ファンサービスは僕のモットーですから   作:ジャギィ

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瞬間日刊1位になれました。ファンの皆、ありがとう!!


やっぱりデュエル書くのが1番時間掛かるね。筆がノリにノッてて2日も掛かったもん
でも皆が満足出来るファンサービスを届けますので、楽しんでください!


第3話

IVと赤馬零児の間で不可侵条約が締結してから数週間が経ったある日

 

プロデュエリストのチャンピオンであるストロング石島の記念日に、かつてエンタメデュエルのパイオニアにして、チャンピオンでありながら失踪して行方不明になった榊遊勝の息子、榊遊矢がストロング石島とデュエルする事が公表された

 

プロのチャンピオンとただの中学生では勝負にならず、誰もが一方的なデュエルで終わると予想していた…

 

しかし、デュエルの最中に謎の力を覚醒させた榊遊矢は『ペンデュラム召喚』を開拓、見事逆転勝利を収めるのであった

 

 

当然、それを黙って見ているLDSではなかった

 

全く未知の召喚方法。それは来たるアカデミアとの戦いにおいて、大きな武器となり得る

 

だからこそ、最近舞網市で多発している謎の人物による“LDS襲撃事件”を利用し、ペンデュラム召喚を有する遊勝塾を乗っ取るべく赤馬日美香は遊矢達に対してデュエルを申し込み、その決着は榊遊矢と赤馬零児による延長戦にまでもつれ込んだ…

 

 

 

遊矢vs零児のデュエルは終局に差し掛かっていた

 

ペンデュラム召喚が組み込まれた「EM(エンタメイト)」を使う遊矢に対して、零児が使用するは融合・シンクロ・エクシーズを自在に操る「DD」デッキ。強力な「DDD」モンスターに追い詰められながらも、ペンデュラムモンスターで逆境を跳ね返す遊矢

 

だが、なんと逆転された零児は遊矢だけしか持っていないはずの、LDSが自ら開発した新しいペンデュラムカードすらも使い始め、「DDD死偉王ヘル・アーマゲドン」3体同時召喚で再び遊矢を追い立てる

 

自分だけのアイデンティティ、自分だけのペンデュラムを他の者が使い、強いショックを受ける遊矢。しかし未完成のペンデュラムカード故にデュエルディスクがエラーを起こし、零児のフィールドはがら空きになった

 

「フフフ……そういうことか……」

 

それすらも重畳と言わんばかりに、手で顔を隠しながら静かに笑う零児

 

「ペンデュラムにはまだまだ先がある──」

「社長!!」

 

その時、中島が零児に大声で呼びかけた。電話を片手に持って、緊迫した表情で今伝えられてきた情報を伝える

 

「先程、強力なエクシーズ反応を2()()確認でき、捜索班が向かったところ…!」

「………何…!?」

 

その報告を聞いた零児は目を見開いて驚愕する。今まで冷静沈着な表情ばかりだった故に、その変化には対戦相手の遊矢のみならず、観戦していた遊勝塾サイドの皆や、彼らとのデュエルの為にやってきたLDS首席組達も驚いた

 

「…急用が出来た。榊遊矢、このデュエル、別の機会に預けよう」

「ま、待て赤馬零児!!どうしてお前が俺のペンデュラムを…!」

「不思議なことではない」

「え!?」

「融合、シンクロ、エクシーズのいずれも珍しいものだが、やがて世界中のデュエリストが自由に扱えるよう目指している。昔は金持ちしか持てなかった電化製品が、今では世界中で普及しているように……ペンデュラム召喚も同じに過ぎない」

 

焦燥とした顔で叫ぶ遊矢を見て、零児は親切心と…ある種の投資のつもりで彼に言った

 

「榊遊矢、ペンデュラムを独占しなければ維持できないエンタメデュエルなど、1つのマジックだけが取り柄の手品師と同じようなもの…いつか普遍化し、廃れ、人々から忘れ去られるだけだ」

「そ、そんな事…!」

「君の父君がアクションデュエルの先駆者であり続けたように、君もペンデュラム召喚の先駆者であり続けるべきなのだ。そうでなければ、榊遊勝を超えるエンタメデュエリストなど、夢のまた夢だ」

「ッ…!?」

「IVという男を調べるがいい。彼はおそらく、榊遊勝にもっとも近いデュエリストと言えるだろう」

 

失礼する、と一言告げて立ち去る零児の背中を、遊矢は見ていることしか出来なかった。そして、彼の中に1つの名前が刻まれる

 

「IV…父さんに、もっとも近いエンタメデュエリスト…」

 

 

「中島、先の報告は確かか?」

「ええ、日美香様が何度も確認を取っていましたので、まず間違いないかと…」

「そうか…」

 

いつもより揺れを感じるリムジンの中でそう呟きながら、赤馬零児は留守にしていたレオ・コーポレーションからの報告を頭の中で反芻する

 

 

 

“LDS襲撃犯と思わしき男を、IVが捕縛したとの事です…!”

