、1ターンに1度相手モンスターの効果発動を無効にし破壊する効果と、1度だけバトル中のレベル5以上の相手モンスターの攻撃力を吸収する効果を持っている

 

後者は今は意味がないが、前者のみでも強力で厄介な能力。だが、それでもIVからすれば「処理が面倒なモンスター」の1体に過ぎない

 

「俺のターン、ドロー!俺はチューナーモンスター「SRアクマグネ」を召喚!」

 

磁石のモンスターがフィールドに現れる。すると頭部にある2つのU字型磁石を「テラー・ベビー」に向け、引っ張り出す

 

「「アクマグネ」はメインフェイズに召喚・特殊召喚に成功した時、相手フィールドのモンスター1体と「アクマグネ」とで、シンクロ召喚を行う事が出来る!俺はレベル4の「テラー・ベビー」を使ってシンクロ召喚するぜ!レベル4の「ギミック・パペットーテラー・ベビー」に、レベル1の「アクマグネ」をチューニング!」

 

「その躍動感溢れる、剣劇の魂!」

 

「シンクロ召喚!!」

 

「出でよ!レベル5!「HSRチャンバライダー」!!」

 

HSRチャンバライダー

レベル5 ATK2000

 

「「チャンバライダー」は2回攻撃する事ができ、更に戦闘を行う毎に攻撃力を200ポイントアップさせる!これならお前のモンスターを全滅させられるぜ!」

「どうかな?」

「ッ…バトル!「クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン」で「ギミック・パペットーデビルズ・ストリングス」を攻撃!アクションマジック「ハイジャンプ」!「クリスタルウィング」の攻撃力は1000ポイントアップだ!」

『これで「クリスタルウィング」の攻撃力は4000!「デビルズ・ストリングス」を破壊出来ます!』

 

「『烈風の、クリスタロス・エッジ』ィ!!」

 

曇天の中、光り輝き飛び交う水晶竜が軌跡を描き、「デビルズ・ストリングス」に突撃して

 

「……へっ」

「っ!?」

「罠カード「くず鉄のかかし」!相手モンスター1体の攻撃を1度無効にする!」

 

…しかし「クリスタルウィング」の渾身の一撃は、「デビルズ・ストリングス」を庇うように突然出現したボロボロの案山子によって止められてしまった

 

「更に!「くず鉄のかかし」は発動後、墓地に送られず再び俺のフィールドにセットされる!」

「何ぃ!?」

『それって、何度でもユーゴのモンスターの攻撃を止められるって事!?』

「安心しな。罠カードの性質上、「くず鉄のかかし」は再セットしたターンには発動出来ない。それでも、このカードがある限りユーゴ、お前は必ず1度は攻撃が止められるという訳だ」

「なら、「チャンバライダー」で「ファナティクス・マキナ」を攻撃!これなら…!」

 

そのユーゴの追撃を見たIVは落ちていたアクションカードを拾い、悪魔のような笑みを浮かべて即座に発動した

 

「「回避」で攻撃を無効にしても、「チャンバライダー」は2回攻撃出来るぜ!」

「誰が「回避」を使うって言ったよ?」

「え?」

「アクションマジック「誘導灯」!相手が攻撃宣言した時、攻撃対象のモンスターを俺が選択する!」

「何!?って事はまさか…!」

「俺が選ぶのは当然…「デビルズ・ストリングス」!」

 

「チャンバライダー」は攻撃対象を強制的に変更させられ、飛んで火に入る夏の虫の如く「デビルズ・ストリングス」に向かって無謀な突撃をする

 

ATK2000→2200

 

攻撃力が上昇するが、「デビルズ・ストリングス」の前では意味のない変化に過ぎない

 

ザンッ!

 

「うわぁ!!」

 

それでも攻撃力が「デビルズ・ストリングス」にはギリギリ届かず、無惨にも返り討ちにされた

 

LP3000→1900

 

「ッ…!墓地に送られた「チャンバライダー」の効果で、除外されている「マジックハウンド」を手札に戻す!俺はカードを3枚セットして、ターンエンド!」

「俺のターン!フフハハハハハ…記念すべき4(IV)ターン目だ。覚悟はいいかぁ!?コモンズのクソガキ!」

 

 

そのセリフを中継越しに聞いていたコモンズを率いるシンジとその仲間達は、拳を握り固めて怒りに震える

 

