ファンサービスは僕のモットーですから   作:ジャギィ

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ちょっとしたネタバレ注意

タグにも追加しておきます


第5話

前回のあらすじ

幼馴染の柚子を誘拐した犯人は、“決闘者の貴公子”と呼ばれた男、IVだった!?

容赦のない精神攻撃で1度は心が折れるも、柚子を救う為に立ち上がった遊矢に、IVのファンサービスが襲い掛かってくる!

 

 

 

「俺のターン…ドロー!」

 

ドローしたカードは「EM小判竜(ドラゴ・リモーラ)

 

(よし!「小判竜」にはドラゴン族の攻撃力を500ポイント上げる効果がある!こいつを召喚してから「オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン」をペンデュラム召喚、「ジャイアント・キラー」に攻撃して3000-2300の700ダメージを『リアクション・フォース』で倍にすれば、1400ポイントのダメージを与えてIVを倒せる!)

「俺は「EM小判竜」を召喚!」

 

額に小判を乗せた小さな東洋龍が召喚される。そしてペンデュラム召喚すべく遊矢は動き…

 

「そして俺は──」

「この瞬間、リバースカード発動!」

「え!?」

 

伏せられていたカード…魔法カードが公開される

 

「速攻魔法「魔法効果の矢」!!」

「「魔法効果の矢」…?」

「!! ヤバい、遊矢!!」

 

そのカードを確認した素良は、血相を変えて遊矢に呼び掛ける

 

「あのカードは、相手フィールドに存在する表側の魔法カードを全部破壊する速攻魔法だ!」

「魔法カードだって?でも、俺のフィールドには魔法カードなんて1枚も………あっ!」

 

気づいた遊矢は自分の背後を見た。背後にそびえ立つ、ペンデュラムゾーンの光柱を

 

「気づいたか。そう、ペンデュラムゾーンに存在するペンデュラムカードは全て魔法カードとして扱われる…つまり!新しいペンデュラムカードがない限り、お前はペンデュラム召喚が出来なくなる!」

「ペンデュラム封じのカード!」

「さあ、破魔矢よ!ペンデュラムをぶっ壊せ!」

 

「魔法効果の矢」から破魔矢が射出され、ペンデュラムゾーンにあった「竜穴の魔術師」と「トランプ・ウィッチ」を破壊する

 

「そして、破壊したカード1枚につき、500ポイントのダメージを与える!」

「うわあああああ!!」

 

榊遊矢 LP1700→700

 

「くっ…俺はカードを1枚伏せて、ターンエンド」

「俺のターン、ドロー!墓地の「ギミック・パペットーネクロ・ドール」の効果!墓地の「ギミック・パペットーギガンテス・ドール」をゲームから除外することで、「ネクロ・ドール」は墓地から蘇生することが出来る!」

『ウフフフフ…』

 

ATK0→800

 

「ああ、このままじゃ!」

「遊矢さんが負けちゃう!」

 

「小判竜」の攻撃力は1700。「ジャイアントキラー」だけでは遊矢の削りきれないが、「ネクロ・ドール」の追撃が決まれば遊矢は負ける

 

「行け、「ジャイアントキラー」!『ファイナル・ダンス』!!」

「うああーっ!」

 

榊遊矢 LP700→100

 

「トドメだ!「ネクロ・ドール」でダイレクトアタック!!」

 

「ネクロ・ドール」の直接攻撃が、遊矢の眼前まで迫り──

 

「くっ、リバースカード、オープン!「カバー・カーニバル」!俺のフィールドに、「カバー・トークン」を3体特殊召喚する!」

 

その間に差し込むように公開された魔法カードから、サンバの衣装に着た色とりどりなデフォルメな子カバ3体が現れ、遊矢の壁になる

 

「チッ、しぶてえヤロウだ。「カバー・トークン」を攻撃!」

 

怨念のようなものが「カバー・トークン」に命中して破壊する

 

「俺はこれでターンエンドだ」

「俺のターン、ドロー!…俺はカードをセットして、ターンエンド」

「ええ!?」

「せっかく攻撃力の低いモンスターがいるのに〜」

「無理だと思うよ」

 