 

 

 

刻は2時間ほど遡る

 

今日も今日とてファンサービスに精を出すIVは、帰りの道中マルコと呼ばれるLDS融合コースの講師に絡まれていた。周囲には彼に付いてきていた女子の教え子も何人かいた

 

内心鬱陶しいと思いながらも何とか紳士的な仮面で相手して、適当なところで切り上げて帰ろうとしたところで…その男が現れた

 

ザッ

 

「お前達…LDSだな?」

「うん?」

「…何?」

 

IVは視認したその姿を分析する。まだ手前とはいえ、6月も近づいているこの時期に厚手のコートを着て真っ赤なスカーフで口元を隠し、サングラスを付けた怪しげな男。

 

どう見ても黒咲隼(不審者)であった

 

「LDSならば、俺と戦え」

「…えっと、僕はLDS所属ではありませんので…」

「何言ってるんだい?君は赤馬社長のお墨付きで何度もぼくらと一緒に教え子達にデュエルを教えてるじゃないか。君はもう立派なぼく達(講師)の仲間だよ」

 

(このロリコンナルシスト、余計なこと言いやがって!)

 

思わず素でキレそうになるIVだった

 

「ほう…つまりお前は赤馬零児にとってそれほど重要な存在だという事か。ならばお前を人質にすれば、赤馬零児を誘き寄せる餌に出来るわけか」

「人質だなんてそんな野蛮な…ここは穏便に話し合いで──」

 

直後、俊敏な動きでIVの懐に入り込んだ黒咲が手刀を繰り出す

 

それをIVは事もなげに片手で掴み取った。思わず振りほどこうとするが、人間とは思えない握力で手首を離さず、万力めいた力に黒咲は苦悶の表情を浮かべる

 

「ぐっ…!?貴様…!」

「暴力はいけません」

 

IVの嗤った顔が黒咲の神経を逆撫でする。手を離すと黒咲は後ずさりながら追撃を諦め、掴まれた手首を押さえながら猛禽類を彷彿とさせる眼光でIVを射抜く

 

「君はおそらく、噂に聞くLDS襲撃犯ですね?」

「…だったらどうした」

「君の望み通り、デュエルをしてあげましょう。君のような危険人物を放っておいては、僕の大切なファンの人達も傷つくかもしれない。だから僕が勝てば、大人しくLDSに捕まってください。代わりに君が勝てば、僕のことを煮るなり焼くなり好きにすればいいさ」

「…いいだろう。LDSは、この俺が全て倒す!」

「だから僕はLDSではないと言ってるのに…」

 

そう言いながら薄暗い裏路地に足を運び、視線で黒咲に付いてくるように促す

 

「目立つところでデュエルするのは、君も本意ではないでしょう」

「………」

「ま、待ってくれIV君!そんな危険人物を、まだ子供の君が相手をするのはダメだ!ここは私が…!」

「マルコさん。貴方に何かがあれば、貴方の大切な教え子達が悲しむ事になります」

「うっ…」

「ここは僕に任せて、貴方はレオ・コーポレーション本社にこの事を伝える為に逃げてください」

 

これは方便だった。もし黒咲隼の実力が自分の想像以上だった場合、本気を出さざるを得ないかもしれない。IVの本気を知る人間は少ない方がいいと考えての提案だったが、マルコはその軽薄そうな言動と容姿に反する真剣な顔で悩み続け、決断したのか教え子達に言った

 

「君達、私の代わりにこの事を伝えて逃げてくれ!私は彼らに付いていく!」

「……は?」

「そんな、マルコ先生!?」

「彼の実力は疑っていないが、そう言って何人もの人達が行方不明になっているんだ。いざと言う時は私が盾になってでも、彼を守らねばならない」

「だったら私達もついていきます!」

「先生だけ危険な目に遭わせられません!」

「き、君達…!し、しかし…」

 

いきなり繰り広げられたマルコと女子生徒達による感動の寸劇……という名の茶番に、IVは怒りを通り越して呆れ果てた

 

「貴様らいつまでそうしている気だっ!時間を稼ぐつもりなら俺も手段を選ぶ気はない!」

 