「クソ野郎が…!あのユーゴってガキを嬲り殺しにして、俺達の革命の気勢を削ぐ気か!?」

「コモンズをバカにしやがって!!」

「IVの野郎をやっちまえー!!」

 

しかしそんな浅い強がりは、即座に潰える事になるのをシンジ達は知る由もない

 

 

「「デビルズ・ストリングス」の効果!ORUを1つ使い、相手フィールドのモンスター全てにストリングスカウンターを1つずつ置く!もっとも、お前のモンスターは1体だけだがな…そしてエクシーズモンスターである「デビルズ・ストリングス」をリリースし、手札から「ギミック・パペットーナイトメア」を特殊召喚!」

『わざわざ攻撃力の高い「デビルズ・ストリングス」をリリースして、攻撃力1000のモンスターを特殊召喚?』

「「ナイトメア」はこの方法で特殊召喚に成功した時、手札か墓地から同名モンスター1体を特殊召喚出来る!俺の墓地には前のターンに「ブラッディ・ドール」の効果で特殊召喚した「ナイトメア」がいる。よってこいつを特殊召喚!」

 

分身するように増えた「ナイトメア」を見て、ユーゴとユートは警戒を強める

 

『またレベル8のモンスターが2体…』

「俺は「ギミック・パペットーナイトメア」2体でオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚!再び現れよ!「No.40 ギミック・パペットーヘブンズ・ストリングス」!!」

「こいつも2体目かよ!」

「「ギミック・パペット」エクシーズモンスターが特殊召喚された事により、墓地の「ファンタジクス・マキナ」を特殊召喚し、「アージェント・カオス・フォース」を回収する!そして「RUMーアージェント・カオス・フォース」を発動!「ファンタジクス・マキナ」1体でオーバーレイネットワークを再構築!カオスエクシーズ・チェンジ!

 

「現れろ!「CNo.15 ギミック・パペットーシリアルキラー」!!」

 

「「シリアルキラー」の効果!ORUを1つ使い、相手フィールドのカードを1枚破壊する!俺が破壊するのは…右のリバースカードだ!」

『IV、リバースカードを破壊しにいった!』

 

高速回転する丸鋸が無慈悲にカードを切り刻もうとした瞬間、破壊対象のカードが動いた

 

「トラップ発動「ダメージ・ダイエット」!このターン俺が受けるあらゆるダメージを半分にする!ううっ!」

 

ユーゴにカードの効力を及ぼした直後、バラバラにされた「ダメージ・ダイエット」の衝撃がユーゴのDホイールを揺らす

 

「チッ、運のいい奴め!だが無駄な抵抗もこれまでだ!「ジャイアントキラー」の効果!ORUを1つ使い、「クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン」を破壊する!」

『ユーゴ、「クリスタルウィング」の効果を使うな!もしIVの手札に「デビルズ・ストリングス」を呼び戻せるカードがあれば、俺達は確実に負ける!』

 

ユートはORUの「ファンタジクス・マキナ」を墓地に送った事よりも、「デビルズ・ストリングス」が効果を使ってカウンターを置きつつ「ナイトメア」のリリース要員として「デビルズ・ストリングス」を墓地に送った事の方が重要だと察していた

 

もしここで「ジャイアントキラー」に対し「クリスタルウィング」の効果を使えば、ストリングスカウンターの乗った無防備な「クリスタルウィング」が残る。そして「デビルズ・ストリングス」が出てくれば、「クリスタルウィング」の攻撃力分3000ポイントの効果ダメージを受ける事になり、「ダメージ・ダイエット」で半分にしてもIVの総攻撃と合わせれば、ユーゴのライフは確実に削り切られて敗北してしまう

 

これはシンクロ使いのユーゴではそこまで思い至れなかった、エクシーズ召喚のエキスパートであるユートだからこそ気づけた事実だ

 

「ぐ…!「クリスタルウィング」の効果は…使わない!」

「ほう?」

『ええ!?効果を無効にしないの!?』

 

下された非情な決断を同調するように、「ジャイアントキラー」の糸は「クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン」を捕獲し、悲痛な咆哮を上げながら破砕機の中に飲み込まれていく

 

(俺の手札を読み切ったか)

 

IVの手札、その中には「ギミック・パペット」専用蘇生カード「ジャンク・パペット」の存在があった

 

もし「ジャイアントキラー」のモンスター効果が無効、破壊されていれば、ユートの推測通り「ジャンク・パペット」のカード効果で墓地の「デビルズ・ストリングス」は蘇生され、より追い詰められていただろう