年少組からの残念そうな声に、素良が説明する

 

「「カバー・トークン」はリリースに使えず、場にいる限り自分はEXデッキからモンスターを特殊召喚出来ない。IVのライフを一撃で0にするには攻撃力1800以上のモンスターが必要だから、ペンデュラム召喚出来ないことも考えると、そんな都合のいいカードはそうそう引けないよ」

「そんなぁ〜」

「遊矢お兄ちゃん、負けちゃうの…?」

「どうだろう…遊矢のあのセットカード次第かな…?」

 

「俺のターン、ドロー!」

 

IVがドローカードを確認する。するとニタリといった粘着質な笑みを浮かべ、遊矢に語り掛ける

 

「遊矢、お前はこう考えている。「「ネクロ・ドール」で攻撃してくれば逆転のチャンス、守備表示にすればターンを稼げる」とな」

「ッ……!」

「それがどれほど甘ちゃんな考え方か、教えてやる。まずは「ジャイアントキラー」を守備表示に変更。そして「ギミック・パペットーキラーナイト」を召喚!」

 

ATK1800→2600

 

「次に魔法カード「おろかな埋葬」発動!「ギミック・パペットーブラッディ・ドール」をデッキから墓地に送る!手札以外から墓地に送られた「ブラッディ・ドール」は手札に戻る!そして「ブラッディ・ドール」のモンスター効果!EXデッキの「ギミック・パペット」エクシーズモンスターを公開する事で、そのランクと同じ数値の持つレベルの「ギミック・パペット」モンスターを、デッキから手札のこのカードと一緒に特殊召喚する!」

「なんだって!?」

「俺が見せるのは、ランク8の“これ”だ」

 

そう言ってIVが見せた新しいエクシーズモンスターを見て、遊矢は息を呑む

 

「さあ来な!「ブラッディ・ドール」、「カトル・スクリーム」!」

 

「ブラッディ・ドール」は守備表示、「カトル・スクリーム」は攻撃表示で呼び出され、上級レベルの攻撃力がパンプアップされる

 

ATK2000→2800

 

「またレベル8のモンスターが揃ったよ!」

「あいつ、まさか…!」

「俺はレベル8の「ネクロ・ドール」と「ブラッディ・ドール」で、オーバーレイ!2体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!」

 

 

「現れろ、“No.40”」

 

 

空の渦からゆっくりと降りてくる、緑色の骨組みと白い羽を剥き出しにして紫色の球体を抱えた物体

 

それが展開され、巨大な細身の人形と化す。左の胸と鎖骨部位に、本来ある肉体の代わりにある十数本の弦が肩と腕を支える。その肩から広げられた天使を模した機械の左翼、そこに特徴的な40の数字が浮かび上がる

 

 

 

「天よりの使者よ。操り糸に縋る愚者を、その音色でもって、天上の地獄に引きずり込め!!」

 

 

 

「「ギミック・パペットーヘブンズ・ストリングス」!!」

 

 

 

No.40 ギミック・パペットーヘブンズ・ストリングス

ランク8 ATK3000

 

「新しいエクシーズモンスターだ!」

「しかも素で攻撃力が3000って事は…!」

 

ATK3000→3800

 

「攻撃力3800!?」

「バトルだ。「キラーナイト」と「カトル・スクリーム」で残りの「カバー・トークン」を攻撃!」

 

1体は斬りつけられ、もう1体は人形の胴体に閉じ込められてから牛のような鳴き声を「カトル・スクリーム」が上げると、破砕音と共に消えた

 

「今度こそ終わりだっ!「ヘブンズ・ストリングス」の攻撃!『ヘブンズ・ブレード』!!」

 

一撃でライフを9割以上もっていく攻撃が迫る中…遊矢は閉じた目を開いてデュエルディスクのボタンを押す

 

「罠カード発動!「ガード・ブロック」!モンスターの戦闘ダメージを1度だけ0にする!」

 

「ヘブンズ・ストリングス」の攻撃が、直前で防がれる

 

「ぐぅっ!!……更にデッキからカードを1枚ドローする!」

 

「…ふぅ〜」

「なんとか守りきれたね」

「でも、あいつのフィールドには攻撃力2600以上のモンスターが3体に、守備力2500の「ジャイアントキラー」もいる。次のターンにペンデュラム召喚出来ても、「オッドアイズ」だけじゃあの布陣は突破出来ない」

「じゃあどうするんだよ〜!?」

「さあね…」

(どうするんだい…遊矢?)