そこへ黒咲の一喝。結果として、IVと黒咲のデュエルに、複数のギャラリーが追加される事になった

 

都合のいい広さの裏路地に到着し、闘志を漲らせる黒咲と対面するIVは、最悪社長に頼んで記憶を消してもらうか…などとデュエルに勝った後の事を考えるのだった

 

そしてデュエルディスクを構えたIVは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を浮かばせながら、相対する黒咲と合わせて宣言した

 

 

 

「「デュエル!!」」

 

 

 

「先攻は貴様からだ」

「では僕の先攻、「ギミック・パペットーシザー・アーム」を召喚」

 

両腕が身の丈ほどのハサミになっている縛られた不気味な人形が現れる。すると墓地の穴に1枚のカードを送られる

 

「「シザー・アーム」は召喚に成功した時、デッキから「ギミック・パペット」モンスターを墓地に送ることが出来ます。この効果で「ギミック・パペットーネクロ・ドール」を墓地に。僕はこれでターンエンドです」

「俺のターン、ドロー!俺は「RRーバニシング・レイニアス」を召喚!」

 

黒咲が召喚したのは、RR(レイド・ラプターズ)と呼ばれる鳥型のモンスター。鳥型と言っても純粋な鳥ではなく、鳥の姿をした機械のようなメカニカルなデザインのモンスターだった

 

「「バニシング・レイニアス」の効果発動!このカードは召喚・特殊召喚に成功したターンに1度、手札から「RR」モンスターを特殊召喚できる。「バニシング・レイニアス」を特殊召喚!更に2体目の「バニシング・レイニアス」の効果で、3体目の「バニシング・レイニアス」を特殊召喚!」

「一気に3体のモンスターを召喚するなんて、すごい!」

「「バニシング・レイニアス」で「シザー・アーム」を攻撃!」

 

機械鳥の爪が人形を粉砕する。「バニシング・レイニアス」の攻撃力は1400ポイント、そこから「シザー・アーム」の1200ポイントが引かれ、200ポイントの戦闘ダメージを受けたIVはライフの残りが3800ポイントになる

 

「くっ…「ギミック・パペット」と名のついたモンスターが戦闘で破壊された時、墓地に送られたそのモンスターをゲームから除外することで、手札から「ギミック・パペットーナイト・ジョーカー」を特殊召喚できる!」

 

新たに現れた人形は死神。その守備力は1600であり、1400の攻撃力では破壊できない数値だった

 

「壁を出したか…俺はこれでターンエンド!」

「僕のターン、ドロー!僕は2体目の「シザー・アーム」を召喚!効果で「キラーナイト」を墓地に落とし、手札以外から墓地に送られた「キラーナイト」のモンスター効果でこのカード自身を手札に戻す!そして永続魔法「一族の結束」を発動!このカードがフィールドに存在する限り、僕の墓地に存在するモンスターの元々の種族が一種類だけの場合、自分フィールドのその種族のモンスターの攻撃力は800ポイントアップする!僕の墓地には機械族の「ネクロ・ドール」が1枚だけある。よって「シザー・アーム」と「ナイト・ジョーカー」の攻撃力は」

 

ギミック・パペットーシザー・アーム

ATK1200→2000

ギミック・パペットーナイト・ジョーカー

ATK800→1600

 

「「ナイト・ジョーカー」を攻撃表示に変更して、バトル!「シザー・アーム」と「ナイト・ジョーカー」で2体の「バニシング・レイニアス」に攻撃!」

「……ッ……」

 

黒咲隼 LP4000→3200

 

「自分が戦闘・効果ダメージを受けた時、手札の「RRーアベンジ・ヴァルチャー」は特殊召喚できる!」

「モンスターを残してしまったか…!カードを1枚セット。これで僕はターンエンド」

「俺のターン!速攻魔法「サイクロン」!「一族の結束」を破壊!」

「うわっ!」

 

永続魔法による強化が途切れ、「ギミック・パペット」達は貧弱なステータスを晒すことになる

 

「バトルだ!レイド・ラプターズよ、そのデク人形共を葬れ!」

「僕の「ギミック・パペット」達は破壊させない!トラップ「メタバース」を発動!デッキのフィールド魔法を手札に加えるか、直接発動することが出来る!「地獄人形の館」発動!このカードがフィールドに存在する限り、僕の「ギミック・パペット」モンスターは戦闘では破壊されず、()()()()()()()()()()以外のモンスター効果を受けない!」

「ッ……!!」

 