 

「しかし、俺の「ギミック・パペット」達の総攻撃に果たして耐えられるかな!?「ファナティクス・マキナ」を攻撃表示に変更し、バトルフェイズ!「ヘブンズ・ストリングス」でダイレクトアタック!」

『この攻撃が通ってしまえば、ユーゴの負けとなる!』

 

迫る「ヘブンズ・ストリングス」を前に、ユーゴは決して焦らずリバースカードを起動させる

 

「手札の「マジックハウンド」をコストに、速攻魔法「SRルーレット」を発動!」

(また記憶にねえカードか…)

「サイコロを1回振り、レベルの合計が出た目の数と同じになるように、手札・デッキから「スピードロイド」を2体まで効果を無効にして特殊召喚する!ただし、モンスターを特殊召喚出来なければ、俺は出た目の数×500ポイントのライフを失うことになる!」

『ここで賭けに出てきました!もしモンスターを2体特殊召喚する事が出来れば、IVの総攻撃を耐えられるかもしれません!』

「いっけえええ!!ダイスッロール!!」

 

振られるサイコロ。緊張で汗ばみ、心臓が早鐘を打つ中、転がったサイコロの目は…

 

「出た目は…5だ!よってデッキから、レベル1の「SRーOMKガム」とレベル4の「SRメンコート」を守備表示で特殊召喚する!」

「当てたか…!しかも攻撃力の低いモンスターばっか呼びやがって!」

 

「OMKガム」は0、「メンコート」は100と非常に攻撃力が低く、「ファナティクス・マキナ」による効果破壊のダメージをユーゴはしっかりとケアしていた

 

「ならば「ファナティクス・マキナ」の効果だ!特殊召喚された2体の内、「メンコート」を破壊しその攻撃力の半分のダメージを与える!」

 

そのダメージはたったの25。ユーゴのライフをほんの僅かに削る程度に収まった

 

LP1900→1875

 

「攻撃を続行しろ「ヘブンズ・ストリングス」!「OMKガム」を攻撃!『ヘブンズ・ブレード』!!」

 

攻撃力3000に一刀両断される「OMKガム」

 

「ぐぅ!」

「「ファナティクス・マキナ」でダイレクトアタックだ!『ドゥームズ・ダンス』!!」

「墓地の「三つ目のダイス」をゲームから除外し効果発動!相手モンスターの攻撃を無効にする!」

 

墓地の穴から飛び出してきた4面サイコロのモンスターが壁になり、極悪な鞭を受け止める

 

「しかしまだ俺には「シリアルキラー」の攻撃が残っている!「シリアルキラー」の攻撃!」

「っ!」

 

ユーゴは一か八か、アクションカードによる防御を試みようとカードを拾う。しかし拾ったカードは「回避」などの防御カードではなく、攻撃用のカード

 

「クソッ、このカードじゃ…ハッ!」

 

 

「『ジェノサイド・ガトリング・バースト』!!」

 

 

展開した顔面から伸びてきた黄金の機関銃。その砲塔が高速回転して唸りを上げ、ユーゴのDホイールに向かって弾丸の嵐を叩き込む

 

「ぐわあああああっ!!」

 

衝撃のあまりDホイールがバランスを崩し、激しく蛇行する。それでもクラッシュせずに持ち直せるのは、ユーゴのDホイーラーとしての天性の素質故か

 

LP1875→625

 

「ヒャーハハハハハ!!踊れユーゴォ!死のダンスを!」

「ぐぅぅぅ…!」

「フィールドにはチンケな伏せカードが1枚、手札は使えないアクションカード1枚!そのザマでどうやって俺の「ギミック・パペット」達を攻略し、ライフを削り切るんだぁ?…俺はこれでターンエンド!さあ、テメェのラストターンだぜ!」

『フィールド、手札、ライフ!そのどれもを圧倒的にリードしているIV!!ユーゴ、絶体絶命のピーンチ!!』

 

しかもIVの場には「ファナティクス・マキナ」も残っている。下手に高い攻撃力のモンスターを呼び出せば、逆に自身の首を締める羽目になる

 

(さて…どうやって乗り越える?ユーゴ、ユート)

 

 

「クソォ!もう、ダメだ…!」

『…ユーゴ、まだ諦めるな…』

「っ!!他人事みたいに言ってんじゃねえよ!手札は実質0枚!リバースカードもこの状況で使えるものじゃねえ!IVに勝つ所か、時間を稼ぐ事すらもう出来ねえ…!」

 