 

 

外野のそんな話を傍目に、遊矢は考える

 

(なんとかこのターンは耐えれたけど、ここからどうすればいいんだ…!?)

 

考えて、考えて、考えて……「勝てない」の文字が思い浮かぶ

 

その度に大切な女の子の命が掛かってると思い出し、押し潰されそうな心を必死で奮い立たせて…それでも尚、絶望的な状況が遊矢を苦しめる

 

そんな諦めない遊矢の姿に、IVが苛立ちと共にキレた

 

「ムカつくぜテメェッ!俺のサービスを尽く拒否りやがって!なんで俺に気持ちよくデュエルさせねえんだ!?俺はお前が苦しむ姿を見ていたいんだよぉ!!」

 

思い通りにいかない怒りを周りに当り散らし、自分勝手な発言をするIVの様子に、アユはドン引きしながら言う

 

「な、なんなの、あの人…」

 

しかしIVは何か妙案を思いついたのか、急に怒りを鎮めて邪悪に破顔する

 

「そうだ、待てよ…いい事を思いついた。これまでのサービスが気に入らないってんなら、別のサービスをしてやる!これなら気に入るんじゃねえかぁ!?」

 

そう言ってIVが宙に手を掲げると、その先にひとつの映像が現れた

 

「な…………あぁ!!」

 

 

『うああああああっ!!』

 

 

そこに映し出されたのは、紫がかった赤髪を青い半球状の髪飾り2つでツインテールに纏め、首元には音符の形をしたアクセサリーを付けた少女

 

「あれは!?」

 

その少女…遊矢の幼馴染、柊柚子が映像の中で絶叫している姿だった

 

『あっ、うぅ、うああっ…!!』

「柚子…! 柚子ゥゥゥゥゥゥゥッ!!!」

 

苦しみ悶える幼馴染の姿に、遊矢は絶叫した

 

「お前の愛しい彼女の生中継だ。フッフハハハハハ…!!」

「……っ!!柚子に何をしている!?」

「さぁ、何かねぇ?社長のする事は俺よりえげつねえからなぁ。けどあの様子じゃあ早く止めねえとマズいんじゃねえのか?」

 

自分達でやっておきながら、さも他人事のように語る姿に遊矢は憎々しげに呟く

 

「お前ぇ…!!」

「いい顔だぜ遊矢、やれば出来んじゃねえかよ。お前のスカした顔が歪んでいくのを見るのはたまらねぇ快感だよ。フフフフフフ…!アハハハハハハハ!!」

 

IVの嘲笑う声が薄暗い廃墟に反響する……

 

「さあ、もっと絶望した顔を見せな!「ヘブンズ・ストリングス」のモンスター効果!ORUを1つ使い、フィールド上の他のモンスター全てにストリングスカウンターを置く!『メロディ・オブ・メイヘム』!!」

 

〜♪ 〜♫

 

手にした剣と上半身の弦を使ってハープのような音色を奏で始める「ヘブンズ・ストリングス」。そして剣を空高く掲げると天の黒い雲から大量の赤い糸が降り注ぎ、「ヘブンズ・ストリングス」を除いた全てのモンスターに付着する

 

不気味な笑い声を上げながら、前髪に隠れた左眼を開かせ、赤く光らせる

 

「ストリングスカウンターが乗ったモンスターは、お前のエンドフェイズに全て破壊され、破壊した数×500ポイントのダメージをお前に与える!」

「それじゃあ次のターンであのモンスターを倒せなかったら!」

「遊矢兄ちゃんの負け!?」

 

IVはくつくつと笑い、遊矢に負けを突きつける

 

「言っておくが、「地獄人形の館」には戦闘耐性以外にも、エクシーズモンスター以外のモンスター効果を受け付けなくする効果もある。つまり!エクシーズモンスターを持たない今のお前に、勝ち目は完全にない!」

 

それを聞いたギャラリー達の顔色が、絶望一色に染まる

 

「これでテメェも愛しの彼女も、一巻のおしまいってワケだ。アーッハッハッハッハッハ──」

 

 

ドクンッ!