フィールド魔法の最後の文面を聞いた瞬間、黒咲の表情が驚愕に染まり、そして次第に怒りの色を覗かせ始めた

 

「くぅぅぅ!」

 

戦闘ダメージこそ受けたものの、場のモンスターを残すことに成功したIVは、堪えた表情で踏ん張る

 

IV LP3800→2700

 

「…カードを1枚伏せて、ターンエンド」

 

恐ろしいほど静かなエンド宣言。その事をIVは訝しみながらも、デッキトップに指をかける

 

「僕のターン、ドロー!僕は、魔法カード…」

「ッ!!」

「…「コンドーレンス・パペット」を発動!デッキから「ギミック・パペット」モンスター1枚を墓地に送る!僕はデッキの…」

「──カウンター罠「ラプターズ・ガスト」!俺のフィールドに「RR」モンスターが存在し、相手が魔法カードを発動した時、その発動を無効にし破壊する!」

「なんだって!?」

 

状況を打破する為のカードはあっさりと無効化された。苦虫を噛み潰したような面持ちでIVは苦し紛れに2体のモンスターを守備表示に変更、手札の「キラーナイト」を墓地の「ネクロ・ドール」共々守備で出し、4体の守備モンスターを並べた。これで少なくとも次のターン、「地獄人形の館」を処理されても耐えられると考えての行動だった

 

「カードを1枚セット。ターンエンドだ」

 

しかし、エンド宣言したIVに対し、黒咲が問う

 

「どういうつもりだ……?」

「……?どう、とは…」

「──何故さっき、貴様は「融合」を使わなかったッ!!」

 

そのセリフを聞いたIVは理解する。その上で、まるで意味が分からないように首を傾げ、問い返す

 

「えっと…そもそも僕のデッキには「融合」が入っていませんから」

「とぼけるな!!そのフィールド魔法は、明らかにエクシーズモンスターの召喚を誘っている…つまり、エクシーズモンスターを『狩る』為の餌場!そんなカードを入れているなど、エクシーズ狩りを生業としているアカデミア以外に考えられない!!」

 

更に忌々しげに顔を歪めながら黒咲は言う

 

「そして、温厚な仮面で騙したつもりだろうが甘い…戦場を生き抜いた俺には分かる。貴様の本性は、人を傷つけ、苦しめる事を屁とも思わないゲスだという事がなっ!!」

「………へぇ。本当の俺をさらけ出す前に見抜いたのは爺さん以来だ。やるなぁお前」

 

IVは擬態をやめて、悪魔のデュエリストとしての顔を見せる

 

それに困惑するマルコと女子達。一部を除いた大勢の人々は、IVの恐ろしい姿がファンサービスの為の演技だと思っている為、悪魔の顔こそが本性だとは思ってもいない。それほどIVの普段の演技は完璧だった

 

「俺の演技を見破った褒美だ。お前には俺の最高のファンサービスでもてなしてやるよ」

「黙れっ!!俺はお前達アカデミアを決して許さない…!故郷を破壊し尽くし、多くの人々をカードに変え、妹までも奪ったお前達を…絶対にッ!

 

俺のッ、タァ───ンッ!!」

 

ゴゥ、と

 

カードを引いた腕の振りが強い風圧を生み出す

 

「自分フィールドに「RR」がいる時、「RRーファジー・レイニアス」は手札から特殊召喚できる!更に「ミミクリー・レイニアス」を召喚!召喚・特殊召喚に成功したターン、「ミミクリー・レイニアス」は俺の「RR」全てのレベルを1つ上げることが出来る!」

「レベル5のモンスターを4体だと…!?」

「俺はレベル5となった「バニシング・レイニアス」「ファジー・レイニアス」「ミミクリー・レイニアス」の3体でオーバーレイ!!」

 

 

「獰猛なるハヤブサよ!激戦を切り抜けしその翼翻し、寄せ来る敵を打ち破れ!!」

 

 

「エクシーズ召喚!!現れろ、ランク5!「RRーブレイズ・ファルコン」!!」

 

 

赤と黒の機械めいた隼。それが鳥類特有の高い鳴き声を上げながら、燃え盛る炎の中から現れた

 

RRーブレイズ・ファルコン

ランク5 ATK1000

 

「「ブレイズ・ファルコン」のモンスター効果!ORUを1つ使い、相手フィールドの特殊召喚されたモンスター全てを破壊する!」

「なんだと!?」

「そして、破壊したモンスター1体につき、500ポイントのダメージを与える!」

 