楽観的なユーゴもこの絶望的な盤面には歯を食いしばって悔しがる。しかし、そんなユーゴに対してユートが投げ掛けたのはある疑問だった

 

『…IVは、本当に時間を稼ぐ事が目的だったのか…?』

「あぁ?何言ってんだよ…」

『もし時間を稼ぐ事が目的なら、わざわざデュエルの体裁を整えてやる必要などない。手段を選ばない彼の性格ならば、ひたすら遅延行為に徹してデュエルを長引かせるはずだ。ブーイングされても、彼はその程度で怯むような男ではない…』

「何が言いたいんだよ…」

『彼は意図的に俺達を倒さず、ギリギリまで追い詰めようとしている。そして、それがIVの真の目的ならば…彼の狙いも自ずと見えてくる』

「………っ! おい、まさか!?」

 

ユーゴの脳裏に、怒りで暴走した遊矢の姿が思い浮かぶ

 

『そうだ。おそらくIVは…俺達の内に眠る、ズァークの力を引き出させようとしている』

「なんでそんな!?」

『昨晩、IVが言っていただろう』

 

『ズァークをどうにかしたいってんなら、デュエルをやめるんじゃねえ。逆にデュエルしまくって、お前の中にあるズァークの力を完全にコントロール出来るようになるしか手はねえ』

 

「あっ…!」

『IVは、俺達に覇王龍の力をコントロールする術を身につけさせて、それを遊矢に伝授させる…それが彼の本当の目的だ。ここまで圧倒的な盤面を形成しているのも、万が一俺達が暴走した時に、すぐさま対処出来るようにする為なのだろう…』

「あいつ、そんな事を考えて…!」

 

そこまで言い切って、ユートは問い掛けた

 

『だが…それだけで良いのか?』

「え…?」

『何もかもIVの計算通り…しかし、それだけの力で、本当にズァークと立ち向かえるのか?』

 

漆黒の瞳がユーゴを貫く

 

『俺達は、IVの予測を超えた力を身につけなければならない…そして、今の遊矢に本当に必要なのは単純な力ではない。ズァークという闇に立ち向かう為の、“勇気”だ』

「“勇気”…」

『今遊矢は、ズァークという闇に支配され、前に進めなくなっている。その前に進む為の“一歩”を踏み出す“勇気”を、俺達で遊矢に示してやるんだ!』

 

ユートが提示した“勇気”の証明。それには自分達もズァークという名の『闇』に飲まれる危険が付き纏っている

 

しかしユーゴは破顔し、肯定してみせた

 

「…そうだな!こんな程度で諦めるなんて俺らしく、いや…「俺達」らしくねえよな!!」

『覚悟はいいな、ユーゴッ!!』

「当たり前だぜ!!俺の、タァァァン!!」

 

体と心の内にある力を探りつつ、カードをドローした

 

 

ドグンッ!!

 

 

「ぐっ!?」

 

瞬間、闇が溢れた

 

「ガッ!? アアアアアッ!!」

「これは…!」

『ちょ、ちょっと何これ!?前が見えないじゃない!』

 

突如現れた闇の奔流。それが竜巻と化してユーゴとIVを閉じ込め、Dホイールの動きに追従していく

 

ユーゴの目が煌々と光を発しているのを見て、かつてスタンダード次元で遊矢を追い詰めた際に起きた出来事がIVの脳裏に過ぎる

 

「ズァークの暴走か!」

「俺は墓地の「スピードリバース」を除外して効果発動!墓地の「SRダブルヨーヨー」を手札に戻し、「ダブルヨーヨー」を召喚!そして召喚時効果で、墓地のチューナーモンスター「赤目のダイス」を特殊召喚!特殊召喚に成功した「赤目のダイス」の効果!「ダブルヨーヨー」のレベルを2に変える!」

 

4→2

 

「レベル2だと?」

「レベル2の「ダブルヨーヨー」に、レベル1の「赤目のダイス」をチューニング!」

 

 

「その弾丸で未開を貫き、新たな力へと導け!」

 

 

「シンクロ召喚!!」

 

 

「現れよ、レベル3!シンクロチューナー「HSRコルクー10」!!」

 

 

HSRコルクー10

レベル3 ATK500

 

「なんだと…!?「スピードロイド」のシンクロチューナー!?」

 

それは、IVにも完全に未知なモンスターの登場だった

 