 

 

瞬間

 

場の空気が大きく変わったのを感じた

 

「何……?」

「許さん…っ!!

 

 

うおおおおおおおおっ!!」

 

 

遊矢のペンデュラムの首飾りが凄まじい光を発すると同時に、凄まじい力の波動が吹き荒れる。遊勝塾の面々が混乱する中、IVだけがこの現象に(あたり)をつけていた

 

(まさか…!?)

「俺の、タァーンッ!!俺は手札を1枚捨て、魔法カード「ペンデュラム・コール」を発動!デッキから異なる「魔術師」ペンデュラムモンスターを2体手札に加える!「相克の魔術師」と「相生の魔術師」を手札に加え、ペンデュラムスケールにセッティング!」

 

遊矢の背後に、新たなペンデュラムモンスターが並ぶ

 

「これでレベル4から7のモンスターが同時に召喚可能

 

 

揺れろ、魂のペンデュラム

 

 

天空に描け、光のアーク

 

 

ペンデュラム召喚!現れろ、我がしもべのモンスター達!」

 

 

中央の光の穴から出てきたのは3体のモンスター。「竜穴の魔術師」「法眼の魔術師」そして「オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン」

 

「俺はレベル7の「竜穴の魔術師」と「法眼の魔術師」で、オーバーレイ!」

 

 

「二色の眼の竜よ。絶対零度の力でもって、大地を同胞で埋め尽くせ!」

 

 

「エクシーズ召喚!!」

 

 

「現れろ、ランク7!刻をも凍てつかす竜!「オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン」!!」

 

 

氷のような艶めきと色、そして冷たさを感じさせる甲殻に包まれた、氷結のドラゴンが姿を見せる

 

オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン

ランク7 ATK2800

 

「うそ…」

「遊矢が、エクシーズ召喚…?」

 

震えるような声で呟く素良。大事にしていた絵画に泥を塗りたくられたかのような、強烈な嫌悪感が胸の奥から漏れ出てくる

 

「まだだッ!!」

 

しかし、これで終わりではなかった

 

「対立を見定める「相克の魔術師」よ!その鋭利なる力で、異なる星を1つにせよ!「相克の魔術師」のペンデュラム効果!1ターンに1度、自分のエクシーズモンスター1体を選択し、そのモンスターはこのターン、同じランクのエクシーズモンスターの召喚に使用する事が出来る」

「バカなッ!!」

「つまりこの瞬間、「オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン」は、レベル7となる!」

 

ランク7→レベル7

 

「またレベル7のモンスターが2体…これって」

「エクシーズモンスターを使ったエクシーズ召喚…!?」

 

「俺はレベル7の「オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン」と、レベル7扱いの「オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン」で、オーバーレイ!」

 

むせ返るような炎の渦から現出したのは、炎を圧縮させた翼を持った、より人型に近づき、より攻撃的なフォルムに進化した……「オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン」の姿

 

 

 

「二色の眼の竜よ。深き闇より蘇り、怒りの炎で地上の全てを焼き払え!」

 

 

 

「エクシーズ召喚!!」

 

 

 

「いでよ、ランク7!災い呼ぶ烈火の竜!「覇王烈竜オッドアイズ・レイジング・ドラゴン」ッ!!」

 

 

 

覇王烈竜オッドアイズ・レイジング・ドラゴン

ランク7 ATK3000

 

 

まるで「オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン」が悪魔に堕ちたかのような暴力的な姿と威圧感に、年少組の3人は完全に怯えきった目で覇王烈竜を見る

 

「何…?あのモンスター…」

「怖いよぉ…!」

「シ、シビレるくらいヤバそう…」

 

一方、素良は遊矢のデュエルディスクに置かれたエクシーズカードに注視していた

 

(あの竜、エクシーズだけど、ペンデュラムでもある…!エクシーズ、ペンデュラムモンスター…!!)