「ブレイズ・ファルコン」の範囲攻撃が「シザー・アーム」以外の3体を破壊し、その数×500…1500の効果ダメージをIVに与える

 

「ぐううう!!」

 

IV LP2700→1200

 

「まだだ!「ブレイズ・ファルコン」は相手に直接攻撃する事ができる!」

「……っ!?」

「行け!「ブレイズ・ファルコン」!!」

 

 

「迅雷のラプターズ・ブレイク!!」

 

 

「ぐわぁぁぁぁぁっ!!」

 

稲妻状のビームがモンスターを無視して、プレイヤーに直接襲い掛かる。リアルソリッドビジョンのような衝撃を受けたIVは大きく吹き飛ばされた

 

IV LP1200→200

 

「「ブレイズ・ファルコン」は戦闘ダメージを与えた時、相手モンスター1体を破壊する!「シザー・アーム」を破壊!」

 

これでIVのモンスターは全滅。それはつまり、残った「アベンジ・ヴァルチャー」のダイレクトアタックが通れば、IVが敗北する事を意味していた

 

「トドメだ!「アベンジ・ヴァルチャー」で──」

「やめてくれ!もう勝負はついただろう!!」

 

明らかにソリッドビジョンでは有り得ない、ボロボロになったIVの姿にマルコは居ても立ってもいられず手を広げて黒咲の前に立つも、その程度で止まる黒咲ではない

 

「邪魔をするなぁ!!」

「うわあああ!?」

『先生!!』

 

実体化したモンスターに吹き飛ばされるマルコ。その隙に黒咲は最後の攻撃を敢行する

 

「「アベンジ・ヴァルチャー」でダイレクトアタック!!」

 

 

ドォォォン……!!

 

 

コンクリートが砕け、地面が揺れる。モンスターの攻撃が最後まで行われた証拠だった

 

 

「見事だぜ…この俺をここまで追い詰めるとはな」

 

 

「何っ!?」

 

だが、まだデュエルは終わっていなかった

 

舞い上がった砂煙が晴れると、そこには燃える牛型の人形と赤髪の人形が存在していて、その内の赤髪の人形に嘴が突き刺さり、粉々に砕け散っていった

 

IVは無事だった。服装こそズタズタだが、その実傷一つ付いてない。ダメージの瞬間にモンスターを実体化させて肩代わりさせていたからだ。この程度の攻撃ではモンスターにかすり傷も付けられない事をIVは把握している

 

「俺は罠カード「傀儡葬儀(くぐつそうぎ)ーパペット・パレード」を発動したのさ。こいつは俺のモンスターの数が相手より少ない時、その差だけ異なる種類の「ギミック・パペット」をデッキから特殊召喚できるカード。更に相手よりライフが2000以上少なければ、()()()()()()()もフィールドにセットできる」

「それでダイレクトアタックを防いだのか…!」

「しかも戦闘破壊された「ブラッディ・ドール」は…おっと、さっき破壊された「キラーナイト」もだな。こいつらは手札以外から墓地に送られた為、俺の手札に戻ってくる」

 

ライフだけ見れば、追い詰められているのはIVに見える。しかしIVは、たった1枚の罠カードで4枚ものアドを取ったのだ。このターンで仕留められなかった以上、そのアドバンテージはこれ以上なく黒咲を不利にする

 

「しぶとい奴め…このターンORUとして墓地に送られた「ミミクリー・レイニアス」を除外して、その効果を発動!デッキから「RRーレディネス」を手札に加える。俺はカードを1枚セットし、ターンエンド!」

「俺のターン!ドロー!!」

 

IVは考える。これほど潤沢な手札があれば、何もさせずに蹂躙して終わらせられる。だがそれではつまらない。何よりこの男の屈辱と苦痛と驚愕に歪んだ表情が見たい

 

「お前には俺が受けた苦痛と屈辱を何十倍にもしたファンサービスをくれてやる!!たっぷり味わいな!!」

 

だからこそ、IVは()()()()()を見せる事に決めた

 

「墓地の「ギミック・パペットーネクロ・ドール」のモンスター効果!墓地の「ナイト・ジョーカー」をゲームから除外し、このモンスターを特殊召喚!」

『ウフフフ…』

 

墓地から棺桶が現れ、その中からあちこちに包帯が巻かれた女の子の人形が起き上がってくる

 

「俺はレベル8の「ネクロ・ドール」と「カトル・スクリーム」でオーバーレイ!」

「なっ!?」

「2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!!」

 

 

「現れろ、“No.15”!!「ギミック・パペットージャイアントキラー」!!」

 

 

No.15 ギミック・パペットージャイアントキラー

ランク8 ATK1500

 

「エクシーズ召喚だと!?しかもこのエクシーズモンスターは、一体…!?」

「さあ、ファンサービスの幕開けだ!!「ジャイアントキラー」のモンスター効果!ORUを1つ使い、相手の特殊召喚したモンスター1体を破壊する!」

 

周囲に漂う光球が額で弾けると、漆黒の巨大人形の掌から伸びた糸が赤黒の猛禽を捕え、胸部で回転するローラーの中に引き摺り込む

 

ギャリギャリギャリギャリギャリギャリ!!