「「コルクー10」のモンスター効果!シンクロ召喚に成功した時、このカードのシンクロ召喚に使われた素材一組が全て俺の墓地に存在すれば、その一組を特殊召喚する事が出来る!」

「何!」

「蘇れ!「ダブルヨーヨー」!「赤目のダイス」!」

 

墓地から復活する2体のモンスター。そして特殊召喚した事で「赤目のダイス」の効果が再び起動する

 

「「赤目のダイス」の効果!「ダブルヨーヨー」のレベルを、今度は6に変更する!」

 

4→6

 

「これは…まさか!」

「レベル6となった「ダブルヨーヨー」に、レベル1の「赤目のダイス」をチューニング!」

 

 

「その美しくも雄々しき翼翻し、光の速さで敵を討て!」

 

 

「シンクロ召喚!!」

 

 

「出でよ!レベル7!「クリアウィング・シンクロ・ドラゴン」!!」

 

 

『グオオオオオオオ!!』

 

 

荒々しい咆哮を上げながら現れる「クリアウィング・シンクロ・ドラゴン」。ユーゴの暴走の影響が、どこか禍々しい雰囲気を醸し出している

 

「クソ…これ以上は危険か!止めるしかねえ!」

 

ギリギリまで待っても暴走が収まる兆しが見えない以上、一刻も早くデュエルを終わらせてズァークを抑え込む必要がある。遊矢の時とは事情が違う。既に1度統合が果たされた以上、統合の危険性などと悠長な事を考えている余裕はなかった

 

だからこそIVは追い詰めつつも、フィールドに「ファナティクス・マキナ」、墓地に「サービスト・パペット」がある状況を作り出していた。これで墓地の「デビルズ・ストリングス」をユーゴのフィールドに特殊召喚して効果破壊からダメージを与えれば、「ダメージ・ダイエット」で半分にしても825のダメージが与えられ、ユーゴの敗北となる

 

「墓地の「サービスト・パペット」の効果を…」

「『ま……て……ふぉ……お……!』」

「!?」

 

しかし、そのIVの行動は、他でもない暴走しているはずのユーゴと、重なるように聞こえてくるユートの声が止める

 

「『ズァークの、力は…必ず…俺達で抑えてみせる…!』」

「もう無理だ…テメェに何が出来る!」

「『信じて、くれ…!俺の…俺達の…“勇気”を…俺達の、“絆”の力を…!!』」

「!!」

(絆…勇気…)

 

その2つのワードは図らずしも、遊戯王5D′sと遊戯王ZEXALのテーマを表す言葉。人々を繋ぐ“絆”と、チャレンジ精神を励起させる“勇気”。それがシンクロとエクシーズの使い手であるユーゴとユートが発するとは…

 

IVは、運命を感じずにはいられなかった

 

 

 

現実逃避するように布団に埋もれていた遊矢は、胸の内から湧き上がる不安を感じ、モニターを見た

 

『どうなってんのこれぇ!?急に出てきた竜巻みたいなののせいでデュエルの実況が出来ないじゃなぁい!』

 

メリッサの悲鳴のような声が響く。超常現象のように突如現れたその竜巻の正体が、遊矢には分かってしまった

 

あれが、暴走した覇王龍の力だということが

 

「ユーゴ…!ユート…!」

 

己と同じく運命を背負わされた2人の少年の身を案じつつも、遊矢の中にあったのは…1つの諦観だった

 

「やっぱり…俺達にズァークの力を抑えることなんて…!」

 

『諦めるな!遊矢!!』

 

「えっ…!?」

 

響くように聞こえてきた声。この場にいるはずがない声。しかしそれは確かに…遊矢の心に響いてきた

 

「ユーゴ…ユート…?」

 

 

 

ユーゴの肉体の内側にある精神世界…

 

『『うわあああああああっ!?!?』』

 

そこで、ユーゴとユートは押し寄せる暗黒の濁流に押し流されそうになっていた

 

『これが、ズァークの闇…!?』

『遊矢の奴、こんなヤベーのとたった1人で戦ってたのかよ…!』

 

悲しみ、怒り、諦観、失望………憎しみ

 

それらが形となって2人のへばりついて真っ黒な泥の底に引きずり込もうとするのを、必死に引き剥がして、がむしゃらに腕を動かし、見えない光を信じて突き進む

 

(遊矢…お前は俺達に光を見せてくれた…)

(俺達の代わりにズァークと戦ってくれた!)

((だから!!))