 

そして、IVは

 

己の内にある様々な予測、思考、感情。それらを合わせ、かき混ぜ、一雫に抽出し切ったものを…言葉に変換して吐いた

 

()()()()……!!」

 

それは本来の歴史ならば、ARC-Vという物語の最終盤で登場するモンスター。榊遊矢の、文字通り烈火の怒りが遊矢の中にある()()()()と混ざり合い、誕生するはずの1枚

 

それが、IVというイレギュラーの介入によって、こんなにも早く覚醒を果たしてしまった

 

爛々と赤く輝く瞳がIVを貫く

 

「「オッドアイズ・レイジング・ドラゴン」のモンスター効果!このカードがエクシーズモンスターを使ってエクシーズ召喚に成功した時、ORUを全て使い、相手フィールドにある表側表示の魔法・罠を全て無効化にして、このカード以外の全てのカードを破壊する!」

「ッ!」

 

IVは反射的に伏せられた自分のカードに意識を向け…一瞬の逡巡の末、その行動を取り止めるが、そんなIVの迷いを悠長に待つ()()()()ではなかった

 

白翼の炎の熱が増す。温度が上がる事に炎は巨大化し、触れた物体を融解させる大翼が「レイジング・ドラゴン」の背に生み出される

 

「ッ!! ヤバい!!」

「えっ!?」

「きゃっ!?」

「わぁ〜っ!?」

 

それを見て命の危機を感じ取った素良は、両手にタツヤとアユ、口にフトシとそれぞれ抱えまたは後ろ襟を咥えこんで、覇王烈竜から出来るだけ距離が取れるよう勢いよくすっ飛んだ

 

「全て破壊しろぉ!!」

 

瞬間、振り回される破滅の翼。フィールド上の全てを薙ぎ払った劫焔は、一撃で上級以下のモンスターや「地獄人形の館」「一族の結束」、伏せられた「傀儡遊儀ーサービスト・パペット」を吹き飛ばし、間も置かずやってきた追撃の滅熱が残っていた「No.」モンスターすらも跡形もなく蒸発させる

 

「「うわあああ!!」」

「きゃあああ!!」

「〜っ!!」

 

当然、その余波は既に遠く離れていた素良達も吹き飛ばす威力だった

 

それでも、一瞬前まで素良達が座っていた鉄骨の山が赤熱化して融けている状態を見れば、素良の咄嗟の判断が4人全員の命を救ったのは火を見るより明らかだった

 

そして、そんな状況を生み出したにも拘らず、遊矢は怒りと()()()に取り憑かれたかのようにデュエルを続行する

 

「そして、この効果で破壊したカード1枚につき、200ポイントの攻撃力を「オッドアイズ・レイジング・ドラゴン」に加算させる!この効果で破壊した俺のカードは2枚、お前のカードは7枚!よって攻撃力は…!」

 

ATK3000→4800

 

「攻撃力4800!」

「バトル。「覇王烈竜オッドアイズ・レイジング・ドラゴン」でダイレクトアタック!!」

「っ!!」

 

遊矢の攻撃宣言を聞いたIVは、出来るだけ高く、物がない場所に逃げ出す

 

「逃がすものかぁ!!」

 

再び上昇する熱量。今度はそれを己の口内に集中させ、溜め込み、圧縮させ、全ての敵を滅ぼす破滅の光に変え…IVに放った

 

 

 

「『憤激の、ディストラクションバースト』ォッ!!!」

 

 

 

高所に辿り着いたIVが攻撃に気づいた直後

 

 

ゴゥッ!!

 

 

熱線がIVの姿を見えなくした

 

 

IV LP 0

 

 

熱線が雲を消し飛ばしながら空の彼方に消えると、遊矢の勝利を告げるVRビジョンが表示される

 

「ハァ!ハァ!ハァ…!ハァ…!」

 

大きく消耗したのか、肩で息をする遊矢。徐々に呼吸が落ち着き、纏っていた恐ろしい気配をなりを潜めていき、やがて普段の遊矢に戻った

 

「ハァ…ハァ…………え…?」

 