 

「ブレイズ…ファルコン…!」

 

自分のモンスターが残酷に解体されていく様は流石の黒咲も堪えたのか、唖然と見上げながら拳を強く握る

 

「そして破壊したモンスターがエクシーズモンスターならば、その元々の攻撃力分のダメージを相手に与える!」

「何!!」

「俺のファンサービスだ、受け取れぇ!!」

 

 

「『ディストラクション・カノン』!!」

 

 

「ぐああああっ!!」

 

黒咲隼 LP3200→2200

 

赤い奔流が黒咲を飲み込んだ。1000ポイント分とは思えぬ強い衝撃に呻きながらも黒咲は立ち上がり、ORUとして墓地に送られた「ファジー・レイニアス」のモンスター効果で同名カードを手札に加える

 

「何終わった気でいるんだ?俺のファンサービスはまだまだ序の口だぜ」

「どういう事だ…!」

「手札の「キラーナイト」のモンスター効果!こいつは自分の墓地のお仲間と一緒に特殊召喚する能力を持つが……相手の墓地のモンスターも対象に取れるんだよぉ!!」

「ッ!?」

「俺が選ぶのは「RRーブレイズ・ファルコン」!効果を無効にして守備表示で特殊召喚!」

 

「キラーナイト」がフィールドに出てくるのと同時に、「キラーナイト」が掲げた剣から糸が飛び出し、黒咲の墓地に眠っていた「ブレイズ・ファルコン」にくっついて無理やり蘇生させる。糸に吊るされて動く様子は、まさに操り人形といった様相だ

 

「まさか…!トラップ発動!「RRーレディネス」!このターン、俺の「RR」は戦闘で破壊されなくなる!」

「そして墓地に送られた「レディネス」を除外することで、このターンあらゆるダメージを0にする……だろう?」

「ッ!?(何故それを…!?)」

「させねえよ!ライフコストを半分支払い、手札からカウンター罠「レッド・リブート」発動!!」

「手札からカウンター罠だと!?」

 

IV LP200→100

 

「相手のトラップの発動を無効にし、そのカードを再びセットさせる!そして相手はデッキから好きな罠カードをフィールドにセットできるが、このターン、相手は罠カードを発動することが出来なくなる!これでお前は「レディネス」を墓地に送れなくなり、ダメージを防ぐ手段がなくなったってわけだ。さあ、俺からのサービスだ、好きなカードをセットしな」

「クソッ…!!」

 

強力なカウンター罠「RRーファントム・クロー」をセットする黒咲だが、それはこのターン全く役に立つことが出来ない

 

「ファンサービス再開だ!「ジャイアントキラー」2度目の効果、「ブレイズ・ファルコン」を再度破壊する!!」

 

再び繰り返される惨劇。それを見ていることしか出来ない黒咲は、悔しさのあまり絶叫する

 

「クソッ…!!クソォォォ!!」

「『ディストラクション・カノン』!!」

「ぐうううううっ!!!」

 

黒咲隼 LP2200→1200

 

「ハァ…ハァ…!!」

「いいザマだぜ黒咲、お前のそういう(つら)が見たかったんだよ。フッハハハハハハ!」

「貴様…!!」

「…さて、このまま総攻撃すればTHE ENDだが、それでフィニッシュは地味だよなぁ」

 

 

「だからお前に敬意を評して、とっておきを見せてやる」

 

 

そう言うとIVは見せつけるような緩慢な動作でデュエルディスクに指を伸ばし、セットされていたカードを発動した

 

 

「「RUM(ランクアップマジック)ーアージェント・カオス・フォース」起動!!」

 

 

「バカな!!?「RUM」だと!?」

 

黒咲は、このデュエルの中で1番の驚きを見せた

 

何故ならば、「RUM」は黒咲の故郷でしか発展していない、ハートランドのエクシーズ使いにとって唯一無二にして最大の武器だからだ

 

スタンダード次元のデュエリストには、ましてやアカデミアのデュエリストなど、技術的にも融合召喚に対する異常な執着的にも、絶対に「RUM」を使えるはずがないのだ

 

だとするならば…この目の前の男は、一体何者だというのか

 

「このカードは、俺のフィールドのランク5以上のエクシーズモンスターを、ランクが1つ上のエクシーズモンスターへと“カオス化”させる事ができる」

「“カオス化”だと…!!」

「俺はランク8の「ジャイアントキラー」でオーバーレイ!1体のモンスターで、オーバーレイネットワークを再構築!