 

Dホイールに乗っている時と同じ、いやそれより遥かに速く加速し続けながら、2人は合わせて手を伸ばす

 

(俺達が、まだ誰も見たことのない明日へ…!!)

お前(遊矢)を連れて行く風になる!!)

 

 

『『うおおおおおおおっ!!!』』

 

 

2人は、いつの間にか光の中にいた

 

闇は一切感じない。穏やかな光と心地よい風だけがあった

 

(俺達の身体が、スピードの世界に溶けていく…)

(風と1つに…)

 

そして…開かれた瞼、その瞳が捉えたのは…

 

1枚の白紙のカード

 

 

 

「闇が…消えた…?」

 

 

 

 

 

心の「雫」が落ちた

 

 

 

 

 

「『クリアマインドッ!!』」

 

 

 

「『レベル7シンクロモンスター「クリアウィング・シンクロ・ドラゴン」に、レベル3シンクロチューナー「HSRコルクー10」をチューニング!!』」

 

 

 

「何!? “()()()()()()()”だとッ!?」

 

ポンッ!ポンッ!ポンッ!と

 

小気味の良い銃声と共にコルク弾を括り付けていた光の糸が巨大な翠の光輪になり、Dホイールと追従する白竜の道と化して、2つの存在が赤熱化するように赤くなり、加速する

 

 

 

「『新たな地平へ誘う翼輝かせ、嵐の如く敵を討て!!』」

 

 

 

そして、加速が最高潮へと達して瞬間

 

 

 

『アクセルシンクロォオオオオ!!!』

 

 

 

白紙のカードが粒子に包まれ、()()()()瞬間

 

ブゥン…!

 

ユーゴの乗るDホイールと「クリアウィング・シンクロ・ドラゴン」の姿が掻き消えた

 

「消えた…!?ハッ!!」

 

それを見たIVが()()()()()()()()()()()

 

後方に突如現れた光の輪の中から、Dホイールと『新たなモンスター』が飛び出してきた

 

 

 

「『煌来せよ!!レベル10!!』」

 

 

 

「『「クリスタルクリアウィング・シンクロ・ドラゴン」ッ!!』」

 

 

 

白い巨体が嵐を突き破り、吹き飛ばして、飛来する

 

『え!?』

 

メリッサが、コモンズが、トップスが、ランサーズが…多くの者達が目撃した

 

大きく宙返りしつつ、きりもみ回転をしながら曇天を掻き分け更に上昇し…天に辿り着いた瞬間()()を中心に灰色の雲が消し飛び、朝日と共にその全容を現す

 

一回り大きくなり、アーマーパーツも巨大で頑強化し、尾に至っては上半身の2倍以上の長さになっている。そして光を乱反射させるクリスタルの翼は見る者を魅了させ、その威容を照らし続ける

 

新たな地平へ到達出来た者のみが召喚出来る、「クリアウィング・シンクロ・ドラゴン」の進化した姿だった

 

クリスタルクリアウィング・シンクロ・ドラゴン

レベル10 ATK3000

 

「なんだ…!?これは…!?」

 

完全なる未知のモンスター、それも「クリアウィング」の進化態の登場に思考がフリーズするIV

 

それに対して「クリスタルクリアウィング」を背後に、理性を取り戻したユーゴとユートが答える

 

「『これが俺達の新たな力「クリスタルクリアウィング・シンクロ・ドラゴン」だ!!』」

 

 

“キング”ジャック・アトラスは玉座から立ち上がって、信じられないといった表情をする

 

「これは…俺とは違う、しかし同じ高みの…」

 

 

一部始終をモニター越しに見ていた遊矢と柚子が、それぞれ呟く

 

「温かくて、優しい…ズァークの闇の力じゃない…」

 

「絆と、勇気の光…」

 

 

場所は変わって融合次元…そこに移動させられていたユーリと、気絶する中運ばれていたセレナは何かを感じ取った

 

「これ、は…」

「う…ん…」

 

 

そして同じく融合次元にて…別々の塔に幽閉されていた2人の少女は、同じタイミングでそれぞれ感じ取っていた

 

「ユーゴ?」「ユート?」

 

 

「『行くぜ!「クリスタルクリアウィング」!!』」

『グォォオオオオオオン!!』

 

新たな境地に辿り着いた竜が、勝利の雄叫びを上げた




9話ぶりに書きたい事全部詰め込んで、驚異の1万3000字越えです
満足…したぜ…
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