そして正気に戻った遊矢は目を疑った。鉄骨やトタン、コンクリートや地面すらも熱で融け、向こう側の空が見えるほどポッカリと丸く削られた穴を見つけ、遊矢は困惑する

 

「な、なんだよ…これ…?」

 

惨い破壊の痕。いつの間にか勝利している自分。IVの姿が見えない現状

 

それらの情報を組み合わせて…遊矢は呟く

 

「俺が…やった、のか……?」

 

それは遊矢からすれば、あまりに認め難い真実だった

 

あれだけエンタメの素晴らしさを語っておきながら、知らぬ内に自身がやったこの所業は、遊矢が否定したIVと同じ…いや、それ以上に酷いとしか言いようがなかった

 

「嘘だ…違うっ!俺はただ、柚子を助けたかっただけだ!柚子を助ける為に、()()()()()()──」

 

 

「遊矢っ!!」

 

 

その時、外から聞き覚えある声が聞こえてきた

 

「柚子……?」

 

振り向けば、拐われたはずの幼馴染がそこにいた。しかし助けようとした少女は今、遊矢にとって1番出会いたくない人物となっていた

 

「遊矢、大丈…」

「来るなっ!!」

「え…?」

「違うんだ柚子、こんなのは俺じゃない…!こんな酷い事、俺は望んでないんだ!!」

 

怯えた顔で自分の体を抱き締めながら蹲る遊矢の姿に、只事ではないと悟った柚子は遊矢に近づいて心配した目で見るが、その行動にすらも遊矢は強く萎縮した

 

「やめろ柚子!来ないでくれ!」

「遊矢、落ち着いて…」

「見るな…!そんな目で俺を見るな!!」

「遊矢!!」

 

遊矢のその様子に耐えかねた柚子は、遊矢を起こし……優しく抱き締めた

 

「柚子……?」

「大丈夫、遊矢…大丈夫だから…」

「柚子……」

 

慈しんだ抱擁に安心感を覚えた遊矢は、錯乱した状態からゆっくりと脱却する。そして2人は改めて向き合うと、遊矢は柚子に質問した

 

「柚子、どうしてここに…?IVに拐われたんじゃ…」

「うん。私、眠らされてある小屋に閉じ込められてたの。自分の力じゃ出れなくて、中にモニターがあって…遊矢のデュエルが映ってたわ」

「俺の?」

 

どうしてそんな事を…そう遊矢が思った時だった

 

ガララッ……

 

「「!?」」

 

音がした方に2人が視線を向けると、そこには瓦礫を除けて現れたIVの姿があった。服は所々が破れ、焦げ、焼け落ち、怪我もしている様子だった

 

IVは剣呑な表情で遊矢に視線を向け、ゆっくりと歩いてくる。遊矢は自分がIVにした事で怒っているのだと思い至り、固まって動けなくなる。そんな遊矢を守るように柚子は遊矢の頭を抱き締めた

 

やがて遊矢の元へ辿り着いたIVは、遊矢の手を掴んで引っ張り

 

 

「対戦、ありがとうございました」

 

 

その手に両手で握手しながら明るい笑みでそう言った

 

「………………へ?」

 

これには遊矢も柚子も呆気を取られた。特に遊矢は殴られたり、最低でも罵詈雑言のひとつふたつは飛んでくると思っていただけに、IVのこの行動は完全に予想外だった

 

「いやぁやられました。まさかあの状況でエクシーズ召喚して、しかも逆転までしてくるとは思いもしませんでしたよ。正直僕は遊矢くんを侮っていたみたいです」

「エ、エクシーズ召喚…?」

「遊矢、覚えてないの?」

 

柚子に指摘された遊矢は自分のEXデッキを確認した。そこには確かに、入れた覚えのないエクシーズモンスターが入っていて、しかも

 

「なんだこれ…!?エクシーズモンスターなのに、ペンデュラムモンスター…!?」

 

「オッドアイズ・レイジング・ドラゴン」のカードを見た遊矢は驚いた。同時にこのカードからは、得体の知れない嫌な気配も感じ取れた

 

「それが君の可能性ということです、遊矢くん」

「俺の可能性……?」

「ペンデュラムは君1人の力ではなくなるかもしれない。しかし君はそれを嘆くのではなく喜ぶべきです。何故ならペンデュラムが広がれば広がるほど、君が生み出したペンデュラムという名のエンタメが人々に伝わっていくのですから」