 

カオスエクシーズ・チェンジ!!」

 

「ジャイアントキラー」が逆再生するかのように黒い心臓に戻り、天空の渦に飲まれていくと、その中からより巨大な筒状の存在が現れる

 

展開した筒を背負う、直立姿勢の「ジャイアントキラー」…否、その進化態である、まるで白い天幕を羽織った黄金の巨人が降臨する

 

 

 

「現れろ、“CNo.15”!!」

 

 

 

「人類の英知の結晶が、運命の糸を断ち切る使者を呼ぶ!」

 

 

 

「「ギミック・パペットーシリアルキラー」!!」

 

 

 

CNo.15 ギミック・パペットーシリアルキラー

ランク9 ATK2500

 

「カオス…ナンバーズ…」

「光栄に思えよ?この世界の()()()()こいつ(CNo.)を使ったのはお前が初めてだ……「シリアル・キラー」のモンスター効果!ORUを1つ使うことで、相手フィールドのカードを1枚破壊!そしてそれがモンスターカードならば、その攻撃力分のダメージを相手に与える!」

 

ORUが光と共に消滅して「シリアル・キラー」が姿を変える。全身、特に胴体が縦で真っ二つに割れるように展開、赤く蠢く中身が露出する

 

「これでフィナーレだ!!やれ、「シリアル・キラー」!!」

 

そしてその胸部から複数の丸鋸が射出され、「アベンジ・ヴァルチャー」ごと黒咲を吹き飛ばした

 

 

「『エクスターミネーション・スラッシャー』ッ!!」

 

 

「ぐわああああああっ!!!」

 

 

黒咲隼 LP 0

 

 

「勝負アリだな。襲撃犯さんよ」

「ぐぅっ…!」

(マルコの奴は取り巻きが連れてったか)

 

結果として、切り札を見せたのが黒咲隼1人で済んで良かったと言うべきか。特にマルコは口が軽そうな印象だったので、実際がどうだろうとイチイチ気にしなくて良くなった

 

「お前は、何者だ…!」

「あん?」

「スタンダード次元では有り得ない「RUM」に、エクシーズ次元ですら見た事がない「No.」…ただのアカデミアの尖兵ではないな…!」

「そんな事知ってどうするってんだ?まあ、まず俺がアカデミアの人間じゃないって説明を、牢屋の中でたっぷり聞くんだな」

「俺はこんな所でやられるワケにはいかない…!例えなんと言われようと、どんな手段を使ってでも、瑠璃を…!」

 

そう言いながらボロボロの体で逃げ出そうとするのを見て、IVは仕方なく“力”を使った

 

ガシッ!

 

「何!?これは…!?」

「敗者は勝者の言う事を聞くのがスジってもんだぜ。それが出来ねえってんなら…寝ときな」

「ぐああああ………っ!!」

 

巨大な黒い手は黒咲の体を締め上げ続ける。苦痛の声を漏らす黒咲だったが、やがて痛みのショックで気絶した

 

「やれやれ、今日はLDSで泊まりか」

 

最近外出の多さで拗ねることが多くなったガキンチョ(コロン)の事を考えながら、IVはレオ・コーポレーションの人間が来るのを待つのだった




《NGシーン》

「僕のターン、ドロー!手札の「ギミック・パペットーキラーナイト」のモンスター効果で、墓地の「ネクロ・ドール」を守備表示、自身を攻撃表示で特殊召喚!そして、魔法カード…」
「ッ!!」
「…「コンドーレンス・パペット」を発動!デッキから「ギミック・パペット」モンスター1枚を墓地に送る!僕はデッキの…」
「──カウンター罠「ラプターズ・ガスト」!俺のフィールドに「RR」モンスターが存在し、相手が魔法カードを発動した時、その発動を無効にし破壊する!……ムッ」

カウンター罠で妨害する黒咲。何気ない一手だったが、先程から黒咲の都合よく破壊され、妨害される状況にストレスが溜まっていたIVは、我慢の限界と言わんばかりに叫んだ

「ムカつくぜテメェッ!俺のサービスを尽く拒否りやがって!なんで俺に気持ちよくデュエルさせねえんだ!?俺はお前が苦しむ姿を見ていたいんだよぉ!!」

紳士ぶった態度をかなぐり捨てた自分勝手な発言をするIVの様子に、マルコの教え子の1人がドン引きしながら言う

「な、なんなの、あの人…」
「…それがお前の本性か…」

化けの皮が剥がれたなと告げるような冷たい目をする黒咲に苛立つIVだが、妙案を思いついたと言わんばかりに邪悪に破顔する

「そうだ、待てよ…いい事を思いついた。これまでのサービスが気に入らないってんなら、別のサービスをしてやる!これなら気に入るんじゃねえかぁ!?」

そう言ってIVが宙に手を掲げると、その先にひとつの映像が現れた

「な…………ハッ!?」


『うああああああっ!!』


そこに映し出されたのは、長い紫髪を後ろで纏め、羽のヘアアクセサリーとイヤリングをつけた少女

その少女…黒咲隼の妹、黒咲瑠璃が映像の中で絶叫している姿だった

『あっ、うぅ、うああっ…!!』
「瑠璃…! 瑠璃ィィィィィィィッ!!!」

苦しみ悶える妹の姿に、黒咲は絶叫した

「お前の愛しい妹の生中継だ。フッフハハハハハ…!!」
「……っ!!瑠璃に何をしている!?」
「さぁ、何かねぇ?社長のする事は俺よりえげつねえからなぁ。けどあの様子じゃあ早く止めねえとマズいんじゃねえのか?」

自分達でやっておきながら、さも他人事のように語る姿に黒咲は憎々しげに呟く

「貴様ぁ…!!」
「いい顔だぜ黒咲、やれば出来んじゃねえかよ。お前のスカした顔が歪んでいくのを見るのはたまらねぇ快感だよ。フフフフフフ…!アハハハハハハハ!!」

IVの嘲笑う声が路地裏に反響する。黒咲の怒りのボルテージは今、最高潮に達していた

「許さん…っ!!
うおおおおおおっ!!」

(さあ呼べ…!呼んでみろ、お前の切り札を。その時がお前の最後だ黒咲ィ…!)

「俺のターン、ドロー!!俺は「シンキング・レイニアス」を召喚!俺の邪魔をするものは全て排除する…!俺はレベル4のモンスター3体で、オーバーレイ!!」


「雌伏のハヤブサよ。逆境の中で研ぎ澄まされし爪を挙げ、反逆の翼っ翻せ!!!」
 
 
「現れろォ!!ランクッ4!!「RRーライズ・ファルコン」!!!」
 

6枚の大きな翼を翻す黒いハヤブサが姿を見せる
 
RRーライズ・ファルコン
ランク4 ATK100

「「ライズ・ファルコン」のモンスター効果!ORUを1つ使うことで、ターンの終わりまで相手フィールドの特殊召喚されたモンスター全ての攻撃力を「ライズ・ファルコン」の攻撃力に加える!」

ATK100→900→2700
 
隼の周りで衛星のように動く3つの光の玉。そのうちの1つが弾けると「ライズ・ファルコン」の体が炎を包まれた

その瞬間


「掛かったな黒咲ィ!!」


「ッ!?」
「永続罠「デモンズ・チェーン」!!」

伏せられたカードが表になる。公開されたカードから鎖が何本も現れ、「ライズ・ファルコン」を雁字搦めにしていく

「「デモンズ・チェーン」は相手モンスター1体を対象に発動し、そのモンスターの攻撃と効果を封じる!」
「何!?」

ATK2700→100

「「ライズ・ファルコン」!!ッおのれェ!」
「これでテメェの切り札は木偶の坊と化した。次の俺のターンの総攻撃でテメェのライフは0になる…フフフフ…ハーハハハハハハハ!!」


『ハーッハハハハハハハ!!!』





………みたいな

最後の場面はでかく映った嗤い顔のIVと小さく収まった怒りの表情の黒咲隼と歯を食いしばってる瑠璃が映されて、それがフェードアウトしてく感じ

黒咲のカイトエミュが完璧すぎて最初この路線で書いてたんだけど
・黒咲の敵意が溜まり過ぎる
・社長への風評被害
・そもそも瑠璃を用意できない
以上の理由から断念して途中でボツになりました。マルコの教え子が本編で出てきてるのもその名残り
違和感や矛盾を無視すれば読んでる分はめちゃくちゃ面白かったのでお納めください
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