 

IVは知っている

 

凄まじい賛否両論で評価こそ良いものではないが、この世界(ARC-V)が生み出したものは形を変え、進化し、現代でも根強く息づいていることを

 

ペンデュラム召喚の登場で様々なカードが生まれ、新たな戦術が確立し、今も尚()()()()()()()()()()()()()が愛される一助になっている事を

 

「ペンデュラムという名の…エンタメ…」

「君がデュエルも、そして心も強くなってくれる事を願いますよ。その時こそ…本当の、君自身のエンタメデュエルを見せてください」

「俺自身のエンタメデュエル…」

「僕が言いたいのはそれだけです。それでは」

 

そう言って背を向けて去っていくIVに、遊矢は立ち上がって叫んだ

 

「待ってくれっ!!どうしてこんな事を!?」

「遊矢…?」

「俺はアンタのエンタメを否定して、あんな酷い事までしたのに、どうしてここまでしてくれたんだ!?」

 

ここまでされて察せないほど遊矢もバカではない

 

IVの言葉は確かに遊矢を傷つけたが、それは逃げ続け、隠し続けた事で肥大化した遊矢の醜悪な心の部位だった。IVが指摘しなければ、遊矢は一生それに気が付かず、取り返しがつかないほど心が歪んでいった可能性もあった

 

それに、最終的に大きく傷つけたのは遊矢の方だ。もしかしたら死んでいたかもしれないのに、IVは遊矢を責めずに、それどころか笑顔で健闘を称えてくれた

 

(どうして…?)

 

 

一方、IVからすれば遊矢の指摘はお門違いもいい所だった

 

元々は自分が次元戦争に巻き込まれ、ランサーズ(赤馬零児が結成する、対アカデミア少数精鋭部隊)に組み込まれなくてもいいように、後は主人公が心身ともに強くなれば後々の展開で楽ができるという安易な発想の元、柊柚子を誘拐し、榊遊矢を誘い込んだわけだ

 

(もっとも、まさかこんな早い段階で“覇王龍”の力が覚醒するとは思わなかったが)

 

勝とうと思えば勝てた。しかしそれで遊矢の中にいる“存在”を余計に刺激して、それこそ有り得ないが()()()3()()をスタンダードに呼び寄せて統合でもされれば…この街は戦場になって、デメットとコロンを巻き込んでしまう事になる

 

だからこそ負けることで力を発散させ、遊矢の精神のフォローをすることで“覇王龍”が表に出ることを封じようとしたわけだが、かと言って、それをバカ正直に言うわけにもいかない

 

(さて、どう言ったものか…)

 

 

「………そんなの、決まってるじゃないですか」

 

様々な言い訳を思い浮かんだが、1番しっくり来る理由はやはりこれだった

 

IVにとって、遊矢(キャラクター)は、この世界(アニメ)は、デュエルモンスターズ(カード)

 

 

「僕が1番のファンだからですよ」

 

 

“遊戯王”は、ファン(自分)を魅了してやまないスター(カードゲーム)なのだから

 

 

「────」

「これからの君に期待していますよ。1人のファンとして」

 

今度こそIVは去った

 

それを見送った遊矢は、強く決意した

 

「柚子…俺、頑張るよ」

「遊矢?」

「俺は、ちゃんと俺自身のエンタメを探してみせる。そして…今度こそ、俺に期待してくれたファンを、1人残らず楽しませるんだ!!」

 

そう言って朗らかに笑う幼馴染は、幼い頃以上に活き活きした表情をしていた。それを見た柚子も、自然と微笑みを浮かべ……

 

『おぉ〜い!!遊矢ぁ〜!!』

「!! 素良!みんな!」

 

外から素良達の声が聞こえてきた。その声に応えるように、遊矢と柚子は外に向かって走り出した




悲報:IVの語録、殆ど消費してしまった

もう今後はIVの語録擦りまくるしかできない…今回めっちゃ爽やかに終わったしこのまま完結しちゃダメ?
ダメ? そっかぁ……